本と旅とそれから 川端康成・三島由紀夫 往復書簡

本と旅とそれから

川端康成・三島由紀夫 往復書簡

感動。
そうか。そうだったのか。
川端と三島って、こんなにも近かったのか。
二人の年齢差、26歳――まるまる一世代というか。父子ぐらいというか。



川端康成・三島由紀夫 往復書簡
(新潮社)


圧倒される1冊でした。
もちろん、1冊読んだだけでどれだけわかるというものでもないのでしょう。でも、これは第三者の書いた評伝・評論といったものではなく、川端、三島という二人の天才の生の声です。


読みながら、この二人についてのわずかばかりの知識がぐるぐると頭の中で巡ってました。
・・・つくづくホントにわずかばかり。ノーベル賞と自決・自殺ぐらいですか。

本の扉に、川端のノーベル賞受賞が決定した翌日に撮影された、二人の写真がありました。
高ぶる思いを抑えるかのように、ちょっと固い笑顔を浮かべた和服姿の川端康成。その横で、スキのないスーツ姿でタバコをくゆらす、穏やかな表情の三島由紀夫。
川端康成のノーベル文学賞の推薦文は、三島が書いていたのですね。

そして、三島由紀夫の葬儀委員長を務めたのは川端康成でした。

書簡集の後に、本書を編纂した佐伯彰一氏と、川端康成の養子・川端香男里氏(女性のような名前ですが男性です)の対談が併せて収録されています。意外なことにその中で、川端のノーベル賞受賞が、三島の自決のひとつの引き金になったのだろう、といったことが語られています。
三島自身、ノーベル賞の候補と目されたこともありながら、同じ日本から川端が受賞する。
となれば、自分が今後受賞できるであろう可能性は低く思われてきて、競争意識の強い三島としては、身の内に焦りのようなものを感じたのでしょうか。

師と仰ぎ、誰よりも敬愛する先輩・川端にノーベル賞を取ってもらいたい。
だから推薦文も書く。その一方で、その川端に対する競争心に身を苛まれる思い。

三島由紀夫というのは、とても自己矛盾に満ちた、おそらくはとても魅力的な人物だったのだろうなと思います。
むくむくと、三島作品をもっと読みたいという思いがわくなぁ。


小生が怖れるのは死ではなくて、死後の家族の名誉です。小生にもしものことがあつたら、早速そのことで世間は牙をむき出し、小生のアラをひろひ出し、不名誉でメチヤクチヤにしてしまふように思はれるのです。生きてゐる自分が笑われるのは平気ですが、死後、子供たちが笑はれるのは耐へられません。それを護つて下さるのは川端さんだけだと、今からひたすら便り(ママ)にさせていただいております。

三島がこう綴るのが昭和44年。三島割腹自殺が45年。
ちなみに、川端のノーベル賞受賞が43年。

もちろん、三島事件の原因は他にもっと大きなものがいろいろあったはずです。
そしてまた、この三島の自殺が逆に川端にとっても大きな打撃で、彼を大きく死へと押し流していく一因になってもいるようです。

大学生だった三島が初めて川端に手紙を送ったのが昭和20年。
以来、三島の才能を見とめた川端の後押しで文壇にデビューし、交流を続けて四半世紀。

あまりにもショッキングな形で終結した二人の友誼。

三島がどれほど川端を慕っていたか、そして川端がどれほど三島に親愛を寄せていたか、一通また一通と読むうちに、段々とそれが伝わってくるように思いました。

まるで川端に甘えるかのような茶目っ気のある文を綴る三島。もはや文壇で確固たる名声を築いた後にも、書いたものを川端が褒めてくれたと子供のようにはしゃぐ三島。
一方で、最初は後輩を導くように接していたものが、やがて三島の若い才能を眩しく見るように、最大限の賞賛を書き送るようになる川端。

読み終えてすぐ、Amazonに注文してしまいました。
これから、三島と川端の本をもっと読みながら、折にふれて読み返そうと思います。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
  しばらく見ないでいるうちに、すごくリニューアルされててびっくり!^^;
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

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tag: 川端康成 三島由紀夫 
  1. 2010/03/30(火) 23:50:00|
  2. 2010
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コメント

To 鍵コメさん、
ほよっ、お久しぶりです♪

そうなのです。私も、ほかのブロガーさんとお話していてふとしたことから知りました。
人間関係って、著名人であるかどうかに関わりなく、多くの場合複雑で微妙ですね。
時間の経過とともに変わることもありますし。
人間自体が複雑で可変的だから、当たり前かも知れませんが。

それにしても、人が死を選ぶ理由というのはいろいろあるものですね。
三島の場合なんかは、いろいろというより、よくわからないみたいですが・・・。
不可能と知りつつも、三島自身の筆でその辺を文章にしてもらいたかったと思ってしまいます。きっとすごく面白い小説になったでしょうねぇ・・・。
  1. 2010/03/31(水) 21:29:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

この書簡集をお読みになったという記事をみて、
あの三島さんと川端さんて、そんなに仲良しだったのかーと、そこに驚きました。
スキをみせない硬質な印象のある三島由紀夫が、ナマコのごとく軟体の川端さんに、甘えていたなんて…(うーん、なんて勝手な印象だろう)
あまりに不思議!なぜ?どうして?どんなふうに? これは読むしかないですね。

むかーし、三島由紀夫の心中の条件といったような文章を読んだことがありました。徹底的に心中を美化していて、ゆえに大抵の心中はただの逃避で、心中という尊い行為に値しない!と言っていたような覚えがあります。
三島由紀夫にとって、彼の自決は、自決というに値していたのでしょうか。。。
純粋な人だけに、最期まで自問自答し続けていたような気がします。
  1. 2010/04/08(木) 00:29:00 |
  2. URL |
  3. たこ #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To たこさん、
最初のうちの三島→川端書簡は、ホントに熱烈なファンレターって感じです。
が、後の対談部分を読むと、その当時、三島はまだ大して川端作品を読んでいなかったということで・・・まあ、そんなちょいいい加減なところも、悪くないなと思えますが。
三島はなぜ自死したのか、きっと多くの人が様々に推測してると思いますが、結局のところそれは推測というよりは、憶測なのかも知れません。

たこさんのおかげで川端―三島ライン(?)に興味がわいてきたので、これから三島作品も読んでいきたいと思っています。
でも・・・きっととってもスローペースだろうと思いますが^^;
それでも、とても楽しみです!
  1. 2010/04/08(木) 22:57:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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