本と旅とそれから ジェノサイド/高野和明

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ジェノサイド/高野和明

タイトルが怖いです。タイトルのせいで、手に取ることを多少躊躇しましたが・・・。
力作でした。いろいろな点ですごい小説だったと思います。
作品そのものもすごかったし、これだけの小説を著す著者の力量にも脱帽です。さまざまな分野にわたる専門知識と、それと齟齬をきたさないように細部を埋めていく論理的な(?)想像力もふんだんに必要とされたことと思います。

もちろん、「重厚」と形容される小説の著者は多くがその力を持っておられるわけですが、本書の場合、社会派小説であると同時にSFでもあるので、著者に求められるものが一層大きかったのだろうと思うのでした。
「ジェノサイド」

ジェノサイド/高野和明(角川グループパブリッシング)

この本も600ページ近い長編なんですが、紙の厚みの違いなのか、ページ数の割には本は厚くないんですよね。なので、めくってもめくってもブックマークの位置が動かない感じでした^^;。持ち歩くには大きい本だったので、これは家で読み、外では別の本を読んでいたので、「ジェノサイド」にはまっていた時間は結構長かったです。
それにしても、大きな要素がたくさん詰まった小説でした。読んでいる間、そして幾分は今もまだ、いろいろなことを考えさせられました。


中でも私の想像力を一番刺激したのは、やっぱり、「人類の進化」という要素です。
現生人類は、人類の進化の最終形ではない、という。北京原人やネアンデルタール人が現生人類に取って代わられたように、私たちはいつか、さらに進化したヒトに取って代わるられるのだ――。
たとえばチンパンジーと人間を比べたとき、そこには歴然たる知能差があるわけですが、それに匹敵する、あるいはそれ以上の知能差をもって人間に優越する人類が生まれたとするなら、それはどんな存在で、人間にどういう態度で臨むのでしょうか。

大昔に読んだ、「大地の子エイラ」という小説は、エイラというクロマニョン人の少女が主人公でした。もう詳細はほとんど忘れてしまったのですが、エイラはどうしたわけか、ネアンデルタール人の群れの中の唯一のクロマニョン人だという設定でした。クロマニョン人はつまり現生人類なわけで(えーっと、学術的に正しいのかどうか確認してませんが、少なくとも、そういった認識で小説を読んでました)、ネアンデルタール人には理解できないことがいろいろと理解できるのです。そのひとつが、時間というものの概念でした。

「エイラ」を読みながら、時間の概念を持たない人間の社会って、その文化ってどんなもんだろうかと考えたのですが、私はすでに時間の概念を持ってしまっているので、それを持たないことを想像するのが難しかったんです。で、きっと、その逆、つまり、時間の概念を持たない人間が持つ人間のことを想像することは、こりゃほとんど不可能だろうな、とも思いました。

となると、今の人間が、進化の段階をひとつ進んだ新しい人類の世界を理解することも、たぶん不可能なんでしょうね。

「ジェノサイド」は、その新しい人類の子供を巡る、現生人類たちの闘争の物語です。

その新しい人類が誕生した場所が、アフリカのコンゴ共和国のピグミーの集落なんです。やっぱり人類の進化の舞台は常にアフリカなんですね。アフリカのジャングルの奥って、いまだに生命の神秘が存在する感じしますものね――というよりも、たとえばアマゾンの奥地などだと、通常と違う赤ん坊が生まれると、それを「間引く」慣習があるんだそうです。本書で説明されてます。ひとくちに「人間」、「現生人類」といってもいろいろです。時としてその「違い」は、背筋がぞっとするほどの恐怖を呼びます。

さてところが、このコンゴというところは、現在、部族間の恐るべき殺戮が繰り返されている場所でもあるのでした。地球上のあらゆる動物の中で、唯一人間だけが同じ種の他者に対してジェノサイドつまり大量殺戮を行う生き物である、という、これはおそらく動物学的な真理なんでしょうね。それを実証する場面が何度も描かれ、迫真の描写であればあるだけ、読んでいて胃がどんよりしてきます。

で、「人類」といった単位での話になるとやはり登場するのがアメリカ合衆国とその大統領。一番大きな群れとそのボスってことでしょうか。
「ジェノサイド」に登場する合衆国大統領は、ウソでしょーって感じの器の小さな人物です。

私は、以前NHKで放映してた「ホワイトハウス」というアメリカドラマが大好きでした。
一時期すっごくハマって、未放映分の脚本まで買って読んだくらいです。マーチン・シーンさんが演じるバートレット大統領はノーベル経済学賞を受賞した超インテリで、側近たちもみな、それぞれ内面のトラブルを抱えていたりはするけれど、アメリカを愛し、世界のために良かれと、強い正義感をもって日々の職務に邁進する人たちでした。

描き手のスタンスの違いで、同じ職業の人間がこうも異なって見えるものでしょうか。
ちなみに、「ジェノサイド」のバーンズ大統領って、ブッシュ大統領(Jr.)がモデルなのかしら。イラクとの関係でいえばそうなります。もちろん架空の話なわけですけど、でも、いかにも。

人格者然とした態度で世界平和を語る裏で、恐るべき犯罪行為を躊躇もせずに行う。
そんな人間が、全人類を何十回も死滅させられるだけの核兵器発射の権限を持っているとは。そりゃ架空の話だよ、とまた思うわけですが、でも時々ひどい話も漏れ聞こえてきたりしますものね。エドワード・スノーデンさんの事件とか、NSCによる盗聴疑惑(あ、すでに事実か)とかもあるし。

ああ、「ジェノサイド」のいったいどのくらいがホントにあることなんでしょ。

そうそう、「進化」って話では、「猿の惑星」のことも何度も思い出したんですよ。
あの映画シリーズの第3作目だったか、核爆発を起こした未来の地球から過去(つまり現在)にタイムスリップして来た、高い知能を持ったサルの夫婦が、現代のアメリカで人間たちに追われ、殺されるという展開でした。人間たちは、高い知能を持ったサルたちを、人類への脅威として抹殺するわけですが、サルの夫婦は死の間際に、自分たちの子供を、サーカスのサルに紛れ込ませて生き延びさせるんですよね。小さなサルの赤ちゃんが、人間の言葉(何だったかな、「ママ」かな?)を喋る声が響いて映画が終わるのでした。

「猿の惑星」は続く第4作で、ちと取ってつけたような教訓的終わり方をするのがつまらないのですが。
・・・もちろん、殺し合う結末がいいってわけじゃありませんけど。

ああ、脱線ばっかり。
進化とは。人間とは。命とは。
その根本的な定義というか概念が、もうぐ~らぐら揺れ動いちゃって、ただでさえ論理的思考の大変苦手な私などは、筋道の通った考えを長く維持していくことができません。
知性とは。道徳とは。

私の読んできたSFのほとんどは、現生人類がこのまま長く長く種として存続するという前提の上に物語が作られています。「2001年宇宙の旅」から「銀河英雄伝説」へと、「アンドロメダ・ストーリーズ」や「スター・トレック」へと広がっていくわけですが、地球なんか遥か彼方に消え去った宇宙のどこかにも、今現在、自分の身の回りにある馴染みのものの断片が、何らかの形で見つかるのが当然って感じでした。
でも、そもそもその人間というものが変わってしまったら物語はまったく違う形になるんでしょうねえ。そういえば、手塚治虫さんの「火の鳥」に、ちょっとそんな感じのエピソードがあったかなぁ・・・。

ふへ~。

そうした遠大な空想から翻って、アフリカの内戦です。次元の違いに頭くらっときます。
この世の地獄。そのようなものを作り出す人間なんて、いっそ新しい人類に滅ぼされてしまえ!
・・・といった過激なことさえ考えてしまうような、どうしようもなく理不尽な、理不尽なんちゅ言葉では表せないようなことを行う現生人類。なんにも言えない・・・。

無駄に長くなりました。何てまとまりのない。
それでもまだあれこれ書き散らしたい気持ちは残っているのですが、きりがないので、この辺で。

蛇足ですが、今回本書を読む気になったのは、いつも立ち寄る(滅多に買わない)書店で、「あの名作がついに文庫化!」と宣伝されているのを見たから。「ほほぅ、そんなに名作だったのか」と、図書館で検索してみたら単行本の複本が何冊もあって、なるほどと思ったんですが。
私が読んだのはもちろんその単行本の方なんですが、文庫化の時に内容の変更はあったのかしら・・・。「マークスの山」なんかはかなり改稿されたと聞きますが――ま、いっか。


webcitron01.gif


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ジェノサイド、読まれたんですねー!!!
私も去年の春、読みました。旅行のおともに♪(おもかった。。)
この本を読んじゃうと、読んだ後の余韻も強くって、lazyMikiさんがついつい脱線して書いてしまうのすごくよくわかります。
今、本屋さんでは文庫本が平積みですが、あの表紙写真は私はあまり好きではなくて、文庫本のほうが好きです!
  1. 2014/01/27(月) 20:14:35 |
  2. URL |
  3. lundi #dkQVFjxY
  4. [ 編集 ]

あ、間違えました↑
単行本のほうが好きです!でしたー。失礼しました。
  1. 2014/01/27(月) 20:15:54 |
  2. URL |
  3. lundi #dkQVFjxY
  4. [ 編集 ]

lundiさん、

インパクト強い本ですよね~!
現実に起こっている(かどうかホントはわからないけれど、リアリティがすごいから、そう思えてしまう)ことの悲惨さに、がっくり肩が落ちてしまう部分も多いけど、それでもなお読むことをやめさせないものがありますね。
なんかこう、宇宙との一体感というか、真理がどのようなものかわからないけれど、というか、真理なんてものがあるのかもわからないけれど、何か大きなものがあって、自分もその一構成要素なんだ、みたいな、不思議な安心感のような。
なんのこっちゃ、ですが。

文庫版の表紙、Amazonでよーっく見てみました。
ラスコー洞窟壁画、みたいな感じですかね。下巻の表紙、それがライフル構えた人間っていうのが、コワいですね~。
単行本の方が、夢がある感じで、綺麗ですよね。
  1. 2014/01/27(月) 21:49:43 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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