本と旅とそれから 私の男/桜庭一樹

本と旅とそれから

私の男/桜庭一樹

「贋作里見八犬伝」が、伝奇小説というかとにかく荒唐無稽なフィクションだったので、桜庭一樹という作家さんについて特に印象が定まらぬまま手に取った本書は、桜庭さんの直木賞受賞作。

しかしまあ、これ、「むむむ」というか「どひゃー」というか「やれやれ」というか。
読み終えてからAmazonのレビューを幾つか眺めてみましたが、嫌悪感を抱いた人が多かったようで、安心しました^^;。
「私の男」

私の男/桜庭一樹(文藝春秋)

ある小説を読んでどんな感想を持つかなどということは人それぞれですから、ほかの人のレビューに興味はあってもふだんは特に気にしないのですが、今回は違いました。「私の男」みたいな話を読んで、ほかの人はどんな感想を持つんだろう。もしかして「愛にカタチは関係ない」とか「恋愛こそ至上だ」みたいなことを書いている人が大半だったらどーする、と思ったのでしたが。


嫌悪感、というのが多くの人の抱いた感覚ということで、正直ホッとしました。
自分が多数に所属していることを確認して安心する、というのはいかにも俗っぽいというか、こっ恥ずかしいような思いですが、今回はもういいです、気にしない。

読み終えて即焼却、なんて書いておられるかたもあったけど、その気持ちもわかります。
血のつながった実の父娘のディープな恋愛模様なんて、二度読みたいようなハナシですか?
その関係を守るために、娘は人を殺し、その娘をかばうために父はまた別の人を殺す。そして、ビニール詰めにしたその死体が押し入れに隠されたままの部屋で生活を続ける父娘。

この父娘は、それぞれ生まれつき何かが欠如あるいは狂っているとしか思えない。主な問題は父親・淳悟の方ですね。娘・花の方は、淳悟との異常な生活を始めた時点でわずか9歳ですから。淳悟の性格(というのかなぁ、恋愛観?女性観?)形成には、環境的な要素も影響しているのでしょうが、だからってああした行為に及ぶ人間になるっていうのは、持って生まれたものがなければ・・・。

物語の中では無様な人間のごとく描かれている小町の感覚が私には至極まっとうに思えました。
淳悟の(元)恋人の彼女は、最初から娘・花に反感を覚える。花を手元に置くようになってからの淳悟が何かおかしいことも察知する。花が震災孤児(奥尻島地震の時の)なので、優しくしてあげなければと思うけれど、どうしても嫌悪感がつのってしまう・・・。

小町はあまり大したことのない登場人物で感情移入もできませんが、でも、その太って無様な姿の彼女の感覚が――何というか、ごく普通というか。ここで「正しい」と言ってしまうと、恋愛に「正しい」とかそうでないとか言うのは無粋モノのすることだよと笑われそうです。まあ笑われてもいいけれど。
これが不倫といったようなことならば、恋愛を人間の作った制度で縛ることの是非を語る余地も大いにあると思うのですが、近親相姦というのは次元が違うでしょう。

主人公父娘の苗字は「腐野」といいます。読みは「くさりの」。
なんというひどい名前を考え出したんだ、とそれだけで苦笑いでしたが、きっとこの名前は象徴的なものなのでしょう。娘・花は、もともと竹中という家の娘なのですが、震災でその家族をすべて失い、秘密だけれど実は血のつながった男・淳悟に引き取られ父娘となります。

竹中花から腐野花へ。
清々しい竹林に咲いていた花が腐った野原へと移る、その名前の変化に合わせるように、彼女自身も淳悟の元で腐臭を放つ存在となっていくのです。

しかしホントにまあ、なんでこの小説で直木賞なんですか。やれやれ。


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tag: 桜庭一樹 直木賞 
  1. 2012/04/10(火) 22:00:00|
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