本と旅とそれから 沈める滝/三島由紀夫

本と旅とそれから

沈める滝/三島由紀夫

川端康成からのつながり・・・といっても、どうつながっているのか、今のところ全然わかっていないのですが。
「金閣寺」しか読んだことなかった三島由紀夫。
先日、たこさんとお話していてちょっと名前が出たので、何というかとっかかりとして、その作品を読んでみました。



沈める滝/三島由紀夫(新潮文庫)

図書館にあった本が古い版で、表紙画像がネットになかったので、借りたものをそのままスキャンしたんですけど――古い文庫本って、字が小さいのが読みにくい・・・。

それにしても、ようやく三島作品を手に取ったかワタシ、って感じです。


主人公・城所昇という青年、27歳で天涯孤独、大実業家だった祖父の遺産で大金持ち。しかも、当人は容姿端麗、土木技術者としての才能にも大いに恵まれ、祖父の起こした一流電力会社の社員。
見た目が整ってるというだけでなく、「ぼんやり立っているだけで、何故かしら女に感動を与える」というのですから、すぐに「映画化するなら誰が演じればいいかな~」と考え出す私。

ま、そんな脱線はさておき(山本耕史さんどう?)、結局この作品はこの昇という人物の内面を細かく細かく分析し描写するというのが核心・・・になっている気がします。

人の内面の複雑さって、どのくらいバリエーションがあるんでしょう?

どんな人でも、外面的に単純そうに見える人でも、心の中は複雑なんでしょうね。
主人公・昇はしょっちゅう、何かがあって自分の内に何らかの感情的な反応が起きる、そのことについて――あるいは起きない場合はそのおきないということについて――驚くんです。

でも、このくらいは誰にでもあるかな。主体としての自分と、それを見つめるもうひとりの自分。「へぇ、アタシってこんなことに感動するヒトだったんだ」みたいな感覚。

人物を描くということを中心に据えた小説なら、多かれ少なかれそういうものなのかな、と今さらながら思いますが、この「沈める滝」は、特にこの、ひとりの非凡な青年の心理をとことん観察・分析してそれを書き表わす、という作業の産物なんだな、と思いました。

女性関係の華やかな昇ですが、恋愛という心の動きとは無縁。とことん淡白。
その彼が顕子(あきこ)という女性と出会い、内面に微妙な変化が生まれる。

顕子との関係、そしてもうひとつ大きいのが、技術者である昇が、ダム建設のために訪れた新潟県の山奥で経験する、自然の中での暮らしです。
都会の暮らしに慣れきっていた彼が、いわば未開に近い自然と向き合って感じる内面の大きな動き。

その二つが、明確にではないけれど、対比させるように描かれていくのです。

この城所昇という青年。
共感できない、好かん!という本読みさんも多いみたいですね・・・ちょっとネットで見たところでは。
女性に対してひたすら冷徹、打算的ですからね~。

でも、少なくとも小説の登場人物としては、私は魅力的だと思いました。
のはは、やっぱり美形だっていうのと、女性関係以外については素朴な一面があったりするからかな~。
・・・ああ、やっぱり、「三島作品への冒涜」とか言われそう(T_T)。

この作品自体、冒頭は「またよくわからん本を読み始めてしまった・・・」と感じたものの、段々面白く感じることができました。個々の表現には、やはりよくわからないと思うものが結構ありましたが、全体としては共感できることもいろいろありました。
川端作品を読んで感じた、無力感にも近い「わからん」感は持たずにすみました(ほっ)。

かなり多作な三島由紀夫、どういう順番で取組むのがよいのかまったくわかりませんが、川端作品と並行して読んでいこうかなと思います。


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  1. 2010/02/25(木) 23:20:00|
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