本と旅とそれから 鉄の骨/池井戸潤

本と旅とそれから

鉄の骨/池井戸潤

昨年末から、ちょっと続けて池井戸潤さんを読んでいます。近いうちに、今読んでいる最新刊を読了して感想文を書くつもりの、半沢直樹シリーズ。その途中で、こちらも読みました。
本書は、珍しく弟が「池井戸潤さんといえば『鉄の骨』が面白いよー」と、主張していたので興味を持ちました。通常、弟とは読む本の好みが少々ズレるのですが、池井戸さんは珍しく重なりました。

鉄の骨

鉄の骨/池井戸潤(講談社文庫)

ゼネコンと談合。本書は、実際に起きた、名古屋市の地下鉄工事の談合事件をモデルにしているのだとか。それに、この小説はNHKでドラマ化されていたんですね。知らなかった。ちょっと見てみたいわ・・・。
でも、ドラマについての情報を見てみると、談合に関わったゼネコンの名前が、原作と違っています――原作の各社の社名は、ちょっと実在の会社名を連想させるんですよね。主人公・平太の働く会社は一松組というのですが、西松建設がモデルなのかしら、とか思ってしまうし。調べていないし、そうなのかどうかわかりませんけど。


これまで読んだ池井戸作品同様、大変楽しめる1冊ではありますが、気のせいか、いわゆるルースエンドが多く残ったような。と書いて、念のためと思ってググってみたところ――「ルースエンド」って、普通には使いませんか?ワタシ的には、小説などの、張られておきながら結末が付けられることなく残された伏線、って感じの言葉なんですが・・・。

むむ。ま、とにかく、つまり、たとえば、主人公・平太に強い印象を残した大物フィクサー・三橋萬造のその後とか。同じく、一松組の尾形常務のその後とか。それに、一松組と、そのメインバンク・白水銀行にその後どんなやり取りがあったかも、知りたいところでした。一松組は結局工事を落札するわけだけれど、その成功のためには銀行からの融資が不可欠なんだし。いつもエラそーにしていた銀行は、一松組が工事を取ったことで、少しは態度を改めたのかしら。

これまで読んだ池井戸さんの長編って、多少の予定調和感はあっても、勧善懲悪的な爽快感を感じるシーンがいくつもあったのですが。「鉄の骨」は、特にそういうシーンがなかった――まあ、大手ゼネコンの役員たちが、一松組(大手じゃなく中堅)のヒラ社員である平太相手に傲慢に振る舞っていたのを、三橋萬造にピシリと言われてメンツをつぶす、なんて場面は「オラみろ、ボケ!」と、心の中で叫んでましたが、ワタシ。でも、そのくらいはあまり大きなシーンというわけではなく、そもそも作品全体の結末が、ちょっとモヤモヤした感覚の残るものになっているのですよね・・・。

それにしても、本書を読んだあとで、先日の新国立競技場のずさんな建設計画やその撤回騒動を思い出すと、とても同じゼネコンのやってることとは思えない~。「鉄の骨」には、ギリギリまでコストを削って入札に勝利すべく、一松組の社員たちが徹夜を重ねて努力する姿が描かれています。どんなにつらくても、職場に一体感があって、上司や先輩が自分を助け、育ててくれようとしていると感じられれば、ワカモノは頑張れるということなのでした。

そして、すっきりした結末を見ぬまま、平太はまた現場に戻って行くわけですが――すっきりしない方が、リアルといえばそうなのかも。勧善懲悪型のハッピーエンドというのは、読んで楽しいエンターテイメントではありますが、心のどこかに、「現実ではこうはいかないよね」って思いがありますからね。でも、そっちの方が読んでいて楽しいんですってばー。


webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)



関連記事
tag: 池井戸潤 
  1. 2016/02/20(土) 22:00:00|
  2. 2016
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1864-f126676e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する