本と旅とそれから すえずえ/畠中恵

本と旅とそれから

すえずえ/畠中恵

しゃばけシリーズ第13弾(たぶん)。
すえずえ――つまり、この先の時、の、こと。
このひとつ前の「たぶんねこ」(感想文は►コチラ)を読んだときにも感じた(忘れていたけど、さっき自分で書いた感想文を読んで思い出しました)、時が過ぎることによる大切な人との別れという切ない問題とどう向き合うか。その問いに、ひとつの回答が示される・・・ような。
「すえずえ」

すえずえ/畠中恵(新潮社)

ところで、本書ではついに、若だんなが婚約します。をを。
婚約相手は――ネタバレは避けますが、長崎屋の人間にも妖にも理想的な女性です。
なんとなく、「しゃばけ」は「サザエさん」や「ちびまるこちゃん」と同じように、いつまでたっても登場人物たちは年をとることなく物語が続いていくような気がしていました。でも、そうではなかったんですね。
本の出版ペース、つまり私たちの世界で時間の過ぎるペースと登場人物たちの年とるペースが同じかどうかはわかりませんが。


若だんなが嫁を迎えることになったら、これまでのように、離れで妖たちにわらわらと囲まれて暮らしていくことはできないだろう、さらにいえば、とてつもなく長命(あるいは不死?)な妖たちと違い、人間には寿命というものがある。そしてそれは妖たちから見れば一瞬にも思えるほどに短い。つまり、妖たちは、彼らから見ればそう遠くない将来、若だんなと死別することになる。若だんなをこよなく愛する彼らは、その別れとまっすぐ向き合うことができるのか?

物語の現在時点ではまだまだ非常に若い(もしかしてまだ二十歳前?)若だんなの方が年老いて先に死ぬ、という状況は想像し難いものがありますが、理屈ではそうなります。
そして、愛する者を時の経過によって失う寂しさ、悲しさ、そしてそれとどう向き合うかということは、現実の高齢化社会において、いまやどこにでも見られる問題となりました。

この問題をつきつけられた妖の兄や・仁吉が、悩んだ末に導き出した答えは、「正しい答えが本当に正しいかどうかを今見極めることはできない。だから、正しいと思うことより、やりたいと思うことを選ぶ」というもの。
その答えを出すに先立って仁吉は、ひとつのオプションを示されます。それは、若だんなとの死別というやむを得ぬ事態に直面することになる前に、今もう若だんなと別れて別々に生きていくことにする、というもの。仁吉の愛するおぎん様が、そのために仁吉が帰る場を用意してくれるというのです。

そうすれば、いずれ若だんなが死んでしまう時がきても、それへ向けて心の準備をすることができるし、あらかじめ距離をおいておけば、いざという時のショックが和らげられることだろう、というのですね。
・・・うぅ~む、これって、妖の兄やと人間の若だんなという形を借りて、現実の「死別」を巡る非常につらい問題を取り扱っています。

自分自身や周囲の人々の年齢が上がってくるにつれ、私自身も始終この問題は考えさせられていますもの・・・。そしておそらく、そうした状況にあるのは、私だけでなくほかの多くの人も同様であり、おそらくおそらく、畠中さんご自身もそのひとりではないかと思うのでした。
最近は、この問題を様々な形で扱った小説にあれこれ遭遇しますしねー。

つまるところ、仁吉の考えたように、いざという時大丈夫かどうか、今見極めることなどできません。だから、今やりたいように今を過ごす、ということに、結局はなってしまうのでしょう。将来に備えるために現在を犠牲にすることはできない、というわけですね。
・・・うん。私もそれに同意するし、多くの人がすることでしょう。中には、とても計画的で、現在を「犠牲」にするという感覚は持たずに、でも今から将来の「その時」に備えて準備・行動できる人というのもいるのでしょうけれど。

私はそこまで計画的には到底なれないわ~。
夏休みの宿題は、9月1日に頑張るタイプです。頑張って、それで大抵、満足いく出来にはなりゃしませんが、そうなることをよーっくよく予想していても、でも夏休みはぐーたら過ごしてしまうんです。9月1日に、「ああ、こんなに苦労することになるんなら、もっと夏休み中に頑張っておくんだった」と、何度でも後悔したものです。学ばない。

万物を知り、賢きことこのうえもない白沢という妖の仁吉が、結局ワタシと似たような答えを出すことになるとは。単にぐーたらで現実逃避なだけのワタシとは違うって気もしますが――いや、結局同じさ。
とりあえず、今、ってことで。

「しゃばけ」シリーズにしては、長い感想文を書く気になった本書なのでした。


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tag: 畠中恵 しゃばけシリーズ 
  1. 2014/10/19(日) 22:00:01|
  2. 2014
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「すえずえ」畠中恵

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  1. 2016/10/04(火) 11:35:49 |
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コメント

いつ読んでもお話の中に入れて面白いです。
ずっとシリーズの次の巻を期待しています。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
  1. 2016/10/04(火) 11:45:48 |
  2. URL |
  3. 藍色 #-
  4. [ 編集 ]

藍色さん、

最新刊、予約を入れていますけど、いつ回ってくるでしょうか・・・。
永遠の「若」だんな、いつまでたっても病弱ですねー。
  1. 2016/10/07(金) 22:14:14 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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