本と旅とそれから 終の信託/朔立木

本と旅とそれから

終の信託/朔立木

私が図書館から借りて来たのは、カバーは映画のワンシーンの写真で、周防正行監督の映画の原作であることを前面に押し出した装丁のものです。
主役の二人は草刈民代さんと役所広司さん。「Shall We Dance?」の組み合わせですね。
まあ、そんなあたりにひかれて借りて来た本だったのです・・・が。

「終の信託」

終の信託/朔立木(光文社文庫)

読みは、書名が「ついのしんたく」、作家さんの名前が「さく・たつき」。
借りて来るときは、書名から適当に推測して「遺産相続の話かな?」なんて思っていました。
いえいえ。
安楽死の話でした。あ、いや、そう言ってしまうのは単純化のしすぎでしょうか。もう少し言うと、不治の病に侵された人が、信頼する医師に「自分の苦しみを終わらせる時を決めてくれ」と託す話でした。


映画は(DVDでということですが)、絶対に見ないと思います。
DVDのAmazonレビューをちらりと見ましたが、「救いがなくて気持ちが落ち込む」みたいな意見が多かったように思いました。

物語は、前半が主に、医師・折井(映画では草刈さん)と患者・江木(役所さん)が診療を通して親交を深め、お互いを深く信頼し合うようになっていく様子が描かれます。そして後半が、患者の望みをかなえるために最善を尽くしたはずの折井が、検察官(大沢たかおさん)に悪意ある取り調べを受けたのち、殺人罪で逮捕されるまでが描かれています。

この本も、途中で「この辺りで読むのをやめようか」とかなり迷いました。
面白くなかったというのではなく、あまりにも話が重く、時々ものすごく悲しかったからです。
主人公の二人の間には深い信頼と愛情があり、もし他の人がここに関わってくることがなかったなら、苦しく悲しいながらも最善の結末を見ることができたはずでした。

でも、現実には、折井を取り巻く人間関係があり、江木には残された家族がある。そうした人々が悪意や雑念を持ち込むことで、二人の間の真実は、それとはかけ離れたものに変貌させられてしまう――。

私がこの本を読んだ頃、ベルギーで子供の安楽死を認める法律が成立した、というニュースが報じられました。詳細は知らないのですが、現実の世界のどこか(ってベルギーだけど)に、そのようなことが公に許されている場所があるなんて、驚きです。
私は、人間は、自分の最後を自分で決めることを許されるべきだと思ってます。その権利を与えられることで、生をより輝けるものにできると思うんです。

もちろん、そうしたシステムができたら、悪用する人が出てくるかもしれないし、人間には「一時の気の迷い」みたいなものだってあるだろうから、それで死んでしまったら取り返しがつかない、という議論もあるでしょう。
でも、死んじゃったら、少なくとも本人が「後悔する」ってことはないですよね。問題はきっと、残される人々の方に生じるのでしょう。

ベルギーの話はともかく、日本の安楽死の基準って厳しすぎるんじゃないのかしら。
あー、いや、詳細を了解して言ってるわけじゃないので、アバウトな考えにしかすぎませんけれど。
ちなみに、作者の朔さんは、現役の法律家(たぶん弁護士)だそうです。
この小説は、実際の事件をモデルにしているようで、確かに以前この小説にあるような事件が報道されたような記憶がうっすらとあります。

善意とはいえ――この医師は、もうちょっと自分を守る手段を講じておくべきだったと思います。
患者の死がどんどん近づき、状況が切羽つまって、そんなことをしている時間的、精神的余裕がなかったということかも知れませんが、人の生死が関わる問題で、口頭のやり取りだけというのは不用意にすぎたのでは・・・。医師の行為が真に患者の希望に沿い、患者に良かれと思ってのものであったなら、一層、その備えを固めて、善意の医師が守られるべきだったと思います。

それにしても、成人の喘息って酷い病気なんですね。死に至るほどの病気だったとは。
そういえば最近、TVドラマの「螺鈿迷宮」を見てますが、あれも終末医療が大きなテーマ。
すべての人に、望めば安らかな死を迎えられる権利が与えられるべきだと思うんですけどね。

本書にはもう一篇、殺人を犯して勾留中の女性の話が収録されており、こちらも一応読みましたが、いやはや、こちらも何とも・・・。主人公の視点では、イヤな奴って感じで描かれている取り調べ助手の「山下」が、心情的には一番自分に近いかと思いました。わけわからん理由で人を殺しておいて、「どうせわかってもらえるわけない」とか開き直るってどーなのよ。

ともあれ、重い話の苦手な私には、かなり苦痛な1冊でした。


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  1. 2014/02/28(金) 22:00:00|
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