本と旅とそれから ペテロの葬列/宮部みゆき

本と旅とそれから

ペテロの葬列/宮部みゆき

いわゆる詐欺商法という犯罪について、加害者、被害者、そしてそのどちらにもなってしまう人、さらにその影響をさまざまに被る人などの複雑な物語を語っていく本書。
どう考えても明るく楽しい話になるとは思えない主題だというのに、読んでいて心地よく、「素晴らしき娯楽!」などというフレーズが頭の中に点滅して――いたのですが、そっ、それにしても、このラストはっ!
「ペテロの葬列」

ペテロの葬列/宮部みゆき(集英社)

その詐欺あるいはマルチ商法といわれるものをテーマにしたメインストーリーがほぼ終了し、残されたページ数も少なくなってきて「まああとは後日譚みたいなゆるい流れでエンディングかな」などと思っていた最後の最後に・・・ええぇっ!その終わり方はあまりといえばあまりな。

ネタバレ警告をしたとしてもなおここに書くのに罪悪感を覚えてしまうのでやめておきますが・・・てなラスト。


そのラストの話というのは、メインストーリーとは直接には関係していませんが、600ページオーバーの長編の本書、さらには本書に先立つ二作のこれまた長編を読んできて、主人公にそれなりに親近感を抱くようになっていたものですから、物語の最後にその彼、杉村三郎の身の上に起きるあのような大きな出来事には、読んでいるこちらも大きな衝撃を受けざるをえません!

――本書は、「誰か」、「名もなき毒」に続く、杉村三郎を主人公に据えたシリーズの第三作目。
でもって私、比較的最近、この前二作のTVドラマ版を見たばかりなのです。
最初のTV放映のときは、初回をちょこっと見て、小泉孝太郎さんのちょっと頼りない主人公があまり気に入らず、見るのをやめてしまったのですが、その後知人から「その小泉孝太郎さんのキャラが、杉村三郎にマッチしていてよかった」と聞き、やっぱり見ておけばよかったなーと思っていました。なのでその後、昼間の時間帯に再放送があるのを発見し全部録画、それを先日、だーっと一気に見たところだったのです。

確かに、小泉孝太郎さんの、いかにも押しの弱い、優しいといえばそうだけれど頼りないふうでもある、だけど芯の強さみたいなものも感じさせる杉村三郎像は、ときにイラっとさせられることもありましたが、なかなかよい感じでした。

それにしても思うのは、やはり映像のインパクトというのは強いのだなぁということ。
「誰か」にしろ「名もなき毒」にしろ、TV版を見るまではワタクシ、「とても面白く読んだ」という漠然とした記憶が残る程度で、細部どころか、大筋すらも大半忘却しておりました^^;。それが、TV版を見たおかげで、二作のストーリーがバッチリ復習できたのでした。
でもって、杉村三郎は小泉孝太郎さんの顔かたちで、私の頭の中にはちょっとした知り合いぐらいの存在感を持つようになっていたんですよね。

その小泉孝太郎さん・・・じゃなかった杉村三郎が、また事件に巻き込まれます。
仕事でちょっと遠出をした帰りに、たまたま乗ったバスがバスジャックされてしまうんですよ。
やれやれ。
でもまあ、いろいろありましたが、数時間の後、バスジャックは何とか解決されました。ここまではまだ長編の半分にもいかないので、おや、このあとまた何か別の事件でも起きるのか?と思いつつ読み進むと、そうではなくて、このバスジャック事件をスタートに、話は過去の詐欺商法事件へとつながっていくのでした。

大した知り合いとも言えない程度のつながりの他人を、いい加減にあしらうとか、放っておくとか、できないんですねぇ、この杉村三郎ってヒトは。それでまた上手い具合に(と、言えるのかなぁ)、義父である勤め先のコンツェルンの会長が、ならばその件について調べて報告書を書きたまえ、と、アマチュアの探偵活動みたいなことを公認してしまうものですから、彼はいっそう、無関係でいればいられたような事件に深入りしていくことになるのでした。

後になって振り返れば、それが不幸だったわね。杉村三郎が、過労になるくらいバリバリ仕事をして・・・あるいはさせられて、余計なことは何ひとつできないような日々をおくっていたなら、あのようなラストには・・・。うぅ。

杉村三郎個人の物語と、バスジャックから始まる詐欺商法事件の物語は、どちらも全編にわたって展開していくものではありますが、小説の一番最後にくるまでは、メインストーリーは後者。
詐欺商法にまつわる広く複雑な話が縷々語られていきます。あのような話を、読み手を飽きさせずに延々語り続けられるなんて、本当に、宮部さんってすごい語り部だと、またまた尊敬を新たにしました。

読んでいて、暗くなっても不思議じゃないというか暗くなるのが当たり前のような話なのです。
なのに、読むという行為自体は楽しくてたまらない。詐欺被害に苦しむ人や、事件に関わるどろどろとした人間関係の話を延々読むことが、どうして楽しいと思えるのか――作者の魔法のような筆力です。

・・・ではあるのですが、あのラストには、何とも悲しい気持ちにさせられました!
ぜひぜひぜひぜひ、さらなる続編で、めげずに生きていく杉村三郎の姿を読みたいものです。


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  1. 2014/05/15(木) 22:00:02|
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