本と旅とそれから 麦の海に沈む果実/恩田陸

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麦の海に沈む果実/恩田陸

釧路湿原の真ん中にモン・サン・ミッシェルがあり、島(というか、丘)全体が全寮制の学校です。
固有名詞を排除すれば、まさにそういった設定の舞台。
――すごく少女マンガ風の物語でした。
「麦の海に沈む果実」

麦の海に沈む果実/恩田陸(講談社文庫)

何枚も挿入されている北見隆さんの扉絵が素敵です。私は文庫版で読んだので、表紙以外は残念ながらすべてモノクロだったのですが、単行本だったらあれはカラーだったのかしら。物語の非現実的で陰があり、それでいてどこか魔的に華やかな雰囲気をとても盛り上げていました。

なんかこう、雰囲気は萩尾望都さんの「小鳥の巣」みたいな。


舞台設定や登場人物たちのキャラクターなど、どれも耽美的な少女マンガふう。
名前からして、理瀬とか憂理とか聖とか黎二とか、ちょっとこそばゆくなるようなのばかり。学校の校長(この人は名前が出ず、最初から最後まで「校長」なのです)は、時に男装、時に女装、そのどちらもが美しくさまになるという謎の人物。

この学校に唐突にひとり転入してきた主人公・理瀬が遭遇する、謎に満ちた学園の日々・・・。
ちょっと篠田真由美さんの建築探偵みたいな雰囲気もあるかしら。退廃的っていうか。
外観がモン・サン・ミッシェルそのものという学校は、中に入っても、古い遺跡や隠れた通路、打ち捨てられた温室や薔薇の庭園などなど、これでもかというぐらいドラマチックな小道具に満ちています。

生徒たちの間に伝わる伝説。消えた少年・少女。彼らは本当に「家に帰った」のか。それとも・・・?
そして新たに起きる殺人事件。うひゃ。

なんかあまりにも少女マンガ、気取りすぎてるでしょー!
・・・と、嫌うむきももしかしたらあるかも知れません。アホくさい、と思ってしまったらそれまでという感じもするのです。
が、私はかなりハマりました。
その、いかにも作り物めいた舞台設定や人物設定が楽しく思えました。
ファンタジーなんですよね、結局は。「幻想郵便局」などと比べたら、開き直るようにしてどっぷり作り物の世界が展開しているところが、「そゆことならこちらもどっぷり読ませてもらいます」って感じで、入り込みやすかったように思います。

それで、きっと最後には主人公が何か「変わる」な、という予感が常にありました。
そうでなければこの物語が終わらないだろう、という。

これまた萩尾望都さんの「ポーの一族」シリーズにもあったなー。
主人公でバンパイヤのエドガーが、ふとしたことで一時的に記憶を失い、自分がバンパイヤであることを忘れて過ごす数日間のお話が。彼は最後に記憶を取り戻し、仲間と共に去って行くのだったと思いますが。
一体その数日間の記憶は、彼にとってどんなものだったのか。すぐに忘れ去られてしまう、何ほどの価値もないものだったのか、それとも、短くとも彼の心にいつまでも残るものなのか。

読み手はもちろん、後者であることを願うわけですが。

寒い季節に読むのが、何となくぴったりくるように思える物語でした。


webcitron01.gif


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  1. 2013/02/20(水) 22:00:02|
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