本と旅とそれから 2009

本と旅とそれから

千羽鶴/川端康成

京都旅行の話をずーっと続けてきたし、さらにずーっと続けていく予定ですが、下書きブログに本の感想文がたまってきたので、京都の方は3日目が終わったところで、まとめてUPします。
ちょっと前からためてしまっていまして、読んでから感想文を書くまでに時間が空いてしまったものなどもあるのですが・・・まあ、とりあえず。

作家さんとしては、川端康成氏と畠中恵さんだけなんですが。

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tag: 川端康成 
  1. 2009/12/08(火) 20:43:00|
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雪国/川端康成

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

――うむむ。有名すぎるこの冒頭の一文。
これは・・・いいんです。さすがに私にもわかります。でも、その後は。
なかなか・・・難解ですのぅ・・・。



雪国/川端康成(新潮文庫)

様々に美しい表現が多く、文章に魅せられる部分は多いのですが、その言わんとしていることが何ともわかるようなわからぬような。
――いや、やっぱりわからないかしら。


冒頭の超有名な一文に続く文(これもかなり有名とは思いますが)――「夜の底が白くなった」。まあこれはわかりやすい方ですよね。イメージでいけば。うむ。
しかし、何とも美しいですね。夜の底が白くなった、ですか~・・・。

川端康成作品を、断続的に幾つか読んでおりますが、最初の「古都」がわかりやすかった(ような気がした)ために少々油断した感のあった私。
やっぱり「文学」とはそうそう容易いものではなかったのだな、と妙にナットクしております。

私が読んだ新潮文庫版には、巻末に二つの解説がついています。
いずれも小説家の、竹西寛子氏と伊藤整氏の筆になるものです。

作品そのものの、美しさは伝わるものの難解、という何とも消化の悪い読書体験の後でこのお二人の解説を読み、ちょっとほっとした気分です。

「古都」の感想文で(コチラ)「単に『京都が好き』という視点からも楽しめます」などと書いた私には、竹西氏の「それら(『古都』を含む)の作品を観光小説風に扱う冒涜はまことに耐え難い」という一節には「あちゃ!」という思いでしたが、それはつまり、何を求めて本を読むか、という読み手の姿勢の問題なんでしょうね。

伊藤整氏は、「この作品は、特殊ある手法としては、現象から省略という手法によって、美の頂上を抽出する、という仕方をする。だから、初歩の読者はそこに特有の難解さを感ずるであろう」と書かれているのですが、初歩どころか初歩の初歩の読者たる私の場合、「現象から省略という手法によって・・・」という解説すらわけわかりません。

ただ何となくわかるのは、この小説は、状況描写を表面的に受け取っていたのでは何にもならない、ということ。そして、一度さらりと読んだぐらいでは、表面的なもの以上わかりはしないだろうということ。
きっと、何度も何度も読み込んで、じーーーっくりああだこうだと思いを巡らしてみなければだめなんでしょうね。

こういう本読み体験もあるべきなのかな・・・でないと、何となく、自分が小説ってものをなめてしまいそうな気がします。
「雪国」も、いつか私の腑に落ちる時が来ることを期待して、いずれ、また。




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  1. 2009/12/08(火) 20:40:00|
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山の音/川端康成

若い娘の視点から描かれた「古都」から一転、「山の音」の主人公は、60代の初老の男性。
刊行されたのは昭和29年、それに先立って雑誌に断続的に掲載された作品ということなので、「山の音」は戦後比較的すぐに書かれたということになります。


山の音/川端康成(新潮文庫)

ここに描かれるその60代男性・信吾は、「死」にも「女性」にも多いに思うところある、年老いているかと思えば元気でもある、なかなかに複雑な人物。

彼を中心にその家族の物語が淡々と展開していくわけなのですが、川端氏の語り口はさらりとしていて、香り高い自然描写

なども織り込まれているために重苦しさも感じずに読めるものの、今どきならばきっと「どろどろした人間模様」とでも呼ばれそうなものが、実は描かれていると思います。
そして、書かれた年代が年代なだけに、物語は戦争の影を引きずってもいます。

どろどろしたものや暗いものを描く一方で、美しく可憐な存在をも描く。
そのどちらもが、とても奥ゆかしい雰囲気を漂わせた文章で綴られ、ひとつの物語世界の中に混在しているのですが――。
ノーベル賞作家の作品ですから、各国語に翻訳されて世界中で読まれているのだろうと思うのですが、この表現の奥ゆかしさ、文章の香り高さといったものが、外国の人にどれだけ伝わるものなのでしょう(あ、これは否定ではなく、純粋な疑問です)。

ことさら、その後の物語の展開する方向を示すこともなく、ハッピーエンドでもアンハッピーエンドでもなく、「山の音」はラストを迎えるのですが、そのラストは何とも言えぬ寂しさを漂わせているように思えました。




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  1. 2009/12/08(火) 20:38:00|
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ゆめつげ/畠中恵

これは「しゃばけ」シリーズではないのですが、語り口や主人公の気質に似通った点が多く、読む方も似たような心持ちで物語をたどれます。


ゆめつげ/畠中恵(角川文庫)

時は幕末、主人公は弱小神社の跡継ぎ息子・弓月。
実務能力に優れたしっかり者の弟に比べ、よく言えばのん気、悪く言えばやはりのん気の弓月には特に大それた志もなく、日々平和に過ごせれば・・・ぐらいの日常でした。
そこへ突如訪れた事件。


というのも、こののん気な長男坊には、「ゆめつげ」という特殊能力があったから・・・。

「しゃばけ」シリーズにも推理小説の色彩を帯びるエピソードが多くありますが、この「ゆめつげ」は、かなり色濃く推理小説。読み手が犯人探しを楽しめるか・・・というと、「ん~・・・」て感じなので、いわゆる「本格」推理小説とはいきませんが、でも謎解きが筋書きの重要な一部であることは確かです。

でも、「しゃばけ」ほどには、のほほ~んとしてはいないのですね。
弓月はのんびり屋ではあるものの、「しゃばけ」の若だんな同様、人柄はいたって誠実。
そして、超能力「ゆめつげ(鏡や夢の中に見る幻影で、未来や真実を占うというもの)」を行うことはその命をすり減らすことなので、繰り返し行うことで、弓月は次第に弱っていく・・・。
まさに、血を吐きながら占いをするのです。

それでもなお、読んでいて和むな~という気がするのは、これも若だんなと同じ、「おや、~~じゃないかい」って感じの弓月の柔らか口調と、苦境にあっても決して思いつめない彼の性格のお陰でしょうか。
なるようになる、なるようにしかならないよ、と達観したかのような。

川端康成作品に「ううう、難解!」と頭を抱えた後には、ホントほっとさせてくれます。
まさに「気晴らし」「気分転換」「ほっとひと息」を求める時のための一冊かと。




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  1. 2009/12/08(火) 20:36:00|
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百万の手/畠中恵

電車の中での読み物が必要なのだ!
・・・と、図書館の文庫本棚を睨んでいて、「ゆめつげ」と一緒に見つけた「しゃばけ」の畠中さんの1冊。

でも、これは今まで読んだことのないジャンルの畠中作品でした。



百万の手/畠中恵(創元推理文庫)

まず時代小説ではないし、語り口も全然違う。
たぶん、執筆する作者の姿勢もずいぶん違っていたんだろうな、と思います。
ちょっと宮部みゆきさんの小説みたいな感じです。


これは、不審な火事で親友を失った少年・夏貴が、その原因をつきとめようと探るうち、身の回りでさらに人が死に、自分の出生にまつわるとんでもない秘密を知ることになる、といった物語です。

推理小説であり、夏貴が生まれた産婦人科病院の不妊治療をめぐる、ちょっとしたSFでもあります。
SF、であって、海堂尊さんの小説のような医療ミステリでないのは、ひと言で言ってしまえば、かなり荒唐無稽な要素が含まれているから。

もちろん、海堂さんは本職のお医者さんで、畠中さんは違うわけですが、それが理由で、というわけじゃなくて、畠中さんは医療モノを書きたかったわけじゃない、と、単にそういうことなんだと思います。

筆力のある作家さんなので、飽きさせることなく最後まで読ませてしまいますし、面白い小説なのですが、それこそ、雰囲気が似ているということで宮部作品と比べて考えると、僭越ながら、「粗いな~」という感じが強くします。

いろいろな要素が盛り込まれているのですが、多くが中途半端、という印象。
死んでしまった後で携帯電話の中に復活する親友。その親友の実は妹であったとわかる少女。少年の特異な出生のためにおかしくなった母子関係。
物語を面白くするために使われた道具たちが、途中でぽいっと投げ捨てられてそれっきり、という感じがするんですね・・・。

でも、畠中さんにとってこれはこのジャンル(つまり、時代モノでない、という)の「初期の」作品、ということになるのでしょうから――なんか、そのうちもっとパワフルになりそうです。




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  1. 2009/12/08(火) 20:34:00|
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