本と旅とそれから 吉原手引草/松井今朝子

本と旅とそれから

吉原手引草/松井今朝子

えーっと・・・検定の勉強で京都の花街のところをやっているとき、図書館の本棚で見つけたので手に取った本書でしたが、言うまでもなく、吉原は京都じゃーござんせん。お江戸でありんす。

でも、あら、第137回直木賞受賞作。
初めての作家さんでもあります。直木賞よりむしろそちらが意味あることですね(ワタシ的には)。
「吉原手引草」

吉原手引草/松井今朝子(幻冬舎文庫)

ふぅ~む。廓言葉というものは・・・なるほど、日本全国からやってきて女郎となる女たちの、言葉の訛りから生国が知れることを嫌ってできたんですか。なるほど。
それにしても、映画その他で舞台となる廓というと、あれはみんな吉原ですか。「さゆり」でしたっけ、あれは京都の花街が舞台でしたが、あの話には、よく映画で見かける、女郎が廓から逃げようとして捕まって折檻されてといった凄い話はなかったような。


直木賞の選考では、委員の方々に絶賛されて受賞に至ったという本書。独特の雰囲気を持つ小説でした。タイトルが示すように、吉原という江戸で最大の遊廓について、「へぇ~、吉原っちゃそゆシステムになっとるのですかー」と教えてくれる側面あり。一方で、「ん?ん?これって何かの『事件』について謎解きをしようとしてるんですか?」というようでもあり。さらに終盤にかけては、何となぁ~く、しんみりだかホロリだかさせられるようでも・・・あり。

素性不明の「聞き手」が、吉原の大見世のひとつ舞鶴屋やそこの引手茶屋・桔梗屋(えっとですね、舞鶴屋で遊びたかったら、ダイレクトに舞鶴屋に行ったらダメで、まずは桔梗屋に行って仲介してもらう、ということらしいのですね)その他に関わる人々にインタビューして回り、その内容を書き起こしたものが並ぶという進行形式になっています。これがまずちょっと珍しい。

私が読んだのは文庫版なのですが、文庫版には背表紙に物語の紹介がちょこっと載っているもの。
本書の場合も、ここに、葛城という花魁の失踪事件の謎を追う話だ、と書かれていたのですね。文庫本を読む前に、大抵の人はこの裏表紙に書いてあること読みますよね。で、私もこれを読みました。
なので、「葛城花魁は失踪する」ということを最初から知って読んだわけですが、単行本にはこうした紹介文はありませんから、単行本で読んだ人は、まったく予備知識なしに物語世界に入っていったのでしょう。――なんか、その方が面白い読書体験ができたんじゃないかという気がする!

失踪の件をあらかじめ知らされていてさえ、詳細はまったく不明でしたから、最初のうちはただもう手探りという感じで、正直に言えば、ちょっとイラっとくる感覚もなきにしもあらずでした。吉原のシステム解説(いろいろな役どころの人がインタビューされるので、彼らが自分の仕事などを語るという形で)はいいから、葛城花魁に何があったか、ちゃっちゃと教えてくんなまし!って感じです。

ひとりの人にインタビューすると、その話の中に誰かの話が出てくる。で、次はその誰かを訪ねて行ってインタビューするとその話にまた別の誰かが出てくるので次は・・・という具合に続いていきます。
本人は最後まで登場することはないけれど、話の中心人物であるところの葛城花魁を円の中心とするならば、そこから距離の遠い人からインタビューは始まり、やがて葛城花魁のすぐ近くにいた数人のところへと「聞き手」は迫っていきます。

最後の数人へのインタビューで、話は加速度的に核心に近づきます。
それまで何だかゆるゆるとのんびり進んでいた話が、最後に来てどどどどっと結末になだれ込む、です。

花魁その人のインタビューはないので(だって失踪しちゃうから)、最後まで距離感が残ります。登場人物の誰かに感情移入して読むという感じにはなりません。
で、私としては、直木賞選考委員の方々ほど絶賛したいという気にまではならなかったのですが、でも、この独特の雰囲気、物語の香りみたいなものは、とても素敵だと思いました。
葛城花魁の傑物ぶりに、あっぱれ!と拍手して、読了。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 松井今朝子 直木賞 
  1. 2013/06/09(日) 22:00:00|
  2. 2013
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1580-03bbc47b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する