本と旅とそれから 営繕かるかや怪異譚/小野不由美

本と旅とそれから

営繕かるかや怪異譚/小野不由美

「十二国記」を愛するあまり忘れそうになりますが(にしても、続編の長編が出るって話はどうなったんですか、新潮社!)、小野不由美さんって怪談話作品の方が多いんですよね。最近作の「鬼談百景」(感想文は►コチラ)や「残穢」(感想文は►コチラ)などは、かなり怖かったです。そして何といいますか、今あらためて思うと「生臭い」とでも言いたいような怖い話でした。

それに比べて本作は、怖さの点では少し下がるものの、もっと爽やかな・・・というか、古い町の雨や風が感じられるような物語でした。
「営繕かるかや怪異譚」

営繕かるかや怪異譚/小野不由美(角川書店)

「かるかや」という営繕屋を共通項に、どこかの古い城下町に起こる怪異を描いた6篇から成る短編集。
最初の一篇が町屋を舞台にした怪異譚なので、すぐ「京都?」と思いましたが、河口に位置する小さな城下町ということなので、京都ではありませんね。モデルになる町があるのか、あるいはまったく架空の場所なのか。
いずれにしても、古い家の多く残る、静かなところのようです。


それにしても、営繕あるいは営繕屋という言葉、この歳になるまでワタクシ知りませんでした(T_T)。
家を営造、修繕する業務のことなので、大工業、工務店と同義なのだと思いますが。「営繕かるかや」とは、なんと古風な響きでしょう。

この「かるかや」は、おそらくふつうの営繕もするのでしょうが、その専門(?)は、怪異への対処。
事業主はまだ若い男性(名前は尾端)なのですが、怪異についての造詣が深く、不可解な現象に怯え、悩むこの町の住人たちを助けます。

「鬼談百景」の関連で広く収集された様々な怪談をベースに紡がれたのではと思われる物語。古い家に引っ越してきたら、何かがいる。雨の降る日になると袋小路で喪服の女性を見かける。押し入れの扉や風呂のフタを開けると、中におじいさんがいる。

そんな状況に遭遇したした人の気持ちを考えてみると、やっぱり、怪異の正体がわからないというのが一番怖いことでしょうね・・・。
物語によって、怪異の正体がある程度はっきり突き止められる場合と、よくわからぬままの場合とありますが、とにかく気味が悪い、夜が来るのが怖い、雨が降るのが怖いと、当事者たちは少しずつ恐れを募らせ、追いつめられていきます。引越せばよいようなものですが、諸事情あってそうできないのが彼らの困った点なのです。

そんな彼らのもとにやって来るのが尾端氏。営繕屋さんです。事情を聞き、家を検分すると、彼はどうすれば怪異から逃れることができるかを、大工さんの観点からアドバイスし、解決してくれます。
ああ、なんと心強い。
古い町には、このテの技術者がひとりはいてくれないと困ってしまいますよね~。

「雨の鈴」という一篇は、ある路地の奥にある家に引っ越してきた若い女性が遭遇する怪異のお話。
雨の日というと、露地のそこここに喪服姿の女性が姿を見せる。どうやらその女性、この世のものではないらしい。気味が悪いので事情を聞き込んでみると、その女性が訪れた家では死人が出るという。
主人公の友人がかつてその路地の別の家に住んでいて、実際に喪服の女性が来た翌日に母を亡くした経験を持っているのです。人死にの話を知っていた友人とその母は恐怖にかられ、喪服の女性が来た翌日は家に閉じこもって過ごすのですが、それでも母は心筋梗塞で死んでしまったというのです。
そしてどうやら、次に雨が降れば、その喪服の女性は主人公の家にやって来そうだ・・・。

まるで、梅雨寒の日の冷えた空気のようにじわ~っと冷たいものを感じる話ですが、同時に、古い町の古い路地の趣が美しくもあります。雨降る日の暗さに満ちているのに、どこか明るさを感じさせるところもあります。おそらく、最後には「かるかや」がやって来て救ってくれるという確信があるからでしょう。これが最後に主人公が死んでしまって終わるかもと思ったら、私のような読み手はあまり楽しめないような気がします。

怖い・・・けど、重くない。暗いけど、暗すぎない。ときどき、涼やかだったり、ほっとしたりも。
こんな怪談集はステキだなぁ。たぶんまだ続きが出そうなので楽しみです。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)

関連記事
tag: 小野不由美 
  1. 2015/02/21(土) 22:00:01|
  2. 2015
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1821-2cf9df59
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する