本と旅とそれから 川端康成

本と旅とそれから

雪国/川端康成

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

――うむむ。有名すぎるこの冒頭の一文。
これは・・・いいんです。さすがに私にもわかります。でも、その後は。
なかなか・・・難解ですのぅ・・・。



雪国/川端康成(新潮文庫)

様々に美しい表現が多く、文章に魅せられる部分は多いのですが、その言わんとしていることが何ともわかるようなわからぬような。
――いや、やっぱりわからないかしら。


冒頭の超有名な一文に続く文(これもかなり有名とは思いますが)――「夜の底が白くなった」。まあこれはわかりやすい方ですよね。イメージでいけば。うむ。
しかし、何とも美しいですね。夜の底が白くなった、ですか~・・・。

川端康成作品を、断続的に幾つか読んでおりますが、最初の「古都」がわかりやすかった(ような気がした)ために少々油断した感のあった私。
やっぱり「文学」とはそうそう容易いものではなかったのだな、と妙にナットクしております。

私が読んだ新潮文庫版には、巻末に二つの解説がついています。
いずれも小説家の、竹西寛子氏と伊藤整氏の筆になるものです。

作品そのものの、美しさは伝わるものの難解、という何とも消化の悪い読書体験の後でこのお二人の解説を読み、ちょっとほっとした気分です。

「古都」の感想文で(コチラ)「単に『京都が好き』という視点からも楽しめます」などと書いた私には、竹西氏の「それら(『古都』を含む)の作品を観光小説風に扱う冒涜はまことに耐え難い」という一節には「あちゃ!」という思いでしたが、それはつまり、何を求めて本を読むか、という読み手の姿勢の問題なんでしょうね。

伊藤整氏は、「この作品は、特殊ある手法としては、現象から省略という手法によって、美の頂上を抽出する、という仕方をする。だから、初歩の読者はそこに特有の難解さを感ずるであろう」と書かれているのですが、初歩どころか初歩の初歩の読者たる私の場合、「現象から省略という手法によって・・・」という解説すらわけわかりません。

ただ何となくわかるのは、この小説は、状況描写を表面的に受け取っていたのでは何にもならない、ということ。そして、一度さらりと読んだぐらいでは、表面的なもの以上わかりはしないだろうということ。
きっと、何度も何度も読み込んで、じーーーっくりああだこうだと思いを巡らしてみなければだめなんでしょうね。

こういう本読み体験もあるべきなのかな・・・でないと、何となく、自分が小説ってものをなめてしまいそうな気がします。
「雪国」も、いつか私の腑に落ちる時が来ることを期待して、いずれ、また。




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  1. 2009/12/08(火) 20:40:00|
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山の音/川端康成

若い娘の視点から描かれた「古都」から一転、「山の音」の主人公は、60代の初老の男性。
刊行されたのは昭和29年、それに先立って雑誌に断続的に掲載された作品ということなので、「山の音」は戦後比較的すぐに書かれたということになります。


山の音/川端康成(新潮文庫)

ここに描かれるその60代男性・信吾は、「死」にも「女性」にも多いに思うところある、年老いているかと思えば元気でもある、なかなかに複雑な人物。

彼を中心にその家族の物語が淡々と展開していくわけなのですが、川端氏の語り口はさらりとしていて、香り高い自然描写

なども織り込まれているために重苦しさも感じずに読めるものの、今どきならばきっと「どろどろした人間模様」とでも呼ばれそうなものが、実は描かれていると思います。
そして、書かれた年代が年代なだけに、物語は戦争の影を引きずってもいます。

どろどろしたものや暗いものを描く一方で、美しく可憐な存在をも描く。
そのどちらもが、とても奥ゆかしい雰囲気を漂わせた文章で綴られ、ひとつの物語世界の中に混在しているのですが――。
ノーベル賞作家の作品ですから、各国語に翻訳されて世界中で読まれているのだろうと思うのですが、この表現の奥ゆかしさ、文章の香り高さといったものが、外国の人にどれだけ伝わるものなのでしょう(あ、これは否定ではなく、純粋な疑問です)。

ことさら、その後の物語の展開する方向を示すこともなく、ハッピーエンドでもアンハッピーエンドでもなく、「山の音」はラストを迎えるのですが、そのラストは何とも言えぬ寂しさを漂わせているように思えました。




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  1. 2009/12/08(火) 20:38:00|
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古都/川端康成

昭和36年から37年にかけてこの作品が朝日新聞に連載された際、挿絵をを描いたのは小磯良平氏、また、単行本として刊行された際には、この作品に因んで描かれた東山魁夷氏の作品「冬の花」が口絵を飾ったのだそうです。

・・・はぁ。日本文芸の至高ですね。あまりの香り高さにくらっときます。


古都/川端康成(新潮文庫)

まあ同じくらいくらっとくるのが、「村上春樹さんがノーベル賞取る前にできるだけ読みましょう」とか言っときながら、すでにノーベル賞取っている川端康成作品をほとんど読んでいないワタシであることよ。
大江さんは何冊か読んでいるんですけどね・・・。


いやいや、今からでも遅くはない。
まずは京都に行く前に「古都」だよ、と、手に取った本書、まさにしっとりした古都の香りが立ち上るようでした。
もしかすると、今日の京都にすら見つけることのできない世界、耽美的な幻想の世界がそこに紡ぎ出されているのではないか、と思いました。

ちなみに、単に「京都が好き」という視点からも楽しめます。

平安神宮でのお花見に始まり、四季折々の情景、祭りの風景。
そして、杉の木立の香りさえ感じさせるような、高雄から周山にかけての北山杉の山々。
私は、周山街道を栂ノ尾より奥に行ったことがないのですが、いつか、もう少し先まで行ってみたいものだと思いました。きっと、それこそ東山さんの「冬の花」に描かれた北山杉の風景が見られるのでしょうね・・・。

京むすめ、という言葉を聞いた時、日本人が漠然と思い描く憧れのようなものをすべて身にまとったヒロイン・千重子――それはある種理想の女性像であると同時に幻の女性像なのかも知れません。

京都に行けばそんな世界があるのかも、そんな女性と街角ですれ違うのかも、と思うような、京都というのは不思議な魅力を備えたところ。
と、同時に、やはりそれは幻の中にしかない「古都」なのかも、とも思えるのでした。


webcitron01.gif


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tag: 川端康成 京都の本 
  1. 2009/10/07(水) 20:49:00|
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