本と旅とそれから 私が語りはじめた彼は/三浦しをん

本と旅とそれから

私が語りはじめた彼は/三浦しをん

1冊の本を読むのに、タイミングという要素は大きいと思うのですね。
たとえば、励ましを求めている時に、その励ましを与えてくれる本にうまいこと巡りあえれば、その本からもらう感動は倍増することでしょう。

・・・逆に、ですね。
今回私が本書に巡り合ったタイミングは――うぅむ、あまりよろしくなかったように思うのでした。
「私が語りはじめた彼は」

私が語りはじめた彼は/三浦しをん(新潮文庫)

デビュー後、4冊目か5冊目の、三浦さんかなり初期の作品に当たる1冊です。

おそらく、多くの人が「上手い」、「巧みだ」と称賛する小説なのだろうな、と頭では思うのですが、私はどうもこうした物語は苦手です。
小説だけじゃなくて、映画なんかでもそう。
つまり私って、単純で子供っぽいんだろうなと思うんですが。


とある大学教授が不倫をしたらしい、そのことを告発する匿名の手紙があちこちに送られてくる、というところから始まる、連作中編集です。
当の大学教授本人はほとんど物語には登場せず、彼の部下やら娘&息子やら、義理の娘やら、その周辺の人々について描かれていくのですが――ああ、人の心というのは、かくも複雑微妙でとらえどころがないものか。

自分でもよくわからないことってよくあるし、今日はこうだと思うことが、明日にはまったく反対に思えたりすることも度々。まして、他人が何を考えているかなんて。わかったように思う時もあるにはあるけど、同時に「人の心の動きなんて、わかろうと思う方が無理」とも思うし。ああ。

今回、この本の最後の1/3ぐらいを読んだ時、私は気分的に少々凹んでいたのでした(てか、これを書いている現時点でもその状況にありますが)。
その凹み方が、何というか、不愉快な話を聞いて気持ちが悪くなっている、という具合なのです。
ですから、求めていたものは、爽快感。読んで心が晴れるような物語。

残念ながら少なくとも私は、この本を読んで心はさらにどんよりしましたです。

この大学教授もさることながら、その不倫相手の女性がたまりません。
粘着質というか。
いやでも、この女性は特にそうした人物に描かれているのですが、彼女以外の登場人物たちも、まったく理解できないような、一方で「こんな気持ちってあるかもね」と、うっすら共感できるような、そんな人々です。

人の気持ちって、そうそうサッパリ割り切れるものじゃないですからね。
もやもやとしたものを内に抱えつつ、どうしようもないまま日々を過ごしていかなければならない、それが日常ってものなのでしょうけれど。

常に朝ドラみたいに心温まる結末がつく、なんていうのは現実離れしているってことなのでしょうけれど。でも、私はそんな現実離れした、「実はそんなのおとぎ話」みたいな物語が好きなんですよ。
お子チャマ心理なんでしょうかね~^^;。

三浦さんの作品には、こうした、結末らしい結末のつかない物語っていうのが結構多くて、その微妙さが高い評価を得ているらしいこともわかっていますが、私の好きな三浦作品のカテゴリーは、大人の童話と呼べるような、ステキに爽やかな作品群なのです(あと、ガハハのエッセイ群も)。

それでも、三浦作品は全部読みたいのでした。いっぱいある・・・。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 三浦しをん 
  1. 2012/05/27(日) 22:00:00|
  2. 2012
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1449-9bab30a5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する