本と旅とそれから 楽園(上)(下)/宮部みゆき

本と旅とそれから

楽園(上)(下)/宮部みゆき

宮部さんの小説はちょっと久しぶりになるでしょうか。
にしても、この方の小説って、どうして読んでいてこう心地いいのでしょう・・・。
楽園楽園


楽園(上)(下)/宮部みゆき(文藝春秋)

おや、これって「摸倣犯」の続編なのですね。
「摸倣犯」で後半活躍する女性ルポライター・前畑滋子が「楽園」の探偵役。あ、探偵というより刑事役、という方が近いような。


でも・・・「摸倣犯」は「宮部作品の現代モノ中で一番!」と思うほど好きな作品だというのに、実は詳細をすでにしてかなり忘却しているのでありました(T_T)ああ、やんなっちゃうよ・・・。

冒頭に書いた「宮部さんの小説は読んでいて心地いい」って話ですが。
「楽園」にしろ「摸倣犯」にしろ、ストーリーはかなり・・・陰惨とでも形容したいもの。人が殺されるわけですが、何の罪もない人や弱い立場の人が理不尽かつ時には残酷な方法で殺害される。そうした事件を巡って展開するストーリーだというのに、なぜかこれが読んでいて心地よいのです。

とても人間とは思えないような人格の破綻した殺害犯人が描かれる一方で、それぞれに個性はあるものの、しっかりした道徳意識を持ち、「だから人の世は滅びない」って気持ちにさせてくれる本当の意味での「大人」が何人も描かれていることもあるでしょう。
でも、この大人の描き方っていうのも、一歩間違えば説教くさくなったりうさんくさくなったりするかと思うのですが、宮部さんの描き方はその辺が絶妙だと思います。

それに、登場人物――まあ、性格が破綻したような人は除くとして――がすごく自然で、自分に近いように思える・・・。「楽園」でいえば、前畑滋子が。
彼女は、ライターなんていうシャレた職業で、その意味では近いことはないんですが・・・何ですかね、こう、彼女の動きの小さなところが、例えば書類をめくったり喫茶店の椅子に座ったりといったようなことが、すぐ隣りで見ているように頭の中で映像化される・・・みたいな?

特別な描き方をされているわけではないのに、何だかそんな気がするのでした。

「楽園」は、「摸倣犯」とつながった小説ではありますが、「摸倣犯」ほど悪魔的な犯人を登場させているわけではなく、また犯人は物語の主要人物ではありません。犯罪そのものよりも、それを巡る人間の運命の哀しさ、ままならなさみたいなものの方が大きなテーマになっています。
そのせいか、「摸倣犯」を読んでいた時のような、ハラの底までキーンとくるような恐ろしさ、怖さはなくて、だから、スリリングな面白さという点ではさほどではないと思いました。

でも、やっぱり面白くて、ページをめくっている時間をものすごく楽しいものにしてくれます。

ただ・・・「楽園」というタイトル、んー、わかったよーなわからんよーな。
どんな人にも、どんな形にせよ、至福の時は存在し得る・・・てことですか?
あ、やっぱわかってないです^^;


webcitron01.gif


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tag: 宮部みゆき 
  1. 2010/08/17(火) 00:00:00|
  2. 2010
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コメント

上手いなと、いつも思います

いろいろ議論があるかと思いますが、
死刑に当たる罪(殺人、強盗殺人)の公訴時効が15年の頃の話で、
2004年に25年になり、さらに今現時点2010年には
時効が廃止されたんですよね。
作者のあとがきにもありますが、たしか足立区で非常に似ている
事件がありました。

楽園・・・「失われた楽園を取り戻す物語」ということかと感じました。
サイコメトラー少年萩谷等が書いた、網川浩一のあの山荘の絵の謎が
解決されていないのは、お気づきでしたでしょうか?
続編あるかも。
  1. 2010/08/17(火) 22:16:45 |
  2. URL |
  3. bullet #aRQmiz5I
  4. [ 編集 ]

bulletさん、

題材が重いだけに、フィクションといっても、現実との偶然の類似に気を使わずにいられないのでしょうね。
作中キャラの名前なんかについても、気にしておられましたよね。
最近では、数十年前に亡くなった自分の親と同居していたとか、押入れの中から子供の遺体とか、フィクションでもついていけないような話がほいほい出てきて絶句しちゃいますよね。

あの等少年の描いた絵・・・人の頭の中の記憶を描いたものっていうことですよね。あ、そうか、彼がどこで、あの山荘の記憶を持った人に遭遇していたのか、は書かれていなかったんでしたっけ。
私、前畑滋子さんのダンナさんのキャラ好きだから、続編あったら嬉しいな~^^
  1. 2010/08/17(火) 22:26:12 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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