本と旅とそれから 残り全部バケーション/伊坂幸太郎

本と旅とそれから

残り全部バケーション/伊坂幸太郎

登場人物が共通の、5つの中編から成る1冊。
それで、最初の1編を読み始めてすぐ、「あれ?」と思いました。読んだことあるような?

この本、すでに読んだことあるのかしら?といっても、本書の出版は昨年末。図書館の予約待ちをしてようやく回って来たのだから、昔読んだってことはあり得ないし~・・・と、自分のブログの過去記事をめくっていって見つけました。以前読んだ「Re-born はじまりの一歩」(感想文►コチラ)というアンソロジーに収録されていた伊坂さんの中編が、これでした。
「残り全部バケーション」

残り全部バケーション/伊坂幸太郎(集英社)

そしてそれを始まりに、時間的にそのちょっと前の話とずっと前の話と、その後の話とさらに後の話が収録されています。
「Re-born」で1編目を初めて読んだときの感想を読み返すと、「大したことはないわね、まあまあってとこかしら」って感じだったようです。

1編目に「岡田」なるチンピラが登場するのですが、その1編(表題作)「残り全部バケーション」の最後で、彼はギャングのボス・毒島さんの怒りをかってどこかへ連れ去られてしまいます。殺されてしまうんじゃないか、という感じがすごーくするラストなのです。
岡田がそう悪いヤツにも見えないだけに、「岡田、死ぬな、死なないでくれ!」と願うばかりで無力なワタシ、というやるせない読後感の残るお話だったわけです。

続く2編目は、1編目より時間的に過去の話。岡田は主役といってよいでしょう。
をを、岡田、どうやらこの1冊はキミが主役なのか?ということは、おそらくキミは死んではいないのだな?経緯はどうあれ、今(っていつなんだろう)も生きているのだな?そうなのだな?
・・・という期待がふくらみます。

ところが、次の1編に岡田は登場しません。岡田の相棒だった「溝口さん」は、岡田の後釜と一緒に仕事をしていて、あまつさえこの後釜、「岡田さんて毒島さんにたてついて消されたって人ですね」とか言う。
何?やはり岡田は殺されたのか?そうなのか?どっちなんだ?
・・・困惑。

といった具合に話は続き、最後の1編でとうとう岡田の生死が明らかに・・・?
てな1冊。

伊坂さんの本には、人殺しやら拷問やらといった恐ろしいことについて、ほとんどコメディじゃないかというあっけらかんとした調子で語られるシーンがちょくちょく出てきます。
面白がればよいのか、怖がればよいのか、はたまた「不謹慎な!」と怒るべきなのか、何だか消化不良のような気持ちにさせられます。

この何とも不思議な語り口が、現実的な事柄を語っていながら、非現実的な雰囲気に満ちた世界を作り上げているんですね。まあもちろん、ドロドロだったり真っ暗だったり、後ろ向きな感情に満ちた物語を読みたいとは思わないので、明るい犯罪というのも・・・まあ――・・・やっぱり複雑かな^^;。

敢えていえば、悪人らしく見える人が必ずしも芯まで真っ黒な悪人というわけではないんだな、ということが強く感じられて、こそっと希望が持てたりします。溝口さんも、どうしようもなくて、悪人っちゃ悪人かも知れないし、間違いなく犯罪者だけれど、なんかこう、ちょっと会ってみたくもなりますな。でも、現実の世界に溝口さんみたいな人って、たぶんいないだろうなという気もするのでした。

岡田よ、キミの出てくるまた別の1冊が読めるよう、願っておるぞよ。


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  1. 2013/07/08(月) 22:00:00|
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