本と旅とそれから アルプスと猫 いしいしんじのごはん日記3/いしいしんじ

本と旅とそれから

アルプスと猫 いしいしんじのごはん日記3/いしいしんじ

最近、一大長編(いや、ホント。読了できるかしら。)やシリーズものなどを読んでおり、なかなか感想文を書こうという区切りがつかないのですが・・・とりあえず、本書。

こちらも「いしいしんじのごはん日記」シリーズの第3巻。2巻目(感想文は►コチラ)まで読んだあと、その続編について全然フォローしていなかったのですが、わりと最近、同じ作家さんの「京都ごはん日記」というのが出ていることを知り、「えっ、いしいさん、京都?」と驚き、早速図書館で借りて来ました。
でも、なかなか読み進まずにいるうち貸出し期限となり、他の方の予約が入っていたため延長できずいったん途中返却。そのとき、「京都」の前にもう1冊未読のものがあると知って、「京都」に再び予約を入れて待つ間に読むことにしたものです。
「アルプスと猫」

アルプスと猫 いしいしんじのごはん日記3/いしいしんじ
(新潮文庫)


実をいえば、前述の「京都ごはん日記」を読みながら、「『ごはん日記』シリーズってこんなんだったっけ?」という違和感みたいなものがあったのです。2巻目を読んでからちょっと時間が経っていたというのもあるのでしょうが、なんか文章のリズムについていけない。もっと言えば、何だかいしいさんがひとりではしゃいでいるような感じがして、あんまりいい印象ではなかったんです。

「京都」については、全部読んでからまた感想文を書きたいと思ってますが、もしかするとこの未読の3巻目が、2巻目と「京都」の間のギャップを埋めてくれるかも、と期待して読み始めたのでした。

その期待は――ある程度満たされたようにも思います。
少なくとも、ユッコとかいう「京都」では不明だったキャラクターが何なのかはわかりました^^;。
この「ごはん日記」には、いしいさんの周囲に浮遊する「まぼろしの」生き物が幾つも登場するのですが、ユッコというのも・・・まぼろしの生き物というか、妄想の産物と言った方がいいかも。いしいさんの内なる女子高生だそーで。

そうそう、本書の冒頭で、いしいさんは園子さんを奥様に迎え、新婚生活をスタートされるのですが、そこで園子さんの本拠地であるところの松本に居を構えることになります。しかし三崎の家もキープ。
自分の生活の拠点が二つあるというだけでも、私などは「面倒くさそう」と思ってしまうのですが、いしいしんじという人はホント、フットワーク軽い。松本と三崎の二つの家、大阪の実家、ついでに東京は尾久の園子さんの実家(らしい)、さらに同じく東京のお兄さんの家など、あちらへこちらへくるくると移動しながら、仕事に趣味に大活躍。

それに、すごく社交家でもあるのですね。
この人、どこに行っても友人・知人がいる感じです。
読むだに羨ましい(しかし、真似をしようとは思わないし、できない)いしいさんの日々ですが、本書にはひとつの大きな不幸も記されています。

ある日、奥様・園子さんの妊娠を知ったいしいさん。その喜びは大きく、もうその日から、数多い友人たちにそのニュースを伝え、園子さんのおなかの子を「猫ちゃん」と呼ぶことにし、日記(つまり本書)にも早速猫ちゃんは度々登場するようになります。
でも、その次の日記である「京都ごはん日記」を途中まで読んでいた私の記憶では、数年後のいしいさんご夫妻に子供はいなかったはず。「ということは・・・」という悲しい予想と共に読んでいくと、果たしてその数か月後に、猫ちゃんは生まれる前に天国に旅立ってしまったことが短く書かれていたのでした。

園子さんの妊娠を知ってからの喜びの記述が実に細かく詳しかったのに比べ、猫ちゃんを失ったことについてはほんの少ししか記されていません。もちろん、無理もないこと。やはり日記は自伝ではなく、自分の毎日について、自分という主観に基づいて記されたものなのです。日々の出来事の客観的な重大度合は、日記に記される文章に必ずしも反映されるわけではないのでした。

その一方で、生まれることのなかったわが子が、しかしひとつの命として短くとも存在したのだ、ということを書き記し、残しておきたいという気持ちも強かったのだろうと思います。
いしいさんの弟さんのひとりがプロの写真家なのですが、猫ちゃんが死んでしまったと知る前に、いしいさんは妊娠中の園子さんと一緒の写真をこの弟さんに撮ってもらいます。
猫ちゃんが亡くなったと知った直後のいしいさんが、「孝典(=写真家の弟さん)に三人の写真を撮っておいてもらってほんとうによかった」と書き、猫ちゃんや園子さんに「ありがとう」と繰り返し書かれているのがしんみりさせられました。

しかし、いしいさんも園子さんも、やがて元気に前を向いて歩き出します。
・・・ん?この元気回復の感じ、割と最近読んだ本にもあったような――何だっただろう(あとで探そうっと)。
その後、二人のキューバ旅行の様子は、本書の後半のハイライト。日本で新鮮な魚や野菜を思う存分食べている二人が、「社会主義サラダ」といしいさんが名づけるにいたる、しなびたキャベツの千切りとトマトとキュウリだけのサラダを食べて何日も旅行する様子が愉快です。

というわけで、続編の京都編が回ってきましたので、また読み続けることとします。


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tag: 坂木司 
  1. 2014/06/22(日) 22:00:01|
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