本と旅とそれから 路傍の石、真実一路/山本有三

本と旅とそれから

路傍の石、真実一路/山本有三

「路傍の石」は、「再読」と書こうかと思ってやめました。
おそらく、むかぁ~しに私が読んだのは、小学生(たぶん)向けに抜粋されたものだったのでしょう。「路傍の石」がこんなに長編だとはとても意外でしたから。


路傍の石(新潮文庫)、真実一路(角川文庫)
/山本有三


「真実一路」の方は、図書館で借り出した文庫本がずいぶん古くて、カバーが取れてしまっていてどんな表紙だったのかわからないのでした。こちらの方は、たぶん初めて読んだのだと思うけど。


「路傍の石」は、貧しさゆえに苦労する少年が、しかし自身の才能と勤勉で少しずつ出世していく物語です。
でも、未完なんですね。途中、戦前は軍国政府に、戦後は占領軍に、些細な(と思える)理由で修正を求められ、山本有三はそれくらいならばと筆を折ってしまうのです。

人物像としては、「路傍の石」の方がずっと共感できる――いや、好感を持てると思いました。
主人公・吾一の性格って、漠然とですが「昔の日本人」の典型みたいな気がするのです。
頑張りや、頑固、意地っ張り(同じかしら)、向上心、見栄っ張り、道徳観――良いも悪いも取り混ぜて、そういった気質がひとつになってひとりの人間を形成しています。

彼を苦境に追いやったものは、貧しさというより、むしろ愚か者の彼の父だったと言った方がいいかも知れません。そしてこの愚かな父も、その生まれ育った環境の産物ではあります。
どうしようもない人物。読んでいて「あーーっ、ハラ立つ!」という気分にさせられます。

ところが、「真実一路」には、そんな人物が二人出てきます。
主人公(ではないかな?)の少年・義夫と、その母・むつ子。
二人も出てくるんだからホント、読んでてかなりイヤになっちゃうんですよぅ。

「真実一路」の方は、「路傍の石」より物語の時代が下ってまして、義夫は貧しさなど知らずに育った、絵に描いたような「苦労知らずのワガママ坊主」。
私が言うのも何ですが、この義夫少年、「お尻ひっぱたいたれ!」なガキんちょなのだ!
で、彼を産んですぐに家出して、現在は年下の恋人に夢中の母。
それだけなら個人の自由ってもんですが、この母が、何かというと、捨てた元夫のところにお金の無心に来るんですよ・・・。ううぅ。

やがて義夫は、家の金はクスねるわ、落第するわ万引きするわの問題児になり、母はといえば、最後は男の後を追ってガス自殺を遂げるという――。

これでどうして「真実一路」なんですか?な感じなんですが。
まあ、義夫にしても母にしても、自分たちなりに一途に思うものはあるらしいんですが。
それ以上に、立派というかむしろ哀れなのは、義夫の父と姉。
確かに彼らには、「真実一路」という言葉から連想される、静かなひたむきさのようなものが感じられます。

なのに、世の中の常というべきでしょうか、そういう健気な人たちというのは、ワガママで他人を思いやるということのない人間に振り回される運命にあるのですね。ああ。

もしかすると、山本有三は、そうした愚かさや、自己を律することのできない弱さをも含め、「人間は愛しい」な~んていう視点を示しているのかもしれない。
いくら何でも、「ったく、ハラたつ母子だった!」だけが「真実一路」の感想であってよいとは思えない・・・。

――でも、基本、それです、ワタシの場合。
なぜ「真実一路」が近代文学史に名を残す作品なのか。わ、わからん・・・。




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lazyMIkiさま お早うございます~

コメントは久しぶりですが、美味しいお菓子、お料理、いつも愉しく読ませていただいています。

山本有三の「路傍の石」を取り上げておられたので、懐かしさのあまりコメントしてしまいました。子供時代にも読んだことがありますが、原作を読んでいたのか、リライトされたものを読んでいたのか、覚えていません。確か、映画かドラマもあったように思うのですが~。

「真実一路」は読んだ記憶がありません。久しぶりに読んでみようかと思ったりもしています。

ミ(`w´彡)
  1. 2009/10/08(木) 08:57:00 |
  2. URL |
  3. rudolf2006 #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

To rudolfさん、
こんばんは~~^^

いつも読んで・・・ううっ、嬉しゅうございます。ありがとうございます!
(ここのとこ、ネタがなくてちょっと間遠になってしまってますが・・・。)

先日、山本有三が「路傍の石」などを書いたという家に出かけたので、いい機会かと、読んでみました。
思ったよりもずっと長編だったのでちょっとびっくり。
映画化もされていたのですか。ストーリーは地味な小説ですけどねー。

あ、そういえば、今、rudolfさんのブログで教えて頂いた「ミレニアム」を読み始めたところなのです。
でも、マヌケな私は、あの小説は英語で書かれたものだと思って英語版で読み始めたのですが、よく見たら、スウェーデン語から英語への翻訳モノでした・・・(T_T)。
買ってしまったので、1巻目は英語で読みますが、次からは日本語版で読みたいと思います。
  1. 2009/10/08(木) 21:52:00 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #79D/WHSg
  4. [ 編集 ]

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