本と旅とそれから 小さいおうち/中島京子

本と旅とそれから

小さいおうち/中島京子

第143回(つまり直近の)直木賞受賞作。

とても素敵な1冊で、私にとってはお初の中島京子さん作品なものですから、とても嬉しい♪
ここのところ、我ながら本読み傾向が保守的でよくないのです。あ、保守的ってつまり、すでに読み知っている作家さんの作品ばかり手に取っている、という意味で。
それでも、そうした作家さんの数がそれなりに多くて読むものがなくなっちゃうってことがないので、なかなか行いが改まらないのであります(-"-;。

小さいおうち


小さいおうち/中島京子(文藝春秋)

戦前・戦中の話を、まさに「見てきたように」書くんだし、中島京子さんて結構年配の方?・・・なんて思ったら、私と同い年でしたよ(てことは恩田陸さんとも、ですか)。
となれば・・・おばあちゃんの年代の方に取材したってことですかね。
・・・8月に読むというのは偶然ながらタイミング絶妙かも。

念のため、ですが、この後はそこはかとなくネタバレかと思います。まあ、物語自体、「あ、こゆ雰囲気で進むってことはもしかして最後には・・・」な感じで話の流れはある程度予測できると思うし、ラストが見通せちゃったからといって読む楽しみが減るとも思わないんですが、それは人にもよるかと思いますので。
今後、「読むかも」と思う方はご注意下さいませ。


物語の雰囲気と文体って、ホントに密接な関係にあるんですね。
「小さいおうち」は、最終章を除き、主人公のとある「女中」の一人称で語られます。
この「女中」という言葉ももちろん、ちょっとしたこだわりをもって意図的に使われる言葉。

女中の名はタキちゃん。物語は昭和5年から始まります。
彼女がご奉公する東京のある上品な家庭は、生活水準的にいえば、ちょうど「細雪(谷崎潤一郎)」の幸子の家庭とおんなじぐらいじゃないかしら、と思いますが、落ち着いた三人称で語られる「細雪」とは違い、「小さいおうち」の語り口調は、どこかのどかで童話的な雰囲気を漂わせています。

しかし、物語は次第に戦争の時代へと移っていきます。
どんな言葉で語ろうとも、戦争は戦争なのでした。

・・・7月の後半から8月前半にかけての時期は、マスコミで盛んに戦争関連番組が放送され、毎年何となく2、3は見てしまうんですが、年々募るのは、「国民を狂気へと駆り立てていく軍部は恐ろしいけど、異常なほど集団的に同じ方向を向いて考えることをしない国民は劣らず怖い」という思いです。

敗戦で世の中は一変したようではありますが、最近も折にふれて、日本人の国民性はあの戦争の頃と大して変わってはいないのでは、と思え、ちょっと背筋が寒くなります。
一番怖いのは、自分で考えていないのに、自分で考えて選択してるんだと思っちゃうことだと思う・・・。

「小さいおうち」でも、善良で穏やかな旦那様が「お国にご奉公」を連発するようになり、小学生の恭一ぼっちゃんも「お国のため」に友だちを嫌ったり傷つけたりすることを何とも思わなくなっていきます。そんな中で、時子奥様だけは、楽しいことや綺麗なものを追いかけたがって、男性陣から非難の眼差しで見られるのですが、考えてみれば、一見わがままに自分の好きなものを捨てたがらなかった奥様は、世の風潮に流されることを嫌い、自分というものを見失うことがなかったのです。

そんな奥様の輝きを、タキちゃんがどれほど愛していたか。

たとえ戦争は終わって再び世の中が豊かになっても、失われたものは戻らない。その悲しさ。
物語の前半で語られる、一家の生活がが穏やかで明るいものであればあるほど、それが過去のものになってしまってからの話は、楽しい夢から覚めてしまった後のように切ないのです。

もの足りない、と思う方もあるかも。
でも、戦争の悲惨を軽やかに描いた妙が、この物語の魅力かな、と思うのでした。

中島京子さん、他にも読んでみようかな。


webcitron01.gif


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tag: 中島京子 直木賞 
  1. 2010/08/27(金) 00:00:00|
  2. 2010
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コメント

おほー!
中島京子さん、とても大好きな作家さんです!
ぜひぜひ、他の作品も読んじゃってくださいませ。
私のお勧めは(聞かれてないけど)、「イトウの恋」。
「FUTON」も割と好きでしたが。
「小さいおうち」はまだ読んでないのです…。ぜひ読まねば!
  1. 2010/08/28(土) 12:02:08 |
  2. URL |
  3. yurinippo #-
  4. [ 編集 ]

yuriさん、

「イトウの恋」って何となく書名に覚えがあったのですが、もしかしてyuriさんのブログで見かけたのだったかな?
たった今手元にある中島作品は、たまたま図書館の書棚に残っていたナントカいうのですが(←テキトーに借りてきたため記憶すらしていない^^;)、「イトウの恋」も読んでみたいです。
私ももうちょっと作家さんのバラエティを広げないと~。
  1. 2010/08/28(土) 22:11:55 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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