本と旅とそれから 空飛ぶタイヤ/池井戸潤

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空飛ぶタイヤ/池井戸潤

面白かった~~!
物語の発端となるトラックのタイヤ脱落による死傷事故が、実際に起きたものをモデルにしているので、「面白い」と言うのが憚られる思いもありますが、でもやっぱりこの小説は「エンターテイメント小説」ということなので、そのように楽しみました。

ほんっと、力作。
池井戸さんの直木賞受賞作は「下町ロケット」(感想文は►コチラ)で、これも大変楽しませて頂きましたが、読み手を物語に引き込む力の強さという点では、私は本作の方がずっと上のように思いました。
「空飛ぶタイヤ」

空飛ぶタイヤ(上)(下)/池井戸潤(講談社文庫)

と書いて、リンクを貼りついでに自分で書いた「下町ロケット」の感想文を読み直してみましたけど、んー、「下町ロケット」は「ロケット」で、結構感動してるんですねえ、ワタシ。読んだ直後なので「タイヤ」の方がかなり上、みたいな気がしているけれど、実際のところはどちらも感動作なのかな。

2002年に起きたという、あの事件は衝撃的でした。走っていた大型トラックから突如タイヤが脱落し、歩道を歩いていた母子を直撃、母親が亡くなったという。
ですが、実際に起きたその事件の続報を私はどのように聞いたのだったか、考えてみても思い出せないのです。ただその後、事故を起こしたトラックを製造した三菱ふそうが何度かニュースで取り上げられ、何か不祥事をしでかしたということだったな、という程度の記憶はありました――というか、その程度の記憶しかなかった、といいますか。

ただ道を歩いていただけなのに、突然巨大なタイヤが後ろから猛スピードでぶつかって来て死に至らしめられる・・・。詳細は忘れても、そのことの衝撃は覚えていました。
本作はノンフィクションではないのですが、この事故のことを記憶している人間にとっては、ノンフィクションではないのかと思えてならないフィクションでした。

小説では、このショッキングな事故を発端に、そのトラックを使用していた赤松運送が整備不良の責任を問われ、経営的にも社会的にも窮地に追い込まれていきます。主人公はその赤松運送の社長。最初こそ、自社の整備士のミスを疑った彼でしたが、その後その整備士がしっかりと仕事をしていたことを確認してからは、ならばなぜ事故は起きたかと考え、やがて三菱・・・じゃなかった、ホープ自動車という財閥系の大企業との戦いに挑んでいきます。

まあ、山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」と同様、誰が読んでも「あの企業のこと言ってるんだな」とわかる書き方になっています。ちなみに、後半登場する、「はるな銀行」って、りそなのことかしら。名前だけからいうと、たぶん。

にしても、感想文を書くにあたって、私自身のスタンスが何とも中途半端。
本書がフィクションであるとするならば、それを読んで「三菱(ホープ)ってひどい!」と怒るのもマヌケな感じがするんですよねえ。ただ、この事件を含め、数多くの死傷事故が起きていて、三菱が自社のトラックの構造欠陥を知りながら、リコール隠しをしたというのは、事実なわけです。
このタイヤの脱落事件も悲劇でしたが、さっきついでにウィキで読んだ(►コチラ)「山口トラック運転手死亡事故」というのも恐ろしい事故だったのですね(一部「要出典」となっていましたものの)。
なのでまあ、三菱と言わずにホープって言っておきますか。財閥グループ企業のひとつってことで。

「ロケット」もそうでしたが、小さな会社が巨大企業を相手に戦う、という構図は、判官びいきの日本人(古いかしら~)にはたまらないもの。どうしたって応援せずにはいられません。
しかも、この赤松運送は、事故以降、次から次へと、これでもかというくらいの苦難に見舞われます。社長・赤松は子供の小学校でまで、事件のせいで苦境に立たされるのでした。

大企業も、小学校も、イヤな人間やズルい人間がいることに変わりはないのですねえ。
そして、誠実な人間、事実を冷静に判断できる人間がいるということにも変わりはない。
池井戸さんの性善説的姿勢のおかげで、前者が大声で騒ぎ、幅を利かせる大企業や小学校でも、最後には後者が静かな勝利をおさめるのでした。

そう。赤松運送が怒涛の不運に見舞われる最初のうちは、読んでいて少々つらいものがありました。ひとりの人間の肩に、どれほどの重荷を負わせたら気がすむのだ!と、いう感じでしたが、それでも、池井戸さんの小説ならば最後には正義が勝つはずだ、と信じて読む。そして最後に正義が勝つ。

ちょっとひねくれた言い方をするなら、それだから「エンターテイメント小説」ってことなのでしょうか。正しい者がひどい目に遭い、いじめられ、悪い者が大きな顔をして、そのまま話が終わってしまったら読み終わってちっとも楽しくないですから。たとえリアリティに欠けると言われようとも、耐えに耐えた正義の主人公が、最後に勝って、スカッとした啖呵をきって終わる。やっぱそうでなくちゃ。

正直に言うと、途中、かなりのすっ飛ばし読みになってしまったところがありました。その理由は、一刻も早く先が知りたいから。というか、この物語は途中何度も大きな山や谷があり、主人公が大きな期待を抱いたけれどそれが裏切られるというパターンが何度か繰り返されるのです。そうなることがバレバレなので、裏切られると(読み手には)わかっている期待に主人公が胸をふくらませる部分を、ゆっくり読んでいられなかったんです。「どーせダメなんだから、ぬか喜びの話を延々読ませないで」みないな気がしちゃって、で、すっ飛ばし^^;。

そうして何度か絶望のどん底にたたき込まれた後、ようやく最後に主人公の逆転ホームラン。
それを可能にしたのは、三菱・・・じゃなくて、ホープが自らの内に飼っていた社員の内部告発でした。

ホープは、自動車もあるけれど銀行その他を擁する企業グループなので、ホープ銀行というのも出てきます。事故で過失を疑われた赤松運送に非情な仕打ちをしかけるホープ銀行の赤松担当支店。そんな赤松の窮状を救ったのが、都銀としては下位のはるな銀行。この辺の「はるな」の担当者の姿は、「かばん屋の相続」(感想文は►コチラ)に出てきた小さな信用金庫の行員を思い出させます。大銀行の傲慢さとは対照的な、顧客に親身になる小さな銀行(まあ、りそな、じゃない、はるなはそうはいっても都銀だけれど)。銀行とはかくあって欲しい、という姿です。

それにしても、とうとうホープ自動車に警察の家宅捜索が入ったというニュースをTVで知って、泣きながら勝利を喜び合う赤松運送社長室のシーンでは、うるうるしてしまいました。こうしたシーンがあるだろうことは最初から予想できたにもかかわらず、やっぱり涙してしまいます。
上手いこと池井戸さんに泣かされたという口惜しさに、「人を泣かせることは易しいが、笑わせることは難しいってハナシだわよ」と思ってみたり。ホント、まんまとやられた感じです。


webcitron01.gif


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  1. 2015/02/01(日) 22:00:01|
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