図書館の文庫本棚で、「あっ、出てたの!」という感じに借りて来ました――出てたのね、文庫版の新刊。
あーたらかーたら言いつつも、文庫版が出れば買ったり(でももうブックオフ送りになりましたが)借りたりして読み続けている本シリーズ。
面白かったです。
蒼路の旅人/上橋菜穂子(新潮文庫)この巻は、バルサの登場しない、皇子チャグムの物語です。
皇子様が主人公というだけあって、物語のスケールもインターナショナル。まあ、グイン・サーガやデルフィニア戦記と、その点は同じで、一種の「国盗り物語」でしょうか。
この後の2冊に続く、三部作の1冊目、ということのようです。
巻末に大森望という評論家の方が解説を書いておられるのですが、その内容すべてに同感とはいかないものの、挙げておられる映画・小説作品をほぼすべて私も見たり読んだりしていたことが、びっくり&爽快でした。
解説文って、言及される作品の半分か三分の一ぐらいは名前しか知らないもの、ということが常なのですが。
まあでも・・・解説文の内容はあんまり大したものでもなかったような・・・(シツレイ)。
やはり巻末に、著者・上橋菜穂子さんが、「私は『絶対の視点』のない物語」を書きたかったのだ、ということを述べておられるのですが、うーん、人気作家の言にケチつけるなんて僭越至極とは思えども・・・それって今さらあらためて言うほどのことなんでしょーか^^;。
ガンダムにシャア少佐が登場した時点ですでに多くの人が語ったことのような気がいたしますです。
つまり、現実世界に絶対的な善玉悪玉はない、ってことですね。その点、杉下右京より小野田官房長が正しいんじゃないかと思えますが。
ただ、「人類の歴史の中で、啞然とするほどの大虐殺や悲劇を生みだしてきたのは、悪意というよりはむしろ、ひとつの視点に固着した思想や意識であったと思う」と書かれている点についてはふか~くうなづきます。
宗教戦争なんか、まさにそれですからねー。
しかし、人は前に進もうとする時、ひとつの道を選ばざるをえない――そうそう、それも真実ですよねぇ。
というわけで、物語のマクロレベルでは多角的な視点を備えつつ、登場人物たちは自分の立ち位置において全力を尽くそうとする、その群像なのですね、ミクロのレベルでは。
・・・やっぱり、ガンダム――っていうか、昨今の人気作品は、ジャンルを問わずそゆの多くないですか?
ですから、その点に特に目新しさを感じたりはしないのですが、若干15歳で公私両面で大いなる苦難に見舞われるチャグムにすごく同情して、応援する、その思い入れの過程が、私にはこの作品の魅力でした。
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上橋菜穂子 守り人シリーズ
- 2011/02/05(土) 22:30:00|
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