本と旅とそれから 乾山晩愁/葉室麟

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乾山晩愁/葉室麟

葉室麟さんの本はこれで3冊目。文庫版が図書館に入っていなかったりして、読みたい作品がなかなか借りられずにいますが、本書は葉室作品を読み始めた最初から興味を感じていた作品です。
タイトルからもわかりますが、尾形光琳の弟・尾形乾山を主人公にした小説です。が、予想していたような長編ではなく、五つの作品を収めた中編集でした。

すべての作品が、芸術家を主人公に据えており、表題作以外の四作はどれも主人公は絵師です。
「乾山晩愁」

乾山晩愁/葉室麟(角川文庫)

まだ3冊目なのですが、今回のこの1冊が一番感動しました。直木賞受賞作の「蜩の記」よりも、私はこちらが好き。やはり、武士ではなく絵師の姿を描いている点が、共感しやすかったのだと思います。

中でも感動したのが「雪信花匂(ゆきのぶはなにおい)」。狩野派の女絵師・清原雪信が主人公。この人物は狩野探幽の姪の娘という縁者で絵の才にも恵まれていますが、女の身ゆえに心ない噂・讒言を受けます。その彼女に、当時の狩野派総帥である探幽があたたかな目を向け庇護し、自分の意志を貫く一生を送ることを助ける物語です。

狩野探幽か~・・・。
狩野派って、永徳までは某検定がらみで熱心に勉強するのですが(とか言ってみるだけ)、探幽の代になると江戸狩野になってしまうので、かなり関心が薄かったんですけど。探幽を長兄とする尚信、安信の三兄弟って、仲がよい――とまではいわなくても、狩野派としての結束は固いのかと思っていましたが。・・・なるほどー、ここにも面倒な一族の内紛があったのねぇ。長兄にして天才絵師である探幽が狩野の惣領家を継いだのではなかったとは。

この探幽が雪信に向ける慈愛の眼差しがいい。「気ままにせよ」とのひと言が雪信の迷いを晴らす、その「とのさま」探幽と、弱い立場ながら天賦の才に恵まれた若い娘の雪信の気持ちの交流がほんわかあたたかいんですねぇ・・・。

狩野永徳、長谷川等伯といった、別の作家さんの小説でちょっと親しみのわいた絵師たちの物語もあるのですが、思ったとおり、違う作家の手になる違う小説に描かれると、人物像はがらりと違うものになります。特に長谷川等伯、そしてその息子長谷川久蔵。安部龍太郎さんの「等伯」に描かれた彼らの方が、ずーーーーっと恰好いい。「等伯」は長編なので、人物像も深く描き込まれていますしね。
どちらにしろ、安土桃山時代の絵師がどんな人物だったかなんて、どのようにも描けるわけですが。

表題作は、輝かしい兄・尾形光琳の、どうしてもちょっと地味な弟・尾形乾山を主人公とした物語なのですが、正直なところ、私にはあまり強い印象を残しませんでした。この尾形兄弟って、誰か長編小説に書いてくれないかなぁ。ちょっと興味あるんだけれど・・・。

まだ読んだ著作数が少ないので何とも言えませんが、道徳律や美学のようなものが硬直しているように思える武士よりも、柔軟な心が作品を生み出していく芸術家たちの姿の方が、私には面白く、共感もできるように思いました。


webcitron01.gif


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  1. 2014/05/15(木) 22:00:00|
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