本と旅とそれから 政と源/三浦しをん

本と旅とそれから

政と源/三浦しをん

久しぶりの三浦しをんさん♪
新刊が出たら必ず読もうと決めている、大好きな作家さんのひとりです――というか、目下は一番好きな作家さんと言ってよいかな。
などと言いつつ、買わずに図書館で借りているし、情報収集ものんびりしているものですから、「新刊が出る→出たことを知って、図書館で予約を入れる→貸出しの順番が回ってくる」で、今回などは10か月も経っているのでした^^;。
「まほろ」の新刊も、もうちょっとで貸出し順が来るんだけどな~。
「政と源」

政と源/三浦しをん(集英社)

世は高齢化社会。
先日読んだ有川浩さんの「三匹のおっさん」(感想文は►コチラ)などもそうですが、小説の主人公にも、もしかすると今後シルバー世代が増えていくのかも知れません。
今回の主人公二人・政こと国政と源こと源二郎は、幼なじみの同い年、すなわち73歳。押しも押されぬ高齢者。


舞台は東京の下町、Y町。
Y町ってどこだろう、と、今ちょろっと地図を見てみましたが、作中の地理的な説明から考えて・・・葛飾区四つ木あたり・・・?土地勘が全然ないエリアなのでよくわかりませんが。運河、というか水路が町のあちこちに通っていて、今でも小船を持っている人(源二郎も持っている)は、それを日常の交通手段としてよく使う――まるで時代劇のようなシチュエーションですが、そんなところが今日でもあるんですねぇ。素敵です。

幼なじみの長い付き合いではあるものの、二人の境遇も性格も大きく違います。
国政は大学出の元銀行マンですが、現在はリタイアして無職。見合い結婚し娘二人があるものの、その娘たちは独立し、さらにあろうことか妻までもが、国政に愛想をつかし、彼をひとりY町に残して現在は長女と同居中。性格は、お固いというか融通がきかないというか、飛べないタイプ。常識派といってもよいかも。片や源二郎は「つまみ簪(かんざし)」という伝統工芸の職人。恋女房を若くして亡くし、子供もない身の上ですが、仕事は今も現役バリバリ、彼を信奉する若い徹平という弟子を鍛える毎日。性格は・・・破天荒てか。元気というか。残り少なくなった髪を、徹平の彼女・美容師のマミちゃんに、様々なビビッド・カラーに染めてもらってます。

国政自身が、幼なじみでもなかったらコイツと友だちにはならなかっただろうな、と思う二人。

物語の視点は国政の方です。
若く、仕事に熱中していた頃は、型破りな源二郎の生き方を軽く下に見ていた感がなくもない国政なのですが、年をとって家族に見放され、ひとり暮らしをするようになってみると、いまだ現役で、若者と賑やかな毎日をおくる源二郎に引け目や羨望を感じている彼。

終盤、徹平とマミちゃんが結婚することになり、その仲人を頼まれてしまった国政。源二郎は奥さんを亡くしているので、「仲人は夫婦がするもの」という条件が満たせないのですね。
身近に接する気のいい若者たちの幸せのためにも、何とか別居中の妻に出て来てもらわねばならない。そのために国政は勇気を奮って行動を起こすのですが――。

別居中の妻を説得すべく、国政が長女夫婦の家を訪れるくだりは、すごいリアリティー。読んでいて、その場の気まずさや居心地の悪さがビンビン伝わってきて、こちらまでいたたまれない気分になります。
しかし、徹平たちのために何とか役に立ちたいという国政の心情のいじらしいこと。そのために、何とか妻に協力してもらおうと毎日手紙を書くという戦略を思いつき、実行する国政の可愛らしいこと。
こんな愛すべき心根の人が、何で家族に見放されてしまいますかねぇ。

高齢者が主人公ということで、「死」というテーマも語られます。
源二郎が、死んだら人は親しいひとの記憶のなかに入っていくのじゃないだろうか、というのを聞いて、国政が考えたこと。

いつか、と国政は夢想する。いつか、記憶のなかのおまえから無線が入り、いまから小船で迎えにいくと言ってもらえたなら。二人で一緒に小船に乗って、だれかの、たとえば徹平の、記憶のなかへと水路を流れていけたなら。
国政の生と死は、このうえなく幸せなものになるだろう。
 

しんみりさせられる一節です。
国政も源二郎も、ともに自分の方が相手より長生きするという前提で語り合うというのが笑えますが。
高齢化社会というのは、高齢者自身にとってはもちろん、その中で生きる若者にとっても、死ぬ、死別する、ということを身近に感じざるをえない環境ということですね。

有川さんの描くおっさんたちは、基本的に元気でコミカル。読んでいて楽しいけれど、リアリティーという点では欠けていると言えるでしょう。物語も、予定調和の色彩が強い。
三浦さんの描く、もう少し年齢が上の二人のおじいさんたちは、まあこちらも、コントラストを強めに描かれているとはいえますが、もう少し細やかに心もちが描かれていて、より現実寄りだと思います。
どちらも、若い世代の女性が描く、高齢男性の愛すべき姿、と言えるでしょうか。


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tag: 三浦しをん 
  1. 2014/07/10(木) 22:00:01|
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