本と旅とそれから 松風の家/宮尾登美子

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松風の家/宮尾登美子

素晴らしい・・・。いつもながらの宮尾作品といえばそれだけなのですが、いつにも増して面白く、興味深く思えたのは、どっぷり京都だったからか――といえば、例えばこないだ読んだ「錦」だって京都でしたからね。やっぱり茶道の話だったからでしょうか・・・。

「松風の家(上)」「松風の家(下)」

松風の家(上)(下)/宮尾登美子
(文春文庫)


奥付に「まつかぜのいえ」とふり仮名があるので、書名としてはそう読みます。でも、茶道の世界では、松風を「しょうふう」と読んで、茶釜が沸く音を指す、と聞いたことがあります。
本書は、茶道・裏千家をモデルにした明治、大正期の物語です。


薄暗い日本家屋の奥で、地味な着物をまとい、ほとんど物音もたてずにするすると動く人々のいる情景が浮かんできそうです。物語世界にぐいぃ~~っと引き込まれます。

裏千家といわず、後伴家(うしろのばんけ)としてあるので、あとがきで阿川弘之さんが書いておられるように、やはりこの物語は「楽しく美しい一篇の小説として鑑賞するのが読む者の作法であり礼儀」なのでしょう。
でも、裏千家がかつてものすごく困窮した時期があるというのは、以前から聞いたことがありました。

物語では、すごいです。まさにその日の米にも困る暮らし。由緒ある家柄なので、かつては蔵にいっぱい名だたる名器・名品を持っていたのが、明治維新で茶道が衰退するに従い、ひとつまたひとつとそうした道具を売り払い、明治末期には、葬儀や襲名といったイベントを催そうとしたら、まさに壁画や襖画を引きはがして売ってその費用を工面する生活だったとか。まあそうは言っても、それで売るのが狩野探幽だったりするんですが。

ただ、どこからどこまでが史実で、どこが虚構なのか、わからないのがちょっともどかしい気もします。特に、人物描写。十二代家元・恭又斎(きょうゆうさい)とその妻・猶子(ゆうこ)、そして恭又斎と愛人の娘・由良子。すごい人たちです――すごい人に描かれています。
こうした家に生まれた人間というのは、もう個人であって個人でないという存在なのでしょうね。千家に限らず、歌舞伎の家の人たちなども、よくインタビューでそんな趣旨の話をされていますもんね。

自分が実は猶子の子ではなく、妙寿庵の大黒・いよと恭又斎の間の娘だということ、それを由良子は大人たちの話をふと耳にしたことで知ります。猶子はそのことを決して口にせず、由良子も尋ねない。でも、彼女は生みの母への強い思いを何年もじっと心に秘めていく。

由良子の生まれのことだけでなく、家の中にはあちこちに秘密がある。誰もが、表の話が真実ではないと知りつつ、あるいは疑いつつ、それを口に出すことなく日をおくってゆく。
すべてを語らない。見ぬふり、気づかぬふり、騙されたふり。
ふっふっふ、いかにも、腹の底で何を考えているかわからぬと言われる京都人の世界ですのぅ。

京都人についてそれを悪口のネタにすると、弁護する人は、それは京都人の優しさから出る行為だと言います。本書もその路線。なるほどねー。複雑なリクツですが、こうして丁寧に語られると、そんなものかも、と思えます。

しかし、千利休だとか聚光院だとか、本名で出て来る固有名詞があるかと思うと、びみょーに変えてある名前が多くて、検定勉強的には、この違う名前を覚えてしまったらエラいこっちゃ、です。まあ、そう思って参考書を見直したりしたので、勉強になったともいえますが。

それにしても、物語では妙寿庵という名で出てくるお寺、明らかに妙喜庵ですが、なんと、あそこと裏千家の間にあのような係わりがあったとは――て、いかんいかん、こんなゴシップ根性は^^;。


webcitron01.gif


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  1. 2013/05/21(火) 22:00:00|
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