本と旅とそれから 神の子どもたちはみな踊る/村上春樹

本と旅とそれから

神の子どもたちはみな踊る/村上春樹

「1Q84」が、それまで私が読んだ村上春樹作品になくストーリーが明確に思え(内容は荒唐無稽だとしても)、楽しめたものですから、勢いに乗ってもう1冊手に取ってみました。短編集。
神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る/村上春樹(新潮文庫)

収録短編6編のはっきりした共通項は、阪神淡路大震災。
それがどの程度それぞれの物語に関わってくるかは作品によって違うのですが――というか、どれもさほど大きく関わっているわけでもないのですが。

妻が大震災のニュースに四六時中見入っていたと思ったら離婚を言い渡された男、神戸に家族を残して家出してきた男と焚き火をする女、大震災で目を覚ました「みみずくん」から東京を守るべく戦いを決意した「かえるくん」に助太刀を依頼された男・・・実に・・・あれこれ。

この短編集は、今から10年前に出版されたものですが、やがては「1Q84」につながっていくんだな、というものも、ときどき転がっているのでした。

新興宗教に目覚めた母親に連れられて、勧誘のために家々を回り歩いた思い出を持つ男というのは、天吾くんと青豆さん両方に通じるし、知的でクールな女医さんが、リゾート地の貸切プールでひたすら泳ぐ様子は、外出のままならないマンションの一室で黙々と自己鍛錬に励む青豆さんの姿を連想させます。

地震のほかにも何か共通項があるのかなぁ・・・と考えるに、まあこれも作品によって程度はまちまちですが、どのお話の主人公も、それぞれの空虚さみたいなものを心に持っているのかな、と。
つらつら考えていてふと文庫版の裏表紙の説明を見てみたら、「――おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた――。」という一節がありました。

「廃墟」、か。内なる廃墟、ねぇ。なるほど、上手いこと言うなー。
物語の展開によって、相変わらずひゅるひゅると寂しい風が吹いたまま終わる廃墟もあるし、やがてそこに再び花が咲き、美しい緑野に戻っていくんだなと思わせる廃墟もある、と。
割と、光を感じさせるラストを迎える物語が多かったです。

人の心というのはとにかく、複雑で面倒で、割り切れなかったりするものですね。
・・・不思議なほど単純な人も、たまにいるみたいですが。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 村上春樹 
  1. 2010/08/28(土) 00:00:00|
  2. 2010
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1155-1b82a2a9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する