本と旅とそれから 和菓子のアン/坂木司

本と旅とそれから

和菓子のアン/坂木司

以前、母に「何かみつくろって借りて来て」と、ゆる~い頼まれ方をしたときに、タイトルがそのゆるさに合致するような気がして図書館から借りて来たこの本。当時はまだ単行本しか出ていませんでした。
読んだ母が「デパ地下の話だった。面白かったよ」と言ったので「へー。もしかしたらワタシもそのうち読むかも」などと思っていたら、それからしばらくして何だかちょっと話題になったんですよね、この本が。理由は忘れてしまったけど・・・。

なもので、きっと図書館ではすぐに借りられないだろうと思っていたところ、先日、文庫本棚にあるのを発見したので早速手に取りました。
「和菓子のアン」
和菓子のアン/坂木司(光文社文庫)

ですからね、デパ地下の話でした。和菓子店。
東京百貨店というのですが・・・名前が一番近いのは東急百貨店でしょうかねぇ。都心にあるらしいんですけど。まあ別にどのデパートでもいいので、私は勝手に、新宿小田急百貨店本店地下にある、鶴屋八幡のお店をイメージしてました。
鶴屋八幡は大阪のお店なので、関東系らしい物語中の「みつ屋」とはちょっと合わないんですが。

ほのぼの可愛らしいお話でした。
ぽっちゃり体型にちょっとコンプレックスを抱く主人公・杏子(ホントは「きょうこ」ですが、「あんこ」とも読めば読める)が、なりゆき的にバイトに入った老舗和菓子店「みつ屋」の某デパ地下支店で出会う人々とのエピソードあれこれ。

でも驚いたのは、この小説が「(お仕事)ミステリー」と呼ばれていること。
どこがミステリ?ってまあ、考えれば思い当たりはするのですが。お店にやってくるお客さんたちの、どんなお菓子をいつ幾つ買った、保冷剤をどのくらい入れて欲しいと言った、というような購買行動から、キレ者の店長さんがそのお客さんの素性やら隠れた物語を言い当ててしまうんです。さらには、和菓子業界の暗号とも呼べそうな専門用語をちりばめた会話も、杏子と、そして読み手にはミステリー。かも。

ただ、私にとっては、本書における「なくてもいいパーツ」の筆頭がこのミステリ要素なんですけどね。
わざわざ謎解き仕立てにしなくても、お客さんやデパートに働く人々とのふれ合いエピソードは描けると思うんですけど。ちょっと謎解きが無理やりに思えるのでした。

逆に一番いいな~と思ったのがキャラクター。特に、主人公と立花さん。
立花さんというのは主人公の同僚店員ですが、こちらは正社員で、和菓子職人でもあります。
で、この人がイケメンで「少女」なの。「少女」であって「オネエ」ではありません。

彼のキャラ設定がなかなか微妙でよいと思います。
お店ではしっかりと「ですます」調で話し、商品知識は無限に豊富で、商品の扱いも接客も文句なし。それが裏に回ると、可愛いもの、ロマンチックなものが大好きで、人情話に感激する度合もひと一倍。杏子を「アンちゃん」と呼び始めたのも彼です。

一方の主人公は、ダイエットに未練はあるものの食への欲求が抑えきれず、長年のぽっちゃり体型ゆえにオシャレとは縁遠く、男性特にイケメンが苦手。
でも、杏子にとってこの立花さんは、イケメンだけど「少女」だし、立花さんにしてみると、杏子を見ていると、和菓子職人が大福を愛するがごとき思いが湧くらしい。
ああら、この二人どうなるのかしら。読み手はあたかも、傍らで二人を眺める椿店長と同じ視点を与えられたがごとく――。ちなみにこの椿店長のキャラ設定は立花さんの逆でして、見た目はきりっとした大人の女性ですが、中身は「賭け」や「相場」や「かわいこちゃん」が大好きなおっさんなのでした。

私はそもそも和菓子大好きなので、和菓子のあれこれを読んでいるだけで楽しめました。
まあ、京都大好きの延長としての和菓子大好きなんだと思いますが、京都のものでなくても和菓子は好きだし――といっても、上生菓子はやっぱり、目にすると京都のものと比べてみちゃいますけど。
・・・最近、造形の美しい銘付きのお菓子とご無沙汰してます、ふと思えば。

もうちょっとすると、大好きな「花いかだ」の季節だなぁ。


webcitron01.gif


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tag: 坂木司 
  1. 2014/02/02(日) 22:00:01|
  2. 2014
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コメント

和菓子のアン!読まれたんですね~。私も友達の薦めで以前読みました。
立花さんのキャラ、私も好きでした。
オネエではなく女子、そうそう、そうなんですよね。

ところで「花いかだ」美しいですね!鶴屋吉信さんにこんなお菓子があったのですね。これから春にかけては色の淡い生菓子が並ぶ良い季節ですね~。私も今度覗いてみます^^
  1. 2014/02/04(火) 21:03:12 |
  2. URL |
  3. lundi #dkQVFjxY
  4. [ 編集 ]

lundiさん、

昨今のオネエタレントさんたちも、結構面白みのある方は多いような気もするんですが、立花さんに関しては、「そこまでいかない」ところが魅力だと思います。
それにしても、今日いつも立ち寄る(滅多に買わない)書店の特設コーナーに「ダジャレタイトルの本」が集められていて、そこに本書もどーんと並んでいました。
これって「赤毛のアン」の「ダジャレ」ってことなんでしょーか^^;。

春の和菓子としては、鶴屋吉信の花筏と、二條若狭屋の「しだれ桜」(http://lazymiki.blog110.fc2.com/blog-entry-1281.html
を、今のところマイ双璧としておりまっす^^。
  1. 2014/02/06(木) 00:02:25 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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