本と旅とそれから 獣の奏者/上橋菜穂子

本と旅とそれから

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tag: 
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

獣の奏者/上橋菜穂子

オババになるというと、いったん浸み込んだものの感じ方というのがどーにも抜けず、「日本人がカタカナ固有名詞を散りばめて書くファンタジーは、どうも頂けない」という感覚がいまだにかなり残っているワタクシではあるのですが――。
それでもやはり・・・

すばらし~~ぃ!
獣の奏者・闘蛇編獣の奏者・王獣編獣の奏者・探求編獣の奏者・完結編獣の奏者 外伝 刹那


獣の奏者 闘蛇編、王獣編、探求編、完結編、外伝・刹那/上橋菜穂子(講談社)

「守り人シリーズ」の上橋菜穂子さんのもうひとつの人気シリーズということで、アニメ化もされていますし、存在は知っていたのですが、「図書館で見当たらないし~」と、何となく手を出さずにいた「獣の奏者」。先日、思いがけなく文庫本の棚に並んでいたので、喜んで借りてきました。

最初の2冊でいったん完結し、続きが読みたいという声に応えて続編が書かれ、外伝も加えて今度こそ本当に完結したというこのシリーズ。前半を文庫、後半を単行本で読みました。
やっぱりねー、シリーズものは完結してから読む方が迫力あっていいですねー。
・・・物語の筋を途中で忘れずにすむ、とかいうトホホ(にして最大)な理由もありますが、やっぱりのめり込める度合が違いますもの。

守り人シリーズの人気も高いけれど(私は文庫化待ちで読んでいるため、まだ途中なんですが)、何というんでしたっけ――えー、そう、完成度、それがこちらの方がかなり高い気がします。

それにしても、ファンタジー作品というのは一種の形式というか、物語を紡いでいくための一連の道具みたいなものがあって、書き手の人はその道具の中から選んで使って作品を形にしていくんだなと思いました。上手く言えませんが、クラシック音楽の作曲家みたいな感じ?
種類はいくつかあるけれど、基本的に使う楽器は決まっている。出来上がるメロディーは様々に違っていても、部分を聴くならば、「ああこれはフルートだな」とか「これはコントラバスだな」とわかる、みたいな。

「獣の奏者」には、FTの目玉の道具である魔法は使われていません。そして、闘蛇と王獣という生き物が大きな要素となっています。
この二つの生き物って、その特徴をひとつに合わせたらドラゴンになる感じです。

で、最初のうち私は、ものすごく「パーンの竜騎士」シリーズが意識されました。
私がパーンの大ファンだからということが大きいんですが。王獣という神の獣のキャラクターや、主人公・エリンと王獣(特にリラン)の関係などがとってもパーン。
もちろん、大きく違う点もありますけどね。

が、ファンタジー作品というのはそうしたものなんだろうと思います。
パーンにしたって、私がはっきりと認識できないだけで、それ以前の何かの作品の影響を受けているのかも知れませんし、そもそもドラゴン(あるいは竜)という架空の生物は、洋の東西を問わず、伝統文化の一部として定着してる存在ですし。

神聖な王、獣のための医術や飼育法を学ぶ学舎、神秘的な緑の目を持つ一族、などといった要素も、ひとつひとつは初めて聞く感じのするものではないのですが、同じ楽器を使っても違うシンフォニーが出来ていくのと同じように、「獣の奏者」の世界は、とても完成度の高い、独特の風の匂いを持つものになっていると思います。

想定読者の年齢層を限定していない、というか、子供向けには書いていない、と上橋さんは言っておられます。わざわざそんなことを明言しなければならないところが、児童向け作品からスタートされた作家さんにとっては煩わしいだろうなと思います。
そんなことは作品を読めばわかる・・・とはいうものの、子供向けには書いていなくても、子供も読むだろうということは意識しておられるようで、一種のお行儀の良さみたいなものは感じられます。
万事にどぎつい描写が多い昨今、これはかなり目立った上橋作品の特徴と言っていいかと。

そして、「指輪物語」が発表されて話題になった頃、力の指輪は核兵器を暗示するのではないか、と言われたのと同じに(作者のトールキンはこれを否定したそうですが)、武器として使った時には究極の圧倒的優位性を持つ王獣も、現代に置き換えるならばやはり核兵器なのかと思えます。

そして、「他に方法がないから」と、苦悩の末にその究極の兵器を使う決断をした結果、人間を待ち受けているのはどのような結末なのか。
しっかり管理していけば絶対安全、と謳われていた原発が、「想定外」の出来事によってどんな被害をもたらしたか、という現実世界の出来事とも、通じるものがあると思われるのでした。

ぎりぎり何とか自分たちが制御していける、と思いながらも、頭の片隅では実は自分たちの手に余るのではないか、自分たちは大それたことをしているのではないか、という声が消えない――兵器だったり、技術だったり。そこにチャレンジしなければ進歩はない、と思う一方で、その行為が勇気なのか狂気なのか判別がつかない。
後世の人が振り返って見る時にしか、その答えが出ない。
現代は、そのテの物事が結構多いのだなぁと思うのでした。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 上橋菜穂子 
  1. 2011/05/27(金) 22:30:01|
  2. 2011
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1293-13241587
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

これ私も読みたいんです!
守り人シリーズ読み終わったら、と思ってとってあったのですが
文庫の守り人シリーズも最後に3巻いっぺんに出ましたし、
あれ終わったらそろそろ読み始めようかなー^^

>シリーズものは完結してから読む方が迫力あっていいですねー。
同感です!
先日建築探偵桜井京介の最終巻を読んだときも
その前に読んでた巻をあまりに忘れていて我ながら呆れました。
何でもそうですが、一気に読んだら迫力でしょうねー!
  1. 2011/06/01(水) 12:33:57 |
  2. URL |
  3. yurinippo #mQop/nM.
  4. [ 編集 ]

yuriさん、

建築探偵シリーズ最終巻、読まれましたか。
私は図書館の予約待ち・・・と思ってチェックしたら、あ、割当て済になってる。明日あたりお知らせメールが来るのね。
嬉しい・・・というより、とりあえずシリーズが完結するのでめでたいって感じです^^;。
最後の方は巻をまたがって話が続いてましたもんねぇ。
だもので、忘却のダメージがより大きいというか。やれやれ~。

守り人シリーズは、まだ文庫版が図書館に入ってないんですよねー。
もうちょいだと思いますが。

先日、海堂さんのバチスタシリーズ(ではないかも知れないけど、どっちにしろどれもつながってますもんね)の「螺鈿迷宮」を文庫版で再読して、忘却しかけていたストーリーを思い出しました。
やっぱり、シリーズものはいっきにどーーーっと完結したいですねぇ。
  1. 2011/06/01(水) 23:55:29 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。