本と旅とそれから 救命 東日本大震災、医師たちの奮闘/海堂尊(監修)

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救命 東日本大震災、医師たちの奮闘/海堂尊(監修)

本書は、海堂さんの小説とはまったく関係のないノンフィクションの1冊です。
しかも、海堂さんが書いておられるのは最後の、いわば「あとがき」的部分のみ。あとは、ライターさんたち(プロフィールを見るに、本職はスポーツライターみたいですが・・・)がまとめた、ドクターたちのインタビューです。

「物語」、というかフィクションではないので、正直なところ、読み終えるのに少し時間がかかりました。いろいろな意味で、中身が濃いんですよね・・・。
「救命」

救命 東日本大震災、医師たちの奮闘/海堂尊(監修)(新潮社)

収録されているのは、様々な形で大震災に関わり、奮闘した9人のドクターたちのインタビュー。
インタビューといっても、ライターさんの手によって、ドクターたちが一人称で淡々と語り進める形にまとめられています。
もともと被災地で診療していて自身も被災者の立場となったドクターもいれば、被災地と何らかのつながりを持っていたため、震災直後に被災地入りしたドクターもいます。


読んでいて、あれこれと断片的な感想が次々頭に浮かんだのですが・・・なんかうまくひとつにまとまらないのです。海堂さんのように、迷いなく医師、医療の善であることを信じ、彼らの存在と行動をすべてに優先させるべきだと主張できる人と違い、私はついつい身の回りの雑音に注意をそがれてしまって。

雑音、といいますか、つまり、医師や病院への不信とか、まあそんなことですけど・・・。

人々の命を守る、ということでは、たとえば警察なんかも類似の仕事じゃないかと思うのですが、警察は常に厳しい批判の目にさらされていますよね。フィクションの世界でも、警官の不正とか、本来の仕事よりも組織防衛に走る上層部の姿なんかがしょっちゅう描かれているし。

警察官だって医師だって、同じ人間なんだし。
いやつまり、医師だって、まるですべてが善人だと断定してかかる姿勢にはちょっと同感できません。

が、言うまでもありませんが、他者のために、あらゆる救える命を救うべく渾身の努力を捧げた本書に登場するドクターたちにケチをつけるつもりは毛頭ありません。
特に、津波のために自身も家族を失いながら、それでも働き続けた被災地のお医者さまの話には、胸をしめつけられる思いでした。

9人のひとり、犠牲者の検死に当たった歯科医師の話。
これまでも警察医として検死をしたことはあったけど、それは数年で数件という程度。それが、震災では、ふと目を上げればずらりと死体が並んでいる。
その心理的な重荷はいかばかりでしょうか。

そのドクターはそんな状況にあってなお、小学校(犠牲者のほとんどが子供)での犠牲者検死に当たったドクターたちはどんなにつらかっただろうかと他者を思いやる。

心療内科のドクターは、次々と訪れる患者さんたちと共に、脱水症状に陥りかけるまで涙を流し続けたと語っていました。
そして、精神科の医師だからといって、自分自身が心の痛みを感じないわけではないのだ、と、言ってみれば当たり前のことを苦しげに口にするのでした(文字だけど、そんなふうに読めました)。

海堂さんの文章の中の、「病気はまさに個人的被災だ」という言葉、そういわれれば本当にそうだと思いました。だから、その救済に日々携わっている医師こそ、震災のような大事態にも対応できるのだ、と。

海堂さんは、まあ常の調子で、行政批判へと続けていくのですが――で、頷ける部分も多いんですが。
本書は、昨年8月末の刊行で、ドクターたちは震災からひと月ほどの時点で語っておられるようです。
大規模災害の場合、被災者の苦しみは、時間が経つほどに、ドクターの手の及ばない分野に入っていくのではないかと思います。幸運にも失わずにすんだ、あるいはドクターたちの助けがあって救われた命を自ら捨ててしまう人も多く出てくるとか。

ドクターたちの献身に感謝を捧げると同時に、人間は「社会的な」動物なのだという思いをあらためて強くしました。


webcitron01.gif


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  1. 2012/06/30(土) 22:00:01|
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