本と旅とそれから 神様のカルテ1~3/夏川草介

本と旅とそれから

神様のカルテ1~3/夏川草介

特に読みたいと思う本があるわけでもないまま図書館の書棚の間をウロウロしていた時、目にとまったのが本書。そういえばこの本、ちょっと前に書店の店頭を賑わせていたような記憶が・・・というような理由で借りることにしたのは、やっぱり私がミーハーだからに違いない。

その自覚があるうえ、第1巻は少々軽い雰囲気で、医療をテーマにしてはいるものの、これはほとんどラノベじゃないの?なんて感じがしたため、「いい歳してこんなお手軽読書ばっかりしてよいのかっ?!」などと思ったりしたのですが^^;。
「神様のカルテ」

神様のカルテ1~3/夏川草介(小学館)

で、映画化もされていたんですね。
櫻井翔さんが主人公・栗原一止医師、その妻・榛名を宮崎あおいさんが演じ、来年には続編の公開も決まっているとか。
宮崎あおいさんはぴったり。というより、あて書きじゃないかと思うくらいです。私は、2巻目だけは文庫版で読んだのですが、そのあとがきを田中芳樹さんが書いておられ、この榛名のことを「降臨した天使のごとき女性」と書かれてました。ホント、そんな感じの女性です。爽やかで
可愛らしく、仕事(プロの写真家)に有能で主人公に尊敬の念を抱かせるほどでありながら家庭人としても最高の温かい存在であり続けるという、まさに天使でもなければあり得ないような人物。
櫻井クンについては・・・ちょっと童顔すぎるような気もしますが。

主人公は、夏目漱石をこよなく愛する青年医師。その漱石ラブの強さがゆえに、言葉遣いが少々奇妙で古風。ちなみに、その細君・榛名も、それと妙なつり合いを見せる「です・ます」喋りです。
で、この主人公は長野県松本市の本庄病院というところの消化器内科の勤務医で、日々の勤務に加え当直もあれば、家にいてもいつ何時緊急の呼び出しがかかるかわからない、という労働環境としては非常に過酷な状況下にあります。

そんな彼の、医師としての日々を描いたのがこのシリーズ。
3巻目は、あらためて自己の向上を思い立った主人公が、腕を磨いて帰って来ることを誓って大学病院へ向かうところで終わっています。
雰囲気としては、何だかそれで完結している感じですが・・・まだまだ続きを読みたい気のするお話です。

といっても、1巻目は、ラノベかしらと思うぐらいだったんですけど。
この主人公の、文語調のような妙な口調での一人称のナレーションで物語が展開するため、慣れないうちは少しふざけているような感覚があったせいかも知れません。

それに、1巻目は主人公の担当する高齢者の患者さんが亡くなる話がメインで、「人が死ぬ話で読者の涙を誘うのは安易な手法じゃない?」という、読み手の私の方にちょっとひねくれた姿勢があったともいえます。

作者の夏川さんはこの1巻目がデビュー作とのことで、ご自身が主人公と同じ長野県の病院勤務医なのですね。その点、海堂尊さんと境遇はよく似ておられます。
といっても、作品世界はまったく別のものですが。

滅私奉公という言葉がズバリ当てはまるような、1年360日働いているような、1日20時間「医者」しているような主人公・一止(いちと)の日々。しかも、その仕事は、ひとつのミスが人の命にかかわるような重大なもの。責任の重さも計り知れないものがあります。しかも、何ひとつミスせず、懸命に務めていてさえ、患者たちは彼の目の前で病や老いで亡くなってゆく。

私が常日頃疑問に思っていたことのひとつに、「お医者さんって、お酒飲んでいいんだろうか?」というのがあります。
担当する患者さんに緊急事態が起こったとき、お医者さんたちが病院から呼び出しを受けて駆け付ける、というのはあちこちの医療ドラマで見知っていたのですが、そんな時にお医者さんが酔っぱらっていた、なんて状況は許されるんだろうか、というのが疑問だったのです。

少なくとも本作では、主人公は酒好きです。彼は、「下宿」としか呼べない雰囲気の御嶽荘なるアパートのようなところに住んでいるのですが、その下宿仲間と秘蔵の酒を酌み交わすのを数少ない日々の楽しみのひとつとしています。近所には、気心の知れた店主が営む、実によい雰囲気の飲み屋もあります。そして、夜遅く、疲れ切って帰ってきても、すぐ寝るかと思えばそうせずに酒盛りを始めるのです。
で、延々飲んで、ろくに眠りもせず、朝になれば二日酔いでフラフラで病院に出かけていく、などという日もあるのでした。

でも、「医者がそんなことでよいのか!」と批判する気には全然なれません。

いや、ホント疑問ですよ。お医者さんって、どこまでしなければならないんでしょうね。
2巻目はまさにその問題がテーマとなっています。
3巻目は、今度は「医者はどこまで自己研鑽に励むべきか」というのがテーマ。勤務医は超多忙。となれば、なかなか勉強する時間はとれず、医療の進歩についていくことは難しくなりがちです。でも、それで自分の腕が鈍れば、その影響は患者が被ることになる。そうした、いかにも解決策を見出すことが難しい、しかし多くの医師が現実に直面しているであろう問題に、主人公も遭遇していきます。

1巻目を読み終えたときは、「感動はする。するけど、人が死ぬって話を次から次へと読むっていうのは、自分(つまりワタシ)の精神衛生上どんなもんなの?」って気がしたんですよね。
医師も懸命。患者ももちろん懸命。そして、患者の家族や、病院の同僚医師や看護師、医師の家族まで、皆が懸命で優しい人たちだというのに、やはり患者は亡くなる。だから一層その死が悲しい。読めばくくっと悲しい。でもなぁ・・・、と。

でも、2巻、3巻と続くうち、お話は段々と骨太になっていったと思います。3巻目の後半なんて、思いっきり主人公に感情移入しちゃって、一緒に落ち込んだりドキドキしました^^;。話は単に患者の死を描いて涙を誘うという単純なものではなく、登場人物それぞれの人物像とストーリーを少しずつ見せていきつつ、主人公のストーリーも展開しつつ、という伏線の複雑さも備えていきました。

それと――過酷な労働現場ではあるでしょうが、主人公はいいところに暮らしています。信州松本。自然と、歴史文化がどちらも豊かな地で、疲れたり、時に落ち込んだりする主人公を慰めてくれます。これが都会の話だったら、もう少し殺伐とした物語世界になるように思うのでした。

この作家さんも、お医者さんストーリーひと筋ということになるのかしら。
というか、海堂さんみたいに、(人数はどんどん増えるけど)登場人物もデビュー作からずっと一緒、ということになったりするんでしょうか。
読者としてはそれでも嬉しいような気もしますけどね。


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  1. 2013/12/12(木) 22:00:00|
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