本と旅とそれから モーリスのいた夏/松尾由美

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モーリスのいた夏/松尾由美

「〇〇のいた夏」って、どこかで聞いたようなタイトル。このタイトルだけで、作品の一番基本のトーンは推測がつくような。
透明感溢れるひと夏の思い出を、何年か経った後に振り返るパターンに違いない。
「モーリスのいた夏」

モーリスのいた夏/松尾由美(PHP文芸文庫)

何しろ「ジェノサイド」の直後に読み始めたので、その重量感の落差ときたら、きっと海の底から月面にワープしたらこんな感じかも、です。
もちろん、「ジェノサイド」の後では、大抵の本が軽く感じられそうですが、何しろ本書の主役は二人の少女、その歳は17と10。人類の本性と進化の小説の後でなくても、そもそもがティンカーベルの軽やかさなんでございます。


モーリス、というのは、正体不明の怪獣の名前です。
子供にしか見えず、死んで間もない生物の魂というか、残存思念のようなものを摂取して生きています。で、高等生物であればあるほどごちそうであるらしい。また、モーリスに「くわれた」人間の体(つまり死体ですが)は、きれいサッパリ消え去ってしまいます。

このモーリスが登場するせいで、小説の雰囲気がファンタジーっぽくなるんですが、いやいや、ファンタジーというよりこれはメルヘンに近い。モーリスという名前からして、絵本作家モーリス・センダックから取られています。
「かいじゅうたちのいるところ」というセンダックの絵本は、ぱらぱらっとページをめくったことがあるだけですが、それが絵本としては古典にして名作中の名作、という知識はありました。「かいじゅう」のイメージも大体わきます。なので、その「かいじゅう」と似ているという本書中の怪獣モーリスの姿も一応わかりました。

そのような、絵本に描かれるような生き物が登場するとなった時点で、どうしても物語からかなりのリアリティーが失せるんですが・・・。
でも、話の筋としては本書はミステリでもあるんですよね。殺人事件が起きるので。

「秋月記」のところでちょっと書きましたが、最近は途中まで読んだ本でも、「物語に入り込めないな」と感じたら読むのをやめてしまうようになりました。
本書については、最初の数ページを読んだところで「あ、この本なら大丈夫」と感じたんですが、しばらく読み進めて「いや、やっぱり軽すぎてダメかも」と思い、またしばらく読んで「でも、こゆ小説もありかな」などと気が変わり、そうこうするうちに読み終えました。

読み終えた今の正直な感想は「いまひとつ」。

以下、ネタバレありますので、ご注意を。

メルヘンとしてはそれなりに可愛らしい物語だと思えなくもないのですが、ミステリとしてはあり得ない。
死体の代わりにドライアイスを毛布の下に入れておくと、やがてドライアイスが気化してなくなるので死体がなくなったように見える――なんていうのは、いくら何でも、周囲が気付くでしょー。人体ひとつ分の量のドライアイスとなれば、煙が出るし、冷気だって出るでしょうに。

しかも、連続殺人事件の体裁をとっているものの、その中に「死んだふり」やら「事故」やらが混じっているという、ミステリとしてはルール違反だらけで・・・タネ明かしされてハラが立つようなストーリー。
ただでさえ、モーリスという死体を消してしまう怪獣がおり、これは警察を含む大人たちにはその存在が認識されないときているので、この話をミステリと呼ぶことに意味があるのかどうか、疑わしくもなるのでした。

メルヘンとリアルなミステリの組み合わせがしっくりいかなかったということかしら。
私がちょっとばかり苦手意識を持っている、児童書と一般書(というのか・・・)の境界線上にあるような雰囲気の物語でした。


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