本と旅とそれから 蜩ノ記/葉室麟

本と旅とそれから

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tag: 
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

蜩ノ記/葉室麟

相変わらず冬籠り中です。
それにしても、この大雪。おかげであれやこれやと面倒な目に遭わされることになり、恨めしい限り。
その一方で、作家・山本兼一さんがまだ57歳という若さで亡くなったと聞き、がっくりです。まだまだ名作を生み出して下さるはずの方だったと思うのでした。うぅ、ちと暗い冬のこの頃・・・(T_T)。

さて、「蜩(ひぐらし)ノ記」。「秋月記」の感想文(►コチラ)へのコメントでお薦め頂いた葉室麟さんの直木賞受賞作です。今秋には映画も公開される予定とか。

「蜩ノ記」

蜩ノ記/葉室麟(祥伝社)

物語では、かつて藩の重役を務めた経歴を持つ戸田秋谷(しゅうこく)という侍が、藩主の側室と密通し、小姓を斬り捨てるという事件を起こし、その罪により藩主から、十年後に切腹することを申しつけられます。なぜすぐではなく十年後かといえば、事件を起こしたとき、秋谷は藩の公式記録「御家譜」を記すという仕事を手掛けていたため、その仕事を終えたのちに切腹せよ、ということになったのです。


物語は、その秋谷が家族と暮らす山里に、自身も不祥事を起こした若い侍・庄三郎がやって来るところから始まります。庄三郎の役目は、秋谷の家譜編纂のアシスタントをすることと、同時に、切腹の時が迫る秋谷が、死を恐れて逃げ出したりしないよう、見張ること。その時点で、秋谷の切腹までの時間は三年となっているのでした。

うー、やれやれ。
だから私はプレッシャーにことさら弱い人間なんですってば。
自分で自分の腹を切って死ななければならない時が、刻々と近づくなどという状況は・・・想像しただけで食欲がなくなってしまいそうです。
秋谷という人物はしかし、そんな状況にあってもなお、あるかなきかの微笑みを口元にたたえ、常に静かに、御家のため、後の世の人々のために真実を書き残すという使命だけを追い求める日々をおくっています。

この本と並行して次に感想文UP予定の朔立木(さくたつき)さんの「終の信託」という本を読んだのですが、この物語の主人公が、やはり迫る死を目前にしながら、理性を失わず静かに日々をおくる、という人物でした。といってもこちらの主人公は自決ではなく、病気による死なのですが。

で、「蜩ノ記」同様、「終の信託」も映画化されたのですが、どちらも主演が役所広司さんなのです。
もひとつついでに言うと、昨年末、たまたまTVでちゃかちゃか番組をブラウズしていて「最後の忠臣蔵」という映画をやっているのを見つけて最後の30分ちょいを見たのですが、これがまた、大石内蔵助の遺児を育てるという密命を果たした四十七士のひとりが、討入りから16年の後にひとり切腹するという話なのです。
その侍を演じていたのが、これまた役所広司さん。

死を見つめながら生きる。
もちろん、病気と切腹は全然違うでしょうが・・・。
そんな境遇の人物の姿を、3バージョンも演じるとは。いや、たまたま私が知ったのが3通りなだけで、類似の人物をもっと演じていないとも限りません、役所広司さん。
多くの監督が、そうした役を演じたら抜群、という評価をした俳優さんってことなんでしょうねー。

役を演じるに当たって、おそらくはそのような境遇に身をおくこととなった人物の気持ちを深く考えたに違いないと思うのですが・・・そんな作業を(少なくとも)三度も行うなんて。役所さん自身も、それなりに精神的にタフな人でなければたまらないだろうと思うのでした。

ちょっと脱線しました。

物語には、秋谷の家族や、彼が暮らす村の農民たちの様子、また、秋谷が引き起こしたとされる「密通事件」を巡る藩の秘密などが描かれます。秋谷の息子・郁太郎の親友・源吉の人物像とか、若い庄三郎の成長の様子などは大変印象深いものに描かれていますが、やっぱり私にとって圧倒的なインパクトを持って迫ってくるのは、秋谷の姿です。
申し開きも、言い訳も、逃亡すらも、しようと思えばできなくはなかったのに、この秋谷という侍は、そうしたことを一切しようとせず、ただただ、日々机に向かって筆をとる。

侍のひとつの理想の姿ということなのでしょうか・・・。

確かに、胸をうつ人の生きざま(「生きざま」というこの言葉が、三浦しをんさんは大嫌いなんだとか^^;)だとは思うのですが、共感とか称賛とか、そういった感情はわきません。あまりにも自分から遠くて。
笑われようと蔑まれようと、必死に命乞いをする姿の方が共感はできると思います。ただ、そんな様子はあまりに普通の人間臭くて、ある種の感動とは無縁かも知れません。

果たして秋谷は切腹を免れるのか?
物語の最後までそれはわからない・・・といっても、秋谷という人物についてずっと読んでいけば、教えられなくてもわかってしまうことに思えます。

うーん、侍って理解し難い人種です。
が、読み応えある物語でした。

webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 葉室麟 
  1. 2014/02/15(土) 22:00:02|
  2. 2014
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:2

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1684-509712c1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

『蜩ノ記』

葉室麟 『蜩ノ記』(祥伝社)、読了。 父の本棚から借りてきました。 直木賞受賞作。 藩主の側室と不義密通を犯した罪で、切腹を言い渡された秋谷。 しかし、家譜編纂の役目を果たすため、切腹は十年後とされる。 その秋谷の見張り役として幽閉先に遣わされた主人公が、過去の事件の真相に近づく・ あまり時代小説の長編は読んだことがないのですが、 最初は、淡々とした話の流れに、こんなも...
  1. 2014/02/16(日) 11:43:28 |
  2. 観・読・聴・験 備忘録

コメント

映画「蜩ノ記」予告編

映画「蜩ノ記」公式サイトで予告編を観ることが出来ます。
期待が持てそうです。
  1. 2014/06/20(金) 09:16:17 |
  2. URL |
  3. ひろ #Z0eBfVjg
  4. [ 編集 ]

ひろさん、

直木賞原作と、実力派俳優さんの組み合わせですものね。
葉室ファンにはたまらないことでしょう!
  1. 2014/06/21(土) 02:01:05 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。