本と旅とそれから 虚無への供物/中井英夫

本と旅とそれから

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
tag: 
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

虚無への供物/中井英夫

どっ、どれだけ時間がかかったことか!
確かに、文庫本とはいえ600ページ超ではあるのですが、一体、読み始めてから終わるまで何日かかったのやら。それでも不思議と、途中でやめてしまおうという気にはなりませんでしたが・・・。
「虚無への供物」

虚無への供物/中井英夫(講談社文庫)

当ブログでは、読書感想文は基本的に3作分たまったところでまとめて公開設定にしています。本書の感想文は今回の3冊のうち2冊目ですが、1冊目が何だったか、ほとんど忘れかけました^^;。それくらい、この本にとりかかってから終了するまでに長い時間がかかったということ。
まあ、京都に旅行に行ったり、プールに通い始めたりしたってこともあるのですが。

ちなみにプールについては、だから本読みのための時間がなくなったというのではなく、本を読んでいると強烈な睡魔に襲われるからなのでした~。まだ、プールのある生活に慣れておりません。

さて、本書。

お定まりの、うちの図書館文庫本棚で見つけた時は、「をを!実在したのか、この本は!」って感じでした。篠田真由美さんの建築探偵シリーズで、主人公の桜井京介が語る「日本の推理小説の歴史」みたいなウンチクに登場した、確か、日本推理小説史上屈指の名作――だったような。

なので早速借りて来て読みだしたのですが、さすが、昭和39年発表の作品、描かれている世界がレトロ。昭和39年発表ですが、物語世界はそれよりさらに10年昔の、昭和29年。洞爺丸の遭難事故の直後です。戦争が終わってまだ10年そこそこという時期なので、その影も残っているという時代。

そうした時代的な隔たりももちろんあるのですが、何というか――いきなり冒頭は、ゲイ・バアでの、ことさら退廃的な雰囲気満ち溢れるシーンだし、主要登場人物の名前も気取りすぎというか・・・亜利夫(ありお)なんていう本名も変わっているけど、そこからきて仲間内の呼び名が「アリョーシャ」だなんて・・・。主要キャラ中紅一点の喋りも「あら、よくってよ」とか「~していらっしゃるんじゃなくて?」って調子だし。登場人物たちの会話に出てくる固有名詞もわからないのが多くって、何だかすごく衒学的な感じ。今だったら差別表現と批判されるだろうような要素も多く見られます。

時代を描写した面もあるだろうとは思いますが、それだけではなく、やはりこの小説独自の雰囲気というものもあるだろうと思います。

推理小説としては、古典的な密室トリックというのが大きな要素となっているのですが・・・でも、今どきはもう密室トリックって面白くもない思うんですけどね。確か、森博嗣さんの比較的最近書かれた作品に、密室ものがあったように記憶してますが、それもあまり面白い要素とは思えなかったような。
登場人物たちの会話にもそれらしいことが語られていますが、昭和29年の段階ですでに、密室トリックについては、多くの作家によって様々な可能性が検討され尽くされている感があるんですよね。

推理小説には探偵役が必要ですが、これもまた――。
真打が登場するのは、後半になってから。それまでは、独自の推理を好き勝手に披露する人間が4人集まってあれこれ喋り合うばかり。誰もが「自分の説こそ真実、ほかの人は頭ワルイ」と言わんばかりの口調で自説を展開するのですが、読んでいるこちらは、真実がどこにあるかはともかく、この人たちにそれがつきとめられるとはとても思えないのでした。

真打が登場してからも、なんかもー、なんなんだ、あのもってまわった喋り方は!探偵が容易に頭の内にある犯人の名を明かさないというのはありがちなパターンではありますが、それにしても本作の探偵のあの姿勢は・・・イラつく。
そして、最後には何とか真実と呼べそうなものが明らかにされるのですが、動機がどうにも納得できません。巻末解説者の表現がぴったりだ思うのですが、「高級すぎる」。あんな理由で人を殺すなんてウソくさい。

と書いてくると、まるで読んでいてはらを立ててばっかりで面白くなかったみたいですが、そんなわけでもなかったのでした。
あれこれの理由で遅々として読み進められずにいても、途中でやめる気にはまったくならず、図書館の貸し出し延長を何度も繰り返して読了しました。

なんでそうだったのかと思えば・・・トリックだの動機だのといった、推理小説としては重要視される要素はわきにおいておいて、登場人物たちの饒舌なトークや、戦後10年という世の中の描写といったものから作り出される作品世界の濃厚な雰囲気が、魅力的だったから――でしょうか。
ある意味、いかにも古典的な推理小説の世界って感じかしら。

古い推理小説って、そんなところがないですか?マザー・グースの歌だとか、村に伝わる古い手毬歌をなぞったように連続殺人が起きるとか。現実世界では、そんな悠長なことやってられる犯人なんていないでしょってところです。でも、フィクションとしては、それが何とも面白い。
本作の場合は、結果がわかってみれば全然関係なかったような要素がやたらとたくさん盛り込まれ、ちょっと盛り込みすぎという感じもするのですが、でも、読み進むうちに段々と作品世界に入り込んでいく感じが得られました。

今どきの作品とはいろいろな点で異なるため、手こずったと言えば言えるのですが、これはこれで楽しかったかなというところです。

webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 中井英夫 
  1. 2014/04/25(金) 22:00:01|
  2. 2014
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1706-d49f45b3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。