本と旅とそれから 旅猫リポート/有川浩

本と旅とそれから

旅猫リポート/有川浩

長いこと順番待ちをし、あげく3冊いっぺんに回ってきた図書館の本。本書はその3冊目、読み順では最後の1冊でした。
貸出し延長不可の人気本ばかり3冊、2週間で読んで返さねばなりません――といっても小説ですし、2週間で3冊はそう大変でもなさそうなもの。
でも、文庫本と違って少々嵩張る単行本ばかりなので、持ち歩きたくない・・・などと、電車での読書タイムには別の本を読んでいたら、期限が近づいてきたため、後半は電車内で読むことになりました。

でも――電車の中で目をうるうるさせながら読むというのも、ちょっときまり悪いものです・・・。
「旅猫リポート」

旅猫リポート/有川浩(文藝春秋)

本を手に取り、「おや、村上勉さんの表紙だ♪」と、何だか嬉しかったです。しかも、ラスト近くにちょっとだけ、フキの葉の陰にコロボックルが、なんていうセリフがあるし。それにそういえば、この本の主人公はとある青年と彼の猫なのですが、その青年の名はサトルだ!

村上勉さんが挿絵を手掛けられた、私の愛してやまないFT「コロボックル物語」(►コチラの記事をご参照)。本書の物語と特に関係があるわけではないんですけどね。別の部分には、ハインラインの「夏への扉」のことがチラっと触れられていたりも――これも別に関係はないし、「夏への扉」という書名は出ていないのですが、好きな人ならすぐわかります。
なんなんでしょうね。有川さんがお好きなものをチョイと入れたのかしら。同じものが好きなのかなと思うと、これまた何だか嬉しい。

猫のナナ(という名ですが、オス)の一人称でのんびり始まる物語なので、その調子でずっといくのかな、ほんわかのほほん路線かな、と思って読んでいたのですが、予想はハズレました。
Amazonの紹介文には、「温かい光溢れるラスト」みたいな表現が使われていたと思いますが・・・そう、まあ、そうともいえます。

このラストシーンは、ジブリの「風立ちぬ(►感想文はコチラ)」と同じです、そういえば。
大切な思い出は、ひとつの世界を成す。そして人はその世界で、大切な人と再び巡り合う。
それは、時間も、諸行無常の理をも超越した宇宙であって、その宇宙の存在を信じる者は、哀しみから解放される――そんな感じ。

ただ、本書のユニークなのは、それが人と人の結びつきではなく、人と猫のそれだという点です。
ちょうど本書の前に読んだ伊坂さんの「ガソリン生活」ではさらにユニークな人とクルマの結びつきが描かれていたんだっけ。作風が違うので比べても無意味かも知れませんが、でも、やっぱりクルマより猫の方が血の通った感覚が強いですね――てか、クルマには通っていてもせいぜいオイルなんで・・・いや、だから、そもそも描こうとする世界の違う作品なんだから、比べることないんですが。

ナナは元野良猫で、その一人称の口ぶりは結構ナマイキ。でも、それが一層、彼がサトルに寄せる深く熱い愛情を際立たせます。おそらく、猫の性格も十人十色なのでしょうが、ナナはハートの熱い、何があっても相棒を裏切ることのない、勇敢な猫です。
そんなナナの人物像、じゃなかった猫像も、ラストに効いてくるんですよ。うるうると。

サトルを待ち受ける運命に気付いた後も、毅然とそれを受け止め、サトルの傍らに立ち続けるナナの姿は、猫であっても見事です。やっぱりこれは、ナナを人間にせず、猫にしたのがよいのですね。これが人間だと、人間の感情にとらわれてしまって湿っぽくなるのでしょうが、猫だとリアリティーが薄い分、良い意味で軽く語りきることができるのでしょう。
ナナのように生きていけたら――そんな存在に描かれているような気がする、猫でした。


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  1. 2013/09/07(土) 22:00:02|
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