本と旅とそれから オリンピックの身代金/奥田英朗

本と旅とそれから

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tag: 
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

オリンピックの身代金/奥田英朗

面白かったです♪
なんかこう、小説を読むことの醍醐味みたいなものを感じられたというか。
ストーリーにぐいぐい引っ張られ、また、手の届くぐらいの近未来ならぬ近過去の情景描写に、すごくノスタルジーをかき立てられました。
「オリンピックの身代金・上」「オリンピックの身代金・下」

オリンピックの身代金/奥田英朗
(上)(下)(角川文庫)


先日、姿のよく似た若者(女性)二人を前に、「ザ・ピーナッツみたい」と言ったところ、たまたまPCの前に座っていた方が、無言のままググり始めたもので、「あらためて、アタシってオババ」と実感したものでした(その1週間ほど後に伊藤エミさんが亡くなり、ザ・ピーナッツの映像がずいぶんTVに流れましたが)。


東京オリンピックというと、私の身の回りの人間の半数は「生まれる前の話です」と言うようになりました。やれやれ。
アタクシ自身は「東京オリンピックの年の生まれです」と言います。やれやれ。

そういえば、この物語の中にも、戦後生まれという「若者」が登場し、それを言うと職場の同僚に「やれやれ」的な顔をされる、というくだりがありました。
人間は、あるいは日本人は、いつの時代にもそのテの反応を示すものなのかも知れません^^;。

自分自身の、ものすごーく初期の記憶を懸命に探ってみるに・・・。
えーっとね~。
うん、私は、道端に座ってお金を乞うていた傷痍軍人さんの姿を、おぼろげながら覚えています。あれは上野駅の近くだったのかしら?

あとは、有楽町の、マリオンになる前の日劇のたてものとか。神保町の三省堂本店の古いたてものとか。でもあれは、少なくとも中学生にはなっていた頃だから、大して「初期」でもないわね・・・。

物語に描かれる、昭和39年の東京。実物を覚えていないまでも、その様子はとても懐かしい。
当時東京に暮らしていた人って、みんなあんなにカレーライス食べてたんですか(≧∇≦)。
そして、みんなあんなに東京オリンピックに熱狂していたのか。

そういえば、何事につけ批判的な石原慎太郎や三島由紀夫が、オリンピックの開会式については、好意的な感想を新聞に寄せていた、というくだりがありました。

石原都知事。忘れられないのでしょうねえ、当時の輝かしい東京の姿が。空気が。
見事な編隊で飛んで来て、抜けるような青空に五輪マークを描いて行った航空自衛隊のジェット機。
それを見た日本人誰もが、日本は戦後の荒廃からとうとう立ち直ったと誇らしく実感する・・・。

長野五輪がそうでしたが、オリンピックって、始まってしまえばみんなそれなりに応援するんでしょうね。
でも、招致の段階でどれだけ熱心になれるかは、やっぱり時代と上手く合致してないとだめなのでは。
オリンピックを成功させるためなら命をかけてもいい!ぐらいに思う人が、当時の日本にはずいぶんたくさんいたようです。

その一方で、繁栄する東京を同じ国のこととは思えなかった人々も、日本には多かった。

オリンピックの身代金を要求したのは、秋田の小さな村出身の大学院生。
彼自身は、頭脳明晰のために東大生となり、ある意味特権階級的地位を手に入れたものの、故郷の村は貧しく、家族の生活は苦しい。東京に出稼ぎに来ていた兄が工事現場で亡くなったことから、彼は次第に、東京の豊かさや、それを象徴するかのようなオリンピックに冷たい目を向けるようになるのです。

この大学院生が嫌なヤツだったら嫌いになっちゃうかも知れないんですが、謙虚で優しくて真面目で、誰にでも好かれるタイプなんですよねー。しかも、俳優になれそうなルックスだし~。
せっかく東大の大学院にまで進んだのになぁ。あのままふつうに出世して、ふつうに社会の役に立つ人物になってもらいたかった。
なんかこう、姉のような気持ちで彼を見ておりました。

それが、しだいに麻薬を多用するようになってしまうことと、人を傷つけることを自分に納得させてしまうことが、何とも悲しかったです。

どんな社会でも、格差を完全に無くすことはできません・・・よね。
その格差をどのくらい納得して受け入れられるかは、受け入れる側の見識や経験の程度によって違うし、性格みたいなものによっても違うんでしょう。
社会の若さみたいなものにもきっと左右されると思います。

今だって福島は原発事故のせいで、ひどい状況に置かれている。
石原都知事は、震災から復興した日本を世界にアピールするためにも、東京でオリンピックを開催したいと言っておられるようですが。
・・・うーむ。何となく、つながりが薄いように思えますが。

日本でやんなくてもいいって気がするかなぁ。
国民を元気づけるのは、開催することより、活躍することのような。開催してみたら活躍もしましたっていうのが、結果的には一番かも知れませんが、それはかなりバクチでしょうし。

48年前の東京オリンピックと、数年後にあるかも知れない東京オリンピックが、どうしても二重映しのように脳裏に浮かんだのでした。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 奥田英朗 
  1. 2012/06/30(土) 22:00:02|
  2. 2012
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1471-0cc7a360
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。