本と旅とそれから 「沈まぬ太陽」

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「沈まぬ太陽」



昨年から公開されている本作、見よう見ようと思っているうちに時間が経ってしまい、気づけばもう上映館が少なくなってしまっていて・・・危ないところでした。

今年の1本目は、重厚な社会派映画。


原作、山崎豊子さん(1999年)。
日本航空をモデルとした国民航空なる巨大航空会社を舞台に、渡辺謙さん演じる一企業人がたどる苛烈な年月のドラマ・・・かな。

公開後の評判がとても高いので心配はしていませんでしたが、超・長編原作を見事に違和感のない1本の映画に作り上げていたと思います(約200分)。
脚本は西岡琢也さんという方。よかったなぁ~。




原作では中盤のヤマ場となる、日航ジャンボ機墜落事故。
映画はこのシーンから始まります。

1985年なんですよね・・・。いつの間にか時間が経ったなぁ。
「お父さんは本当に残念だ・・・今までは幸せな人生だったと感謝している」の遺書には、25年(!)も経った今でも涙が出ます。




亡くなった方々はもちろん無念だったでしょうが、犠牲者の数を上回る数多くの遺族の悲嘆。
広い体育館にずらりと並べられた棺の光景には圧倒されます。

原作には、さまざまな人や組織が登場し、多くの人間関係や権力闘争がもつれ合うのですが、映画では当然ながらもっと焦点が絞られており、主人公・恩地元(はじめ)とその雇用主NAL(国民航空)の対立がメインに描かれています。

主人公が体現しているのは、ありがちな表現になりますが、「信念を曲げることができなかった不器用な人間」の姿。長いものに巻かれることをよしとしなかった、とも。
対照的に、かつて労使闘争の同志だった行天は、権力に媚び、出世を果たし、恩地を苦しめる側に回ります。

しかし、ひとたび汚い金や権力闘争に手を染めてしまった人間は、保身のために際限なくその泥沼を歩き続けなければならない。
そんな状況を楽しめる人間っていうのもいるのかも知れませんが・・・三浦友和さん演じる行天という人物は、それを楽しめるほど邪悪な人間じゃなかったみたい。




山崎豊子さんの作品は、力があるがために、受けるインパクトもとても強いのですが、最近いつも思うのが、事件や状況の描写やそれについての善悪の判断を、盲目的に受け入れてしまうのはよくない、ということ。山崎さんがノンフィクションとしてではなく、モデル小説として作品を書いておられる以上、そこに必ず虚構や脚色があるということを忘れてはならないと思います。

なので、あたかも事実のように描かれる政・財界やマスコミの腐敗した関係や、NALあるいはJAL内部のあれこれについても、細かいところまで鵜呑みにするのは危険だと思います。

その一方で、実像か虚像かを別にしても迫力を持つ、人物像。
嘘でいいからひと言わびれば、すべてが丸くおさまるとわかっているのに、それができない。
そのために家族が苦労し、老いた母に心労をかけるとわかっているのに、それでもできない。
なんだか、「火垂るの墓」の主人公の少年が思い浮かびました。

あのアニメを見た時は、「そのアンタの意地っ張りが妹を死なせたんだ!」と怒ったものですが、感想を語り合った初老の男性(当時勤めていた会社の役員さんでしたが^^;)は、「それができないんだよ、男には」と言っておられたなぁ。

よく「不器用」とひとくくりに形容される人の性格、実はいくつかタイプがあって、この「火垂るの墓」の主人公の少年や恩地元の場合は、プライド(映画では「矜持」と言ってたけれど)なのではないでしょうか。プライドが捨てられない。
・・・うん、わかる気もする。捨てられないということに共感するんじゃなくて、捨てられなかったら苦しいだろうな、というのが想像できる、ということですが。

墜落事故の後に、総理大臣直々の指名で就任した石坂浩二さん演じるNALの新会長が、「国民航空は必ず再建できるはずだと信じています!」と語る言葉。
JAL経営破綻の折だけに、現実の世界でも、きっとこの言葉を口にしている人がいるだろうと、ふと思いました。


映画「沈まぬ太陽」公式サイトはコチラ(音声あり)。

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tag: 山崎豊子 
  1. 2010/01/30(土) 20:37:00|
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うん、うん、うん、と思いながら読みました。

捨てられなかったら苦しい。

私が一番心に残ってるシーンを思い出しました。
流れに逆らっているほうが楽かもナといったシーン。

捨てられないのが男性って言うのも、そうかもな~って思います。
男と女は異文化交流ですね。

山崎ファンとしては、この映画は大好きです。
  1. 2010/01/30(土) 22:29:00 |
  2. URL |
  3. tomate11 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

lazyMikiさん、こんにちは
山崎さんのような重厚なテーマの小説は絶対に読まないのですが、劇場で観たくなりました。
lazyMikiさんの社会派的一面を垣間みました(笑)。
  1. 2010/01/31(日) 21:17:00 |
  2. URL |
  3. アッキーマッキー #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To tomateさん、
>流れに逆らっているほうが楽かもナ

恩地さんが息子と語るシーンだよね。
うんうん、印象に残ってます。
どんな流れか、にもよるとは思うけどね~・・・。
ものは言いようだから、「流れと共にしなやかに生きる」とか言えば、プラスのイメージになると思うんだけど。

でも、tomateさんがおっしゃりたいことはわかる気がします。

しかし、プライドを捨てられないといっても、「火垂るの墓」の場合、たったひとりの大切な妹の命とひきかえにでも、伯母に頭を下げられない主人公っていうのは・・・。
そ、そこのところは、いまだにわかりません。
恩地さんもなぁ・・・。ううむ、苦しい。


  1. 2010/01/31(日) 21:47:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To アッキーマッキーさん、
こんばんは。
山崎さんはお読みになりませんか~。
何についても、好き好きってもんですね。私は、ときどき読みます。
この日航ジャンボ機事故については、「クライマーズ・ハイ」なんかも興味深い小説でした。
映画は、重いテーマではあるんですが、200分、退屈することはないと思います。

のはははは。
古いたてものの取り壊し、とかいうハナシが出ると、急に社会派ヅラする私です^0^/
  1. 2010/01/31(日) 21:51:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

lazyMikiさんの感想を読むと、今年の日本アカデミー賞は、こちらに決まりかなッて気がしました。結果は授賞式を楽しみにして、と。

山崎豊子さんの原作ですよね。
最近、有吉佐和子さんの紀行文を読んで、
有吉さんの名前をこの頃聞かないなと思ったら、1984年に亡くなられてたんですよね。
山崎さんも作品も有吉さんの作品も、恥ずかしながら、読んだことがありません。
お二方とも、作品が多く映像化されているので、名前とストーリーはだいたいわかります。
だから、有吉さんが今も執筆活動を続けていたら、どんな作品を発表されたかなあと思いました。

…と、のだめちゃん? 思わずNHKのホームページをチェックしちゃいました。

  1. 2010/02/03(水) 15:20:00 |
  2. URL |
  3. ruksak #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To ruksakさん、
をを、日本アカデミー賞・・・有力でしょうね!
いつ発表されるんだったかな・・・?

有吉佐和子さんは、「華岡青洲の妻」、「和宮様御留」、「非色」・・・ぐらいかなぁ、読んだのは。「華岡~」は、すごい名作だと思います。
亡くなられた時は残念でしたが、1984年!そんな昔でしたか。
まだ5、6年しか経っていないような気がしてました。

NHKのHPに出ていましたか?
私は、確か、エキサイトのTOPのニュース欄か何かで見たのだったと思います。
信長の姪の、お江の方の話らしいですね~。
  1. 2010/02/04(木) 00:09:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

NHKのHPでは番組が決定した今年かわからなくて、別のエンタメ情報で検索して主演をたしかめました。 
篤姫の脚本家が脚本を書くそうですよ。音楽も同じ人になるといいなと思ったりして。
  1. 2010/02/04(木) 15:39:00 |
  2. URL |
  3. ruksak #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To ruksakさん、
ほほぉ~、篤姫の脚本の方なのですか。
楽しみですねー。
篤姫、確かに音楽も素敵でしたものね。
まああんまり特定の人ばかりを繰り返し採用すると飽きちゃうかも知れませんが、とりあえずは期待ですね。
  1. 2010/02/04(木) 23:39:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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