本と旅とそれから マドンナ・ヴェルデ/海堂尊

本と旅とそれから

マドンナ・ヴェルデ/海堂尊

えっと・・・これは、「医学のたまご」の主人公かおるクンとその妹がいかにこの世に存在するに至ったかという話、そして「ジーン・ワルツ」と同じ時間・同じ舞台を、異なる立場のもうひとりの女性の視点からたどった物語、ということになります。
マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデ/海堂尊(新潮社)

これを読み終えた日、テレビでは、来日した金賢姫さんと横田めぐみさんのご両親が面会した、というニュースをやっていました。
「めぐみがこんな仕草をした、というような話だけでもできるだけ聞きたい・・・」と、もう悲しみの色がしみこんだような表情で語るめぐみさんのお母さん。
あ、もちろんお父さんも映るわけではありますが、お母さんが悲しみの中にも非常にはきはきと語る方なので、つい注目してしまいます。

いつもは「めぐみが・・・」と娘のことを語る横田早紀江さんが、時々「めぐみちゃん」と呼びかける口調になることがある、その姿が、本書の主人公・みどりが、娘に「理恵ちゃん」と呼びかける姿にダブりました。

海堂さんの小説は、その多くが、現代の医療を巡る非常に深刻な問題を取り扱っていますが、「ジーン・ワルツ」-「マドンナ・ヴェルデ」シリーズ(?)では、産婦人科に関わる問題、不妊治療や、代理母といったことがテーマになっています。

そういえば、先日、NHKの特集番組で、救世主兄弟の話をやっていました。
臓器や骨髄(だったかしら?)の病気にかかった子供に、移植するための臓器を提供することを目的に産み出されるその弟・妹のことです。
この番組のプレゼンターとして海堂さんが出演し、お馴染み白鳥調査官と、「医学のたまご」のかおるクンが狂言回しキャラとして登場していました。

子供が欲しいという人の願い、子供を助けたいという親の願い、そしてそれを可能にする医療技術の進歩。それをどこまで許すか。どこに線を引くのか。
それは、立場の違いで天と地ほども意見が異なる問題。母親、あるいは母親になりたいと切望する女性たちにとって、無感動な顔で「そんなことは倫理的に許されるものではない」とか何とか語るどこぞのおエライさん(多くが初老の男性だったりしますが)の存在は、許しがたいものがあるかと想像します。

「マドンナ・ヴェルデ」から受取れる海堂さんの意見は、「子供の母親は『産んだ人』ではなく、『卵子を生み出した人』であるべき」、「代理出産の問題に、社会はもっと本格的に向き合うべき」といったことでしょうか。
医療の進歩の恩恵は享受すべきだ、科学的な合理性を優先すべきだ、という色彩が優勢な感じですが、最後には「医師の主張」よりも「母の思い」に軍配が上る点、医療は心を忘れてはならない、という海堂作品共通のテーマがここにも見られたように思います。

たとえ遺伝子が他人のものでも、それを知らずに自分の子供だと思っていれば、それは自分の子なのだ・・・というDr.理恵の主張、そうな気もするし、そうでない気もする・・・。
世の中には、ひとつだけの「正解」を得ることのできない問いが多いと思いました。

それにしても・・・「マドンナ・ヴェルデ」というタイトル、どんぴしゃですねぇ。


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