本と旅とそれから パンドラ・アイランド/大沢在昌

本と旅とそれから

パンドラ・アイランド/大沢在昌

面白かった~。ひたすらエンターテイメントとして楽しみました。
物語は殺人事件を巡るものなんだけど、巧妙に作り上げられているので、どんよりしたイヤな感じはなくて、人殺しも麻薬もヤクザも、ただワクワクと読むことができました。

大沢在昌さんといえば、私は新宿鮫のシリーズしか読んだことがなく、あのシリーズのあとでは、ほかはきっと見劣りするだろうなどと思っていましたが、そんなことなかったわー。
「パンドラ・アイランド」

パンドラ・アイランド(上)(下)/大沢在昌
(集英社文庫)


物語の舞台は架空の離島・青國島。小笠原の母島から高速船で1時間半の距離にあり、空港はなし。住民の数は九百人ちょっと。そんなところに新しく「保安官」として赴任してきた高洲という男が主人公です。


キャラクター的には、この高洲保安官は新宿鮫と似た感じです。正義感が強く、ストイックで世渡りは巧いとはいえず、男前。もともとは警視庁の捜査一課に在籍したこともあるかなり優秀な刑事。それが、警察官は自分には向かないと思い至り退職し、のんびりできるだろうと離島の保安官になったところが、赴任したとたんに島に次々と事件が起こる――。

外界との行き来が著しく制限された離島が舞台、というのが私好みの舞台設定♪
島内の地理的な状況も、そこに暮らす人々の状況も、掘れば掘るほどあれこれ出てくるといったふうで、ひたすら謎めいています。といっても、たとえば横溝正史さんの「獄門島」や小野不由美さんの「黒祠の島」(感想文は►コチラ)のように、その島に古~くから暮らす人々とか伝承とかが出てくるわけではありません。何しろ小笠原なので、戦後何年も経ってから日本に返還された島で、歴史らしい歴史は、すべて戦後に始まるというところなのです。

それでも、島という閉鎖的な場所に暮らす住民たちの間には、排他的な結びつきもあれば、新参者には知らされない秘密もある。そんな状況で、高洲は保安官という中途半端な立場で「島民の安全を守る」という任務を全うしようと奮闘します。保安官というのは青國村によって任命された一地方公務員であり、警察官のような司法権力はないのです。銃を持ち歩くこともできないし、怪しい人物への訊問も簡単にはいかない。

そんな島で、老人の水死体が見つかり、放火事件が起き、次にはとうとう明らかな殺人事件が起きる。さすがにその時点で警視庁から警察官のグループがやって来て捜査を始めますが、そうなると高洲保安官は今度は、警察の仲間のようでもあり、島民のひとりでもある、といった、これまた中途半端な立場に身を置くことになるのでした。

舞台装置もいろいろあるんです。
島の奥にある鍾乳洞とか。一日二日は晴れないという、車の運転すら危なくするような濃霧とか。あちこちで人々が口にする「島の隠された財産」とか。それはどうやら、島がアメリカ軍に占領されていた頃に作られたコカインらしいのですが、それは本当にあるのかどうか定かではなく・・・。etc, etc。

話の大半が夜や濃霧、鍾乳洞の中などで展開するので、見通しがきかないことからくる、何ともいえない不気味な雰囲気がうひひと怖い。あのヒト殺されてしまうのでは、と思ったらやっぱり殺されたり。
その一方で、南の島らしい開放的な明るさみたいなものも、あるといえばあるんですよね・・・。港近くのカフェでスパゲッティ食べるところなんかは(まだあれこれ人が死ぬ前のシーンではありますが)、海の香りと波の音にくつろぎを感じたりも。

警察官ではない保安官が主人公ですが、彼が元警察官ということで、新宿鮫同様、本書も警察小説ということになるらしいのですが、同時に推理小説の色彩も強い物語でした。犯人が誰なのか、については、明かされてみると軽い意外性もなくはなく、そこも楽しかった。
文庫で上下巻でそこそこの長編というのも私好み。それにやっぱり、人気作家さんの文章というのは読みやすい。読み手がかなりぼんやりしていても、ちゃんと情景が思い浮かぶくらいに読めます。まあ、推理小説なので、あのヒトが実はどういう人物で、あの時間にあそこにいたと思ったら実は、といったような話は、あとでこんがらがったりしますケド^^;。

大沢作品も、またほかに何か読みたいなと思いました。


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tag: 大沢在昌 
  1. 2015/05/31(日) 22:00:00|
  2. 2015
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