本と旅とそれから 月魚/三浦しをん

本と旅とそれから

月魚/三浦しをん

当初思っていたよりも、三浦しをんさんは多作な作家さんでした。
まだ30代半ばのお年だけれど、著書の数が結構多い。まあ一応、今出版されているものは全部読んで、あとは出る度に図書館で予約待ちをして、というお馴染みのパターンに持ち込みたいところですが、まだちと道のりはありそうです。

本書は、三浦さんのデビュー第2作。ごく初期の作品、てことですね。
「月魚」

月魚/三浦しをん(角川書店)

ところでこのタイトルは何と読むんですかね。
「つきうお」?「げつぎょ」?「つきのさかな」とか読ますんだろーか。
やーだLM、これは「〇〇」って読むんでしょーが!もの知らず!
・・・と、誰かにご指摘頂いて赤面する、ということになりそうな気が、ずっとしております。


面白かったです。やっぱり三浦さんは、男(の子)が主人公の小説の方が、少なくとも私にはずっと魅力的に思えます。
正直、主人公の青年二人の絡みがちょっと三浦さんの趣味にはしりすぎていると感じられるところもありました。太一がすぐに真志喜に触りたがるとことか。・・・髪に、ではありますが。
この二人の関係のビミョーな具合を表す一要素なのかも知れないんですけど・・・触るというとちょっと、ウルサイ感じがする・・・私は。

真志喜のキャラが、なんかどっかで会った人みたいな気がする、と、読みながらしばらく考えていました。で、思い当たったのが、桜井京介だ。篠田真由美さんの建築探偵です。
似てる似てる。建築探偵ほど少女マンガ的美貌ではないけど、色素の薄い容貌とか、相棒に対する一見素っ気ない態度とか、でもその実精神的にかなり依存してるんですってとこや、その他にも。

舞台は古本業界。
冒頭の古書店・無窮堂の描写が、何となく京極さんの京極堂を想起させます。といっても、京極堂の方がどんな描写になっていたか見直しているわけじゃなくて、確か眩暈坂みたいな名前の坂を上がったところにある、というぐらいにしか覚えてはいないので、実は全然違うかも知れないんですけど。
・・・なので、脳内映像的には、映画「姑獲鳥の夏」でちらりと見た京極堂の店内のイメージです。
無窮堂という名称は、黄塵無窮という四字熟語からとった、と、先日読んだエッセイ「悶絶スパイラル」にありました。

最初のうちは、物語が現代の話なのか、昭和40年代ぐらいのことなのか、よくわかんなかったです。どうやら現代の話らしいんだけど――あれ、でもそういえば、現代を象徴するもののひとつ、ネットやらケータイやらは出てこなかったんじゃない?
もしかして、昭和後期ぐらいなのかしら。

といっても、エッセイで拝見する限り、三浦さんは体調不良の時にも、それをおして書店まで足を運ぶタイプの方だからなぁ。買う本が決まってるんだからネットで買えばいいのに、と思うんですが、それがそうじゃないところが、モノとしての本をおそらく深く愛しておられる三浦さんのポリシーあるいは趣味がうかがえます。(でも、そのエッセイが発表されるのはウェブマガジンなのではありますが。)

男二人主人公というと、これまたつい最近読んだ「東雲の途」の弥勒シリーズもそうです。設定はかなり違うとはいえ、こちらも何とも言えない人間関係でした。
建築探偵の京介と深春といい、こゆ感じの男同士の関係っていうのは、女性作家ならでは・・・?
男性作家でも、耽美的な作品の人ならあり得ますかね。わからないけど。
二人のうちの少なくともどちらかがそれなりの美形でないと成り立たない(たぶん)てあたり・・・。

三浦さんて、作家一本になる前は、古本屋さんで働いておられたそうですね。この「月魚」が出た時もおそらくまだそうだったのかと。その時の経験を活用されて出来た小説なのでしょう。

古書店というのは、本が好きな人間にとっては何とも言えぬ不思議な空間だと思います。誰が触ったかわからない古本なんてきたない、という思いは私も多少あるんですが(図書館の本はガマンしてるの)、本を買うかどうかは別として、あの空間ですね。
ブックオフじゃなくてですね、神田とか早稲田にある古本屋さんのハナシですが。

私の場合、ブックオフ以外の古書店に行かなくなってかなり経ちますが、少なくとも思い出の中の古書店街はもうそれこそ、現世に開いた魔界の入り口、みたいな感じです。
私が古書店に通っていた頃(←もちろん大昔だ!)は、ひとたび絶版になった本は、そう簡単に復刊しませんでしたからね。いつも頭の中に、探す本のリストみたいなのがあったし。それを古書店店頭の「3冊100円」ワゴンの中に見つけた時などは――1度ぐらいしかないけど――、まさに歓声ものでした。

いかんいかん。こんな話をし始めたらエンドレスだわ。

ちょっと「トーマの心臓」みたいな世界でした。

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三浦しをん「月魚」

角川文庫2004年5月 初版発行2011年10月 20版発行解説・あさのあつこ226頁 「水底の魚」古書店「無窮堂」の三代目当主・真志喜友人で店舗は持たず古書の卸専門で生計をたてている瀬名垣古書の見極めに必要な優れた才能と直感を持つ二人の出会いと、その才能が故に起きた...
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