本と旅とそれから シアター!1、2/有川浩

本と旅とそれから

シアター!1、2/有川浩

まず間違いなく、これが今年の本読み(つまり「BOOKS PLUS 2013」カテゴリの)記事の最後になると思います。年の最後に、楽しい本を読むことができて嬉しかった^^。
何となく、年末にふさわしい物語だったという気もするのです。

「自分の無力を思い知って死ね!借金できりきり舞いして夢も希望も枯れ果ててしまえ!」

(いきなりですが、気に入ったセリフをひとつ引用してみました。)
「シアター!」「シアター!2」
シアター!1、2/有川浩
(メディアワークス文庫)


最近の有川さんの新刊は、(少なくとも私がよく行く書店では)どれも派手な宣伝と共に店頭に並びます。さらに本書のように題名に「!」マークはつくわマンガみたいな表紙だわという本だと、私などは少々ひいてしまったりするのですが――。
やっぱり読みたいんですねぇ。図書館で見つけるや速攻で借りましたからねぇ。


書名を「1、2」と書いたけれど、正確には1巻目はただ「シアター!」です(「神様のカルテ」もそうでしたっけ)。2巻目のあとがきによれば、1巻目の評判がよくて初めて2巻目を出せることが決まるのだとか。
へぇ。有川さんほどの売れっ子作家でもそうなんですか。

損益分岐点上をウロウロする小劇団の劇団員の若者たちと、その主宰の兄をめぐる物語。
この主宰・巧とその兄・司が、くっきりはっきりあまりにも対照的。兄はしっかり者で経済観念も確立されており、実務能力もあり、とにかくよき社会人にして大人。弟はヘロヘロな演劇人で、脚本・演出という作業以外、はっきり言って社会的に無能なんじゃないかという感じの、ほとんどお子ちゃま。

でも、どう見ても、この二人の間には強い兄弟愛が存在します。
・・・兄・司の方は、そんなことを言われたら「アホぬかせ!」と、言った人間にゲンコ飛ばしそうですが。

この、弟・巧の描き方といいますか、彼に向ける作者の視線というのは、これは女性ならではという気がします。三浦しをんさんの小説を読んでいても時おり、登場人物に向けるそうした視線を感じますが。
司&巧兄弟は、たとえば「まほろ」シリーズの多田&行天コンビに通じるものがあります。三浦さんが、便利屋の居候・行天に注ぐ眼差し、これも女性ならではって気がするんですね。母性愛に近いものを感じます。

この巧という男も、周囲の誰からも「ダメっ子」と呼ばれ、甘ったれだし泣き虫だしビビリだし経済観念いい加減だし・・・ホントこいつは大人なのか?!と疑問がわきそうな人物。ただし、脚本家として、そして演出家としては優れた能力を持っている・・・らしい。
なのに、兄の司はもとより、彼の周囲には彼の何かを愛する仲間が迷いなく存在するのです。

これまで私が読んだ有川さんの小説を思い返してみると「あ、そっか」的にすべてそうなんですが、主人公を巡る人間関係というのが、一見現実的なようで実はあまりにも美しくて――非現実的なんですね。
図書館戦争、空飛ぶ広報室、三匹のおっさん・・・フリーター転じて土建屋になった彼なんかも、心を入れ替えて地に足のついた生活を始めた後は、その周囲に素敵な仲間が集う環境に身を置くことになりますしね。

こうした人間模様の物語は、人生を楽しくおくる最大のカギは「仲間」だ、と読めますね。
人間関係の管理が下手すぎる私には、ほとんど別世界の物語なんですが・・・。ともかくまず、エネルギーが要りそうです。この「シアター!」にしても、若者たちのエネルギー・レベルの高さには感嘆させられます。若いってことももちろんあるでしょうけど。

あと、演劇人ってエネルギッシュなイメージあります。
私は、舞台演劇というものにあんまり馴染みがなくて、大学時代(昭和の昔です)の2年ばかり、学業の延長でけっこう小劇団の舞台を見たことがあるんですが、生の舞台って、見ていて非常に落ち着かないものだったという記憶があります。舞台が小さいだけに、客席と舞台の距離が近く、そんな近さで別世界を演じている人間の存在がこっぱずかしくてたまりませんでした。俳優さんたちが発するエネルギーが受け止めきれなかったのかなあと、今は思いますが・・・。演劇をやる人たちって、なんであんなに燃えてるんですかね^^;。

(どーでもいいことですけど、「2」に、テアトルワルツというっていう劇場が出てきて、これがなかなか悪く描かれているんですが、あれって・・・PARCO劇場じゃなぁい?うひひ。違ったらごめんなさいよー。

しかし、そっか~、TVドラマの脇役や、メディカルバラエティーの再現ドラマの登場人物たちって、売れないけど頑張ってる俳優さんなどが出ていることがあるんですね。なんだか見る目が変わります。

「3」で物語は完結とか。借金返済の顛末はどうなりますことやら。
なお、冒頭の引用は、司の金貸し口上。自らが主宰する小劇団を破産から救うためにと弟・巧に泣きつかれ、300万円を3年で返すことを条件に金を貸すことになる司。金は正義だ!と開き直る彼の姿は清々しい・・・というよりやはりコミカル。医療ドラマにおいても、医療の経済性が人の命の向こうを張る昨今ですが、金は正義・・・と、言い切るほどきっぱりした現実感覚は私にはないかなぁ。

ともあれ、楽しい物語でした。

webcitron01.gif


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  1. 2013/12/28(土) 22:00:02|
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Mikiさんお久しぶりです〜
何年も放置してふと舞い戻ってきたLazy仲間の(個人的にはMikiさんはLazyだとは思ってないけど)Ayakoです!

相変わらず旅や読書を楽しんでらしてすごいです。
私はかなり本から遠ざかっています。
何かいいきっかけになる本はないかなと思うのですけどね。

有川さんのは一度も読んだ事がないのですが、そんなに読みたくなるのなら一度試してみようかな。
読書再開には人気のある本がピッタリな気がします。

お久しぶりで今年ギリギリになってしまいましたが、来年もよろしくお願いします〜^_^

良いお年を〜
  1. 2013/12/29(日) 13:29:33 |
  2. URL |
  3. Ayako #P0vgGwAM
  4. [ 編集 ]

Ayakoさん、

ほんとだーー!すっごいお久しぶり!
・・・といっても、Ayakoさんのブログは実は私のRSSリーダーにずっと登録されているので、最近UPされた記事は実は読ませて頂いてました。
「でもなー、アタシはハンドメイドもできないし~、Ayakoさんに忘れられちってるかもねぇ」とか思ってたんですー(小心者なんで)。

有川さんの小説は、「図書館戦争」は言うに及ばず、「フリーター、家を買う」やら「空飛ぶ広報室」やら、映画やドラマになって人気を博しているものが多いから、多くの人に好まれているんじゃないのかな~。「シアター!」は文庫にもなってるし、とっつきやすいかも^^。

私は、lazyでもあるけど、それ以上に「時間の使い方がヘタ」なんじゃないかと思うこの頃です。
こちらこそ、またよろしくお願いします。
Ayakoさんもよいお年をお迎え下さいね!
  1. 2013/12/29(日) 20:27:29 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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