本と旅とそれから 壺坂幻想/水上勉

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壺坂幻想/水上勉

京都に出かける前にほとんど読み終えていたんですが、その後何だかバタバタしておりました。
やっぱり師走というのは気忙しいものです――うぅ。

さて、本書は、水上勉さんのエッセイ集。
エッセイというか――思い出の記とでも呼んだほうが。何となく切ない雰囲気です。
「壺坂幻想」

壺坂幻想/水上勉(講談社文芸文庫)

祖父母、両親、叔父、そして水上さん自身の過去やまた子供のこと。こうした文章のことを「赤裸々に綴った」というのでしょうか。
水上さんは福井県生まれですが、生家が貧しかったことからその菩提寺の縁で京都・相国寺の塔頭・瑞春院というところに入門されます。
その後わずか数年でそこも飛び出してしまうんですが・・・。

貧しさ。その厳しさ。特にそれが印象的でした。

水上さんは大正8年生まれなので、子供の頃の思い出といえば大正から昭和の初めにかけてということになりますね。その頃の、金銭的に貧しい生活とはどんなものだったか、ということの片鱗が生々しく覗かれるような気がしました。

たとえば、水上さんの父方のおばあさんという方は目が不自由だったのですが、なぜ目が見えなくなったかということや、昔の貧しい村には目を病んだお年寄りが多かったという話を読むと、現代には現代なりの困った問題も多いけれど、やっぱり医療や財政の進歩はありがたいものだと思います。

今だったら治る病気。今だったら免れられる苦痛。今だったら得られる社会保障。
現代にならあるものの多くが、昔はなかった。だから当時の人は、今よりずっと病や障害に苦しみ、子供までも貧困に悩まねばならなかった。
・・・もちろん、今の世には今の世なりの貧困があるし、どれだけ医療が進歩しようとも、人間が病に苦しまなくてすむようにはならないわけですが。

貧しい国には暮らせないなぁ、ワタシのようなぐーたら者は。
というか、人間、ひとたび手にしてしまった豊かさや利便性は、手離せないものなんじゃないですかね。
でもって、世界でも日本ほどあれもこれも手に入る便利でしかも清潔な国ってそうはないかも。以前、トルコから日本に赴任していた友人に「キミたちには、日本みたいな国に暮らせてどれだけ幸せか、わかんないでしょ」と言われたことがありますが、そうなのかも。

日本も昔は貧しかったんですねぇ。

国全体も貧しかったでしょうし、その中でも水上さんの家は貧しかったわけです。
その後、水上さんは物書きとして名声を得たわけですが、生まれたばかりの子供が死んでしまったり、別の子供には障害があったりと、その後も水上さんの周辺はあまり平穏ではなかったようです。

そうしたことなども、ひとつひとつ思い出して淡々と綴っておられます。

あまり淡々としていて、何だか冷淡にすら思えるところもあります。
昭和51、52年の作品なので、今だったらこうした言葉は使わないだろうというような、どぎつい表現もあちこちに見られます。その影響も少々あるかも知れません。
ご自分についての話などは、ことさら素っ気ない書き方になっている部分もあるのかも。

50代半ばで幼い頃を振り返り、懐かしい人や出来事の思い出を記す。
ちょうど半世紀の昔・・・思い出もセピア色がかっているのでしょうか――と、他人事のように書いてますが、私だってもう何年かすれば、本書を書かれた頃の水上さんの年齢です。
水上さんのように書き記すことはできなくても、昔を振り返ることは私にもできるわけで・・・。昔の自分、そしてそれを振り返っている自分、どちらにも何となく、切ないものが感じられるのでした。

・・・年とった、って感じしますねぇ^^;。


webcitron01.gif


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  1. 2011/12/12(月) 22:30:00|
  2. 2011
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