本と旅とそれから 舟を編む/三浦しをん

本と旅とそれから

舟を編む/三浦しをん

すばらしい。
今年の本屋大賞に輝いたという三浦しをんさんの作品――受賞もふかぁ~く頷ける、見事な1冊です!
ラストはもちろん、そここで喉元にこみあげる感動をおぼえながら読み終えました。

いや~ほんっと・・・古風とさえ形容できそうな、「言葉」への深く強い愛情に満ちた物語です。
「舟を編む」

舟を編む/三浦しをん(光文社)

とある出版社(岩波書店がモデルでしょうね)の辞書編集部に新しく加わった編集者・馬締(まじめ)さんを中心に、彼と共に、言葉という大海を渡る船を編纂すべく力を尽くす人々の物語です。
やっぱり三浦さんは、この物語のような「ひとつの目標に向かって力を合わせ全力を尽くす人々」を描かせたら素晴らしいと思います。
「風が強く吹いている」や「仏果を得ず」も、すごくよかったもの~。


おそらくは、三浦さんご自身の「言葉」への深い思いが込められた物語でもあるだろうなと思います。
文筆業は、辞書を編纂する人とは違った方法ではあっても、同じく言葉を扱う仕事ですから。

あらためて考えれば確かに、言葉というものを強く愛していなければ、辞書など作れるわけはありませんね。しかも、いわゆる「大辞典」クラスの大きなものであれば、ものすごくページ多いし。しかも、どのページにもびっしり細かい字が詰め込まれているし。
あれをどんなふうに作っているかなんて、ほとんど考えたことなかったけど――。

どこか変人的要素を持つ人でなきゃ、できないことかも知れません^^;。

つい先日読んだ、三浦さんのごく初期の作品「月魚」は、「本」という物理的なモノへの愛情が描かれた物語でしたが、本書はさらに文化の深い部分を支える「言葉」への思いが込められた物語。
具体的な作業は、日々ちまちまと言葉を集め、その言葉の定義(語釈、というそうな)について追及するというものですが、その積み重ねによって編み上げられていくのは、まさに、ひとつの民族をそうあらしめている文化の根幹たるものの姿なんですねぇ。

その意味では、主題的に「天地明察」と非常に近いものがあります。
「天地明察」で主人公が取り組むのは「暦」。これは、民族よりもさらに大きな、人類すべてにその寄って立つところを与えるものです。正確な暦を作り上げるために、主人公は星を見上げ、頭の中を数字でいっぱいにしていくのです。

ひとつ違うのは、「天地明察」の主人公は、基本的にひとりで頑張るんですね。
しかし、「舟を編む」の馬締さんは、チームのキャプテン。彼の周りには、彼と同じくらい、いえ、人によったら彼以上に、言葉を愛し、辞書の編纂に心を燃やす仲間がいる。その辺の感動は、まさに箱根駅伝を目指して黙々とトレーニングに明け暮れる「風が強く~」と共通です。

私はでも、運動はからっきしですが、辞書については、やはり仕事道具だし(国語辞典よりむしろ英和とか英英辞典ですけど)、愛着もあります。だから、駅伝チームの奮闘を読む時は、手放しに「すごい!がんばれ!」って感じですが、辞書編集室の人々の日々を読む時は、「ここまで言葉にすべてを捧げる人がいるんだなぁ~」と、称賛と共に少しだけ口惜しいような思いも覚えるのでした。

そういえば、物語にも出てくる「新明解国語辞典」(三省堂)は、私も持ってるんです。
独特の語釈が面白いと有名な、と作中で紹介されてますが、私もまさに会社の先輩にそう紹介され、ホントに面白かったから買っちゃいました(私の持っているのは、作中に出てくるのより一版古いものですが)。最近は開いてなかったけど、久々に読んだな~^^。

しかし、いいなぁ、馬締さん。私も彼みたいな人間になりたいものじゃ。
ちょっとウマくできすぎてるキャラって気もするくらいです。外見は全然ぱっとしておらず、社交も苦手なんだけど、すべてを捨てて熱中できること(=辞書の編纂)があり、それを仕事にしていて、そんな彼の良さをわかってくれる奥さんや同僚がいて――。こりゃ理想ですよね~(外見の点はおくとして)。

それにしても三浦しをんさん、ますます惚れ込んでしまうわー。
きっと彼女の小説は、私にとって一生の楽しみであり続けてくれることでしょう(←本書に感動のあまり、表現が多少大げさになっている、との自覚アリ)。


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  1. 2012/05/09(水) 22:00:02|
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