本と旅とそれから 檸檬/梶井基次郎

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檸檬/梶井基次郎

昭和6年刊行の短編集。
著者・梶井基次郎は、翌7年に肺結核のため、31歳で亡くなっています。
表題作の「檸檬」の他にも、「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という冒頭のフレーズであまりにも有名な超短編「桜の樹の下には」が収録されています。
「檸檬」
檸檬/梶井基次郎(新潮文庫)

肺結核というのは、つい最近まで死病だったのですよね。
進行の速度は人によって違うようですが、かかった人誰もに死を意識させずにはおかない病気。「檸檬」にはとても多くの短編が収められていますが、その大部分に、程度の差はあっても「病」が影を落としています。

治る希望がなく、段々と衰えていき、体力と同時に気力までもが奪われていく。そんな病と共にある生活の中で、小説に描かれるのは、研ぎ澄まされた感性がとらえる主人公自身の心の内。

「檸檬」に描かれた京都の果物店(フルーツ・パーラー併設、だったような気が・・・)が閉店、という新聞記事を目にしたのは、つい去年か一昨年だったと思います。寺町通の果物店で買った檸檬を持って、丸善に入る――京都に丸善てあったのか。丸善のHPを見ると――あ、今もまだ、あることはあるのですね。

気紛れに買った檸檬を手にしてどんな気がした、丸善に入って本を広げてみながらどんな気持ちだった――平たく言ってしまうと、そんなどうということもないある日の主人公の様子と心情が描かれているだけ。
他の短編にしても、ストーリーというほどの物語展開はないような作品ばかりで、ですから、筋書きで記憶しておくことはかなり難しいものばかり。

ものによっては、病気のためか、あまりにも神経症的な心理描写にちょっとイラっときたりもするのですが、一方で、とても共感を感じる部分もあったり。
日々のあれこれの中に、気をとめることもなく埋もれさせてしまうちょっとした気持ちの動きを、よくぞ見逃さずとらえたものだなあと、そして見事に文章に写したものだなあと、感心したりしました。

町のあっちでもこっちでも、肺結核(肺病)で誰々が死んだという話を聞く。医学では治らないというので、怪しい民間療法(ネズミの黒焼きを少しずつ飲む、とか・・・)がはびこる。そんな病に自分もかかっているのだと思うとき、今生きているこの時は、どんなふうに感じられるものでしょうか。

作品にもよるとは思いますが、昭和が日一日と遠くなっていく中で、段々、戦前の文学作品を読み進むのに時間がかかるようになってきてしまいました。漢字や言葉遣いはもとより、描写されている登場人物たちの気持ちが、時としてよくわからない。なんでそんな妙なことを思うんだろう、という感じです。

どれだけ昔でも、例えば平安時代の物語の中にでも、難なく共感できる感情を見つけることができるかと思えば、60~70年程度の歳月のせいでわからなくなってしまう気持ちもある。

その一方で、目に映る何気ないものや景色を丹念に捉えようとする文章に、何となく読んでいてほっとする思いもあるのでした。

webcitron01.gif


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tag: 梶井基次郎 桜の本 
  1. 2011/04/02(土) 22:30:00|
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