本と旅とそれから ナミヤ雑貨店の奇跡/東野圭吾

本と旅とそれから

ナミヤ雑貨店の奇跡/東野圭吾

図書館とアマゾンばかり利用していて、書店というものに入ることがほとんどなくなっている最近。たま~に立ち寄ると、平積みになっている新刊書の、あれもこれも読んでみたい気になります。書名を覚えておいてあとで図書館で予約するわけですが、何冊も覚えたつもりで、あとで思い出そうとすると、1冊も(!)出てこなかったりするのよね。それに、出版されたばかりのホントの新刊だと、図書館にはまだ入っていなかったりするし。

そんなこんなで、ときどきやるのは(誰でもすることかも)、好きな作家さんの名前と出版年を組み合わせて図書館のデータベースで検索をかけ、出てきた本を予約するという方法。
…ふつうですね。たぶん。
ナミヤ雑貨店の奇跡

ナミヤ雑貨店の奇跡/東野圭吾(角川文庫)

この東野さんの本は、ガリレオシリーズの新刊を検索していたら出てきた1冊。文庫本なのが何よりグッド。うちの図書館は、東野さんの本は書棚に並んでいないのです――盗難に遭うようなのですねえ。こんなこと、東野さんだけだと思いますが…。

これ、書店でも以前見かけた気がする…感動で泣ける、とあったような?

舞台は、とある住宅街の高台にある小さな雑貨店。「ナミヤ」雑貨店というのですが、その名前にひっかけて、店主のおじさんが、近所の子供たちの半ばふざけた「ナヤミ」に返事を書き、店表に貼り出すようになります。それがそのうち、子供だけでなく大人までもが真剣な悩みを相談するようになるのでした。
やがて年月を経て店主は亡くなり、店は閉店、しかしたてものはそのまま残ります。そこにある晩、ある家で泥棒を働いた後の若者3人が入り込みます。朝になるまでここに潜み、明るくなったら逃げようと考えていた3人ですが、ふと、店のシャッターの郵便口から投げ入れられた封筒に気付きます。開けてみるとそれは悩み相談の手紙でした。しかも半世紀も昔に書かれたものなのでした――。

全部で5つの中編から成る1冊ですが、すべてこのナミヤ雑貨店に悩み相談を寄せた人々の物語です。最初のうちは、それぞれの物語と雑貨店がつながっているだけかと思わせますが、しだいに、1対1の単純な結びつきなのではなく、それぞれの物語の登場人物たちが、複雑に関連していることが明らかになっていきます。

そして本書の一番の特徴が、タイムスリップ要素。「今」を生きる3人の若者たち(泥棒)が、なりゆきで「過去」から寄せられた悩みに返事を書き、それがまた過去に届く。
いわば、過去との文通状態になるわけで、うぅ~む、まさにジャック・フィニイですねえ。

こうした時間を行き来する物語を読んでいて、最後にきっちりすべての伏線が始末されていると、「巧みだなぁ」と感心します。具体的に作品名が思い出せないけど…うーん、ハリポタの「アズカバン」とか?あとは、タイムスリップものではありませんが、恩田さんの「ドミノ」(感想文は►コチラ)なども、よく似た、「上手く作り上げられた物語」という感じがしたなと記憶しています。

悩みを寄せた人々には、それぞれ感動的な物語があるのですが、ただ、中のひとつにちょっと違和感をおぼえました。それは、ある中学生の男の子の話。彼の父は事業に失敗し、一家は夜逃げすることになります。息子である彼はそれがイヤで雑貨店に相談を寄せる。店主の答えは「家族は一緒にいるのが一番。だから親御さんと一緒に行きなさい」というものでした。当日、彼は両親と一緒に家を出るものの、途中で逃げ出してしまいます。そして以来、身元を語らず、施設で育ち、手に職をつけてひとかどの人間に成長するのでした。

雑貨店のアドバイスになんか従わなくてよかった、おかげで今自分は幸せに暮らしている――そう思っていた彼でしたが、何十年も経ってある日、ふとしたことからその後の両親の運命を知ることになります。二人はあの夜、息子がいなくなった後、心中して亡くなっていたのでした。
子供の目からは、自分勝手で子供のことなど考えていないように見えた親だったけれど、やっぱり子供が何より大切だったのだ、自分が逃げたことで、もう両親は生きていく力を失ってしまったのだと、そのとき彼は知る。

これって…すごいショックだと思うんですけど。
彼が殺した、とまでは言わないけれど、彼が逃げることさえなかったら…でしょー。
罪の意識に打ちのめされて、その後巡礼の旅に出ました、とでもいうならともかく、彼は静かに目を閉じて両親の冥福を祈った、で物語は終わるのです。

まあ…40年後という設定ではあるけれど。大方の出来事は、40年という歳月が経てば、インパクトは薄れるのかも知れません。この少年は、その後自分の素性について一切口にすることなく成長し、まったくの別人として人生をおくったということなので、そちらの方の苦労もハンパじゃなかったんでしょう。
周囲は、彼が何も語らないもので、記憶を失っているのだろうと思っているのですが、事実はそうじゃないわけで――まあ、フィクションだから…現実にはあり得んだろーって感じですよね。幼児や高齢者ならともかく、高校生ですからねえ。

ま、ともかく。

過去からの手紙。過去への手紙。それが本当に届くなら、人は誰にどんな思いを綴るのでしょうか。どれほど思ってもそれが実際にかなうことはないので、それを描いた物語はどうにも切ない。
まあ、「感動で泣く」ほどではないと思いますが、ホロリとした気分にはさせられます。


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  1. 2016/07/08(金) 22:00:00|
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