本と旅とそれから ザ・万字固め/万城目学

本と旅とそれから

ザ・万字固め/万城目学

あ、万城目さんと三浦しをんさんって同い年なのですね。
同い年のどちらも売れっ子作家のエッセイ。どちらも楽しくて、読んでいて時に「ぶはっ!」と吹き出さずにはいられませんが、もちろん雰囲気というか、カラーというかに違いがあって、それがまた興味深いのですねえ^^。
「ザ・万字固め」

ザ・万字固め/万城目学(ミシマ社)

既刊エッセイと同様、基本路線は笑ってしまうエピソードのあれこれ。
・・・なのですが、この1冊の中で異色だったのが、「2011東京電力株主総会リポート」。そうそう、確かについ最近まで、電力株って安定株と言われていましたよねー。万城目さん、東電の株主だったんですって。そして、3.11と福島第一原発の事故があってその株価が急落したおかげで、ナント734万円の損失を被ったそうです。
どっひゃー!いくら売れっ子作家といっても、わずか数日の間にこれだけの資産を失くすというのは打撃ですね!


で、皮肉なことに、万城目さんが株を手放して損失が確定したその日が、東電の株主認定基準日だったため、すでに持ち株はすべて売り払っていたにもかかわらず万城目さんのもとに東電の株主総会開催通知が届き、彼は生まれて初めて、株主総会というものに出席することを思い立ちます。

で、この本のほかの章に溢れているのほほんと楽しい空気とはまったく違う、3.11直後の東電株主総会における憤懣や諦めや欺瞞や落胆などといった思いがごたまぜになった、重苦しくやりきれない空気に満ちた数時間の描写が展開します。

にしても万城目さん、700万円を超える大きな損失を被ったにしては、なんとまあ淡々と事態を見つめ、描写されていることでしょう。激怒して「恥を知れッ」と叫ぶ一部の株主たちを見て、あのような意見ほど会社側にとって扱いやすいものはない、と冷静に分析されています。
株を手放した時点で気持ちの整理をつけておられたから、ある意味楽だったのかも知れませんし、大金を失ったとはいえ、それで生活が破綻したわけでもないのが余裕だったのかも。

それに、こうしてバッチリリポートをものしておられるところが、さすが作家、(で、大阪出身、)転んでもただでは起きない、てとこでしょーか。

なるほどね~。あの年の東電の株主総会って、こんなふうだったんだ~・・・。
経済評論家とかジャーナリストとかでなく、ごくふつうの、「安定株だから」というありがちな理由で東電株を買っていたような個人投資家である万城目さんが、でも、文章の方はプロの的確さで、興味深いひとつの出来事をリポートされたこの一章は、読み応えがありました。

(ところで!本記事のここから終わりまでの部分、保存に失敗して一回全部消えました!よくあることなのでいつもは「保存」する前に一度コピーするんですが、今回はなぜかそのコピーもちゃんと出来ていなかった・・・。く、くやしい(T_T)。)

あとは気楽に楽しめました。
ただ、万城目さんのほかの小説を全部読んでいた方が、四角い楽しみを四角く楽しめます。
同じ論法で、「マキメマナブの関西考」の章は、大阪という場所に土地勘があった方が断然楽しいでしょう。私などは読んでいて、「ああ、ここは大阪人なら5割増しで楽しいに違いない」と口惜しかったです。

大阪市の地下鉄各線を、戦隊ヒーローにたとえた部分などは、面白いんだけれど、面白がりきれない。
戦隊リーダーの「レッド」が御堂筋線だ、というのはまあいいんです。が、その好物がぎんなんで、「秋はポケットに拾ったぎんなんを詰めこんで、まわりにくさいと言われるのが唯一の欠点」というあたりは、「たぶん御堂筋にはぎんなんが落ちるんだろうねぇ」と推測するしかないんですよね。行ったことないから。

万城目さんが台湾にサイン会に出かける話も面白かった。
日本と違う愉快なサイン会の模様も面白いし、そこでの現地の人たちとの会話から万城目さんが気付いたちょっとしたことも興味深い。
本物の若者の会話を書くためには、やはり書き手もある程度若くなくてはダメだ、というくだりにはなるほど、と頷かされましたし、さらに、それが日本語には当てはまっても、中国語ではそうならないという万城目さんの発見には、「へぇぇ!」と感心。ある意味、日本語の豊かさってものですねぇ。

ほかの部分も、あれこれ楽しゅうございます。興味深いし。
プロの文筆家のエッセイって、やっぱりいいわね~♪


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tag: 万城目学 
  1. 2013/11/27(水) 22:00:00|
  2. 2013
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  1. 2015/01/30(金) 14:08:54 |
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コメント

速読してもするりと内容が入ってくる、
喉越しの良い文章。
そして、目の付け所の良さにも感心しました。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
  1. 2015/01/30(金) 14:18:14 |
  2. URL |
  3. 藍色 #-
  4. [ 編集 ]

藍色さん、

いつもトラックバックありがとうございます。
楽しめる1冊でしたね。

私もTBさせて頂きました。
  1. 2015/02/01(日) 20:20:42 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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