本と旅とそれから 冬虫夏草/梨木香歩

本と旅とそれから

冬虫夏草/梨木香歩

続編が読めればいいなと思ってはいたけれど、ホントに読めるとは実はあんまり思っていませんでした!本書は「家守綺譚」(感想文は►コチラ)の続編です(≧∇≦)ノ彡はっぴー!

いやぁ、今年の本読みは、最初の三冊がどれも素晴らしい。そしてその素晴らしさが三冊三様。
わくわくの「風太郎」、重厚の「等伯」、そして本書はそよ風のごとく軽やかで、野の花、山の緑の香りが微かに匂うような作品です。
「冬虫夏草」

冬虫夏草/梨木香歩(新潮社)

明治の京都、疏水にほど近い家に暮らす主人公。その職業はヒマな物書きです。
あの世から時おり姿を見せに来る友人や、この世に生きる学究の徒で時おり姿を見せる友人や、囲碁仲間の近所の和尚やそれに化けて法話を聞かせるタヌキや、アヤシイ長虫屋や人望厚いイヌのゴロー等々、興味をそそられる人々(人外の生き物含む)に囲まれてゆる~い日々をおくる主人公の生き方は、私の理想です。


・・・「人外の生き物含む」って注を付けたけれど、主人公の身の回りに姿を見せるものたちって、「生き物」という描写すら当てはまらないのが結構いるんですよね。その筆頭があの世からやって来る友人・高堂ですし、河童なんてもうこの物語においては、堂々と登場人物面して出てきますしね。

にしても、「家守綺譚」読み直したい。
主人公の京都の家と庭とその周辺に姿を見せる人や人ならぬものの話を読み返して記憶をリフレッシュしたいよ~。

「家守綺譚」は、というわけで主人公の家周辺の物語なんですが、本書「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」では、主人公が鈴鹿方面へと出張いたします。
それというのも、イヌのゴローが姿を消してしまったからなのです。あの愛すべきゴローが!
主人公はとにかくものぐさな人物で(それにも親しみを強く感じるワタクシです)、遠出なんてことはおよそしそうにない男なんですが、ゴローを探すためとあらば、頑張らないわけにはいかないのです。

いまひとつ頼りない目撃談を頼りに、意を決して・・・という割にはやっぱりかなりゆる~く山に分け入る主人公。途中、山のどこかにイワナの夫婦ものが営む宿屋があるらしいと聞いて、探し当てて泊まってみたいなと思ったり、お産で亡くなった若い女性の話を聞いて深く同情したためにその女性の亡霊に頼られたりと、この人物の行く先々、ふつうのハイキングではまず起こりえないことばかり起こるのでした。
あ、イワナっていうのはあのイワナですよ、魚の。

時代は明治。明治時代の、場所は鈴鹿山脈まっただ中です。
過去という世界は、決してそこに行くことができないという点では空想の世界と同じ。その、手の届かない切なさみたいなものが、物語をとても美しいものにしているということがあるんじゃないでしょうか。
読んでいて、谷崎潤一郎の「吉野葛」や、白洲正子さんの「かくれ里」に通じる雰囲気を感じたんですが、それは、現代の便利さや無粋さとは無縁の、「歴史上」とか「山奥」とか「伝説」といった要素が作り出すものなのかなと思います。

それにしてもこの主人公(綿貫という名前もちゃんとありますが)、山の中でクマやオオカミに遭遇することを心配するくせに、部屋に亡霊が現れてものほほんとしてるから可笑しい。ちなみに、たまたま行き合わせた学究の徒の友人は、その亡霊を見て卒倒しちゃうんですが。
でもね、たとえばイワナや河童や竜神が人の姿をして現れてきて、「あ、こいつ河童だな」とわかったとしても、面と向かってそんなことを言っちゃダメらしいですよ。わかっても黙ってるのが暗黙のルールらしいですよ。それで何気なく付き合いを続けるのがいいんですかね。よさそうですね。面白そうです。

おうちでまったり感いっぱいだった「家守綺譚」は素晴らしかったけど、柄にもなく遠出した本書もとても楽しめました。果たして主人公はゴローを見つけ出すことができるのか?さてさて。

きっと、私が求める「日本のファンタジー」っていうのは、この物語みたいなものなんじゃないかな。登場人物の名前を漢字にしたり、日本の歴史に題材を求めたりしても、それだけでは何だかやっぱり西洋FTの借り物っていう感じがしてしまう作品が多いのですが、この「家守」と「冬虫」のような物語は、その空気感が、深く日本で、そしてとてもファンタジーだと思うのでした。

この調子だと、ずい分先のことにはなりそうだけど、さらに続編が期待できそうで、嬉しいなぁ。


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  1. 2014/01/10(金) 22:00:02|
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