本と旅とそれから 深山に棲む声/森谷明子

本と旅とそれから

深山に棲む声/森谷明子

「傑作大河ファンタジー!」という、文庫版カバーの売り文句につられて手に取った1冊。

それなりに長編だったんだけど、全体としてはあまり色濃い印象は残らなかったかな~。
キャラクターの中に感情移入できる人が見つからなかったのと、物語世界の描き方がさらりと淡泊な感じだったのと、全体の構成が少々複雑だった(と、私には思えた)せいかと思うのでした。
「深山に棲む声」

深山に棲む声/森谷明子(双葉文庫)

構成が複雑だったというのは、最初に中編ぐらいの長さの四つの物語が語られ、そのあとに、それらをまとめるような物語が続くという形をとっている点。もちろん、それだけならさほど複雑ということもないのですが、最初の四つの物語では、登場人物たちの名前もカタカナ表記で、イヒカとかイオエとか、一見国籍不明って感じ。しかも、全体の冒頭に、ロシア民話ババ・ヤガーの物語が紹介されているんです。


ババ・ヤガーって、私は「『展覧会の絵』の中にそんなタイトルの曲があったっけ?」ぐらいの認識しかないんですが、その、ごく短い冒頭の文章を読むと、内容は日本の昔話(民話かな?)の「三枚のおふだ」に酷似。日本とロシアの民話の間にこんなに近い関係があるとは、やっぱり義経はロシアに渡ったんか(モンゴル経由)?などとちゃらんぽらんなことを考えながら物語を読んでいくと、そんなゆる~い頭で読むせいか、四つの物語の間の関係が、明確に把握できないんですよー。

四つの物語はそれぞれ四つの異なる国におけるお話ということになっていますが、どうやら共通する山(岳地帯)と、人物(たち)が出てくるんですよね。で、その人物たちのひとりが「ババ」と呼ばれる女性なんですが、冒頭のババ・ヤガーの話のことがあるので、この人はつまりそれなのか?この物語はロシア方面の話ってことなのか?などと思ったりする。

しかも、それぞれの物語に登場するババは、年齢がかなり違うんですよね。若かったり。年老いていたり。つまり、それを尺度に物語の発生時点が推測できるってことなんだろうと思うんですが、その周囲の登場人物たちの描き方や年齢や何やかやが、何だかびみょーにズレてるような気がするんですよね。といっても、そのたびに前の物語に戻って確かめて、なんてことは面倒でしやしないので、ホントにズレているのか、ズレているとするとどうズレているのか、などということが、はっきりしないまま、読み進めるうちに何やらモヤモヤと頭の中に沈殿していきます。

なので、四つの国の物語を読み終える頃には、それらは私の頭の中で「混ぜ方不十分なフルーチェ」のような様相を呈していたのでございます(TVで、小さな男の子がイチゴフルーチェを作るCMを見ていて「これだな」と思いましたよ)。
そこへきて、次の物語ではいきなり、イヒカは伊緋鹿にイオエは五百枝にと表記が漢字になり、物語の舞台は京都だというのでした。

つまり、五つ目の物語は現実世界を舞台としており、先立つ四つは、その現実世界では伝説のように人々の間に語られる「物語」なのだ、という構成になっているんですね。
伝説だの民話だのというものは、昔の何かひとつの事件をもとに作られ、伝えられ、その過程で微妙に変化したり誤って伝えられたりして、やがていくつものバージョンが出来ていく。それが、最初の四つの物語にも当てはまる――ってことなんだろうかと思うんですが・・・。

文庫版カバーによれば「緻密かつ壮大な物語」ということなのですが、残念ながら、現段階では私にとっては緻密すぎた感があります。ちゃらんぽら~んと読んでたせいもあるとは思いますが。たぶん、何度か繰り返し読めば、もっと物語世界に入り込めるんじゃないかと思うんですが・・・。ファンタジーって、そゆの結構ありますからね。「指輪物語」だって、最初に読んだときは、あんまり印象強くなかったし(その後、英日合わせて5回ぐらいは読んで、私の中では至高のFTとなってますが)。

それにしても、冒頭の「三枚のおふだ」ふうババ・ヤガーの存在意義が、よくわからないのでした。


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