本と旅とそれから だれもが知ってる小さな国/有川浩

本と旅とそれから

だれもが知ってる小さな国/有川浩

この本が出版された頃(2015年10月)、朝日新聞で有川さんのインタビュー記事を見かけた記憶があります。内容はほとんど忘れてしまいましたが(またしても^^;)、有川さんが佐藤さとるさんのコロボックルシリーズへの愛を熱く語っておられたことは印象に残っています。

その愛を形にしたのが本書、ということでしょう。
誰もが知ってる小さな国

だれもが知ってる小さな国/有川浩(講談社)

佐藤さとるさんのコロボックルの物語――第1巻「だれも知らない小さな国」が出版されたのは、1959年なんですね。私があの本を始めて読んだのが何歳のときのことだったか、よくは覚えていませんが、手に取ったとき、自分がそれまで読んでいた子供の本と比べて字が小さくて、自分より少し年上の子供向けの本なのじゃないかと、ちょっと身構えたことを覚えています。


そうして私もコロボックルと出会い、有川さんや、本書に登場する大人や子供たちに負けないくらいコロボックルとその物語が大好きになって、はや幾星霜。何度か処分しようと思ったことがありながら、佐藤さとるさんの作品全集は、もう何十年も私の本棚のなかなかよい場所を占め続けています。
そんな話を、ずい分前にブログに書きましたっけ(►コチラ)。

あの物語こそが、昔も今も、日本の最高のファンタジー作品だと、固く信じています。

という具合に、おそらく本書を読んで感想文を書く人のほとんどが、佐藤さとるさんの「だれも知らない小さな国」とそのシリーズへの愛を語ることになるのじゃないかと思うのです。それを読まずに本書を読む人も中にはいるでしょうが、作中にこれだけ「だれも知らない」について言及されているのですから、順番は逆になるわけですが、本書に続いて「だれも知らない」を読むことになるのではないでしょうか。

「だれもが知ってる」は、言うまでもなく、「だれも知らない」がなければ成立しない物語です。「だれも知らない」を読んでから本書を読んでくれと、言っているも同然の物語展開かと思います。そして、「だれもが知ってる」を楽しめる人なら「だれも知らない」はその何倍も楽しめること間違いなしだし、「だれも知らない」を楽しんだ経験がある方が、「だれもが知ってる」をより大いに楽しめることもまた間違いないと思います。

本書「だれもが知ってる小さな国」は、養蜂業を営む家に生まれたヒコという名の少年と、同じく養蜂家の親を持つヒメという名の少女を中心に、彼らがコロボックルと出会い、その存在の秘密を固く守りつつ、年月を過ごしていく物語です。
そして物語世界にはやはり、佐藤さとるさんの「だれも知らない小さな国」とその続編の本が存在し、それがあたかも宝のありかを知らせる地図のごとく、ヒコとヒメを、コロボックルの世界へと導いてくれるのでした。

佐藤さんの物語を読んで、コロボックルは本当にいるのじゃないだろうか、自分が気づいていないだけなのではないか、と思った人は多いと思う…。それを真面目に語ると、精神年齢の幼い人間と思われそうなので口にはしないけれど、でも、「もしかすると」という思いを捨てきれない人は実はたくさんいるんじゃないかしら。そして、信じ続けていたら、いつか小さな人たちが、自分の前にも姿を見せてくれるかも、といった思いを、心の片隅にとどめている人たちに、その願いがかなうとしたら、これがそのひとつの形なのだと見せてくれるのが本書だと思います。

本書に綴られた物語には、心温まる感動を覚えます。ですが、本書が呼び起こす感動というのは、佐藤さとるさんのコロボックル物語を読んで抱いた感動を再び思い出させるものであり、またそれを読んだ頃に思いをはせるノスタルジーでもあり、また、こうしてひとつの物語を作り上げた有川さんがコロボックル物語に寄せる熱い思いを知って、ここにもコロボックルを愛する同胞がいたな、と思う喜びでもあります。多重なんだな、感動が。

巻末に短い文章を寄せておられる佐藤さとるさん、今年で88歳になられるとか。
どうぞいつまでもお元気で。

webcitron01.gif


My Favorite Books(お気に入りの本のブクログ)
BOOKS INDEX(作家別感想文一覧)


関連記事
tag: 有川浩 
  1. 2016/04/25(月) 22:00:01|
  2. 2016
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

トラックバック

トラックバック URL
http://lazymiki.blog110.fc2.com/tb.php/1887-f43116d9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する