本と旅とそれから あの家に暮らす四人の女/三浦しをん

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あの家に暮らす四人の女/三浦しをん

こことのところ、もっぱら本読みブログとなってます。
ときおり、「あんなブログ、こんなブログにしたい」といった妄想にふけることもありますが、少なくともしばらくの間は妄想の域を出そうにもありません。

さて、これもまた、図書館に予約を入れてからひっじょーに長く待った1冊。大好きな作家、三浦しをんさんの小説、とても楽しませて頂きました。
あの家に暮らす四人の女
あの家に暮らす四人の女/三浦しをん(中央公論新社)

ちょっと不思議な雰囲気の漂う物語世界です。
阿佐ヶ谷から徒歩20分(だったと思う)辺りのところにある洋館ふうの一軒家に暮らす主人公・佐知、その母・鶴代、佐知の友人・雪乃、雪乃の勤め先の後輩・多恵美という四人の女のお話。
そこに、地域のカラスの知と経験の集合体だという善福丸やら、鶴代の元夫にして佐知の父、そしてすでに死亡して幽体と化している「神田くん」などが登場するので、今どき版「家守綺譚(感想文は►コチラ)」の感もあり。

そうそして、どうやら結構広いらしいその家の敷地の片隅には物置小屋のようなものが建っていて、そこに山田さんという初老の男性が、母娘の守り役のように暮らしている。
――設定的には、ちょっとおとぎ話めいてもいますね。

そこでたとえば「細雪」的な(四人の女たちの名前が、「細雪」と同じだ、といって作中で話題にのぼることがある)優雅な物語が展開するかと思いきや、やはりそこに繰り広げられるのは、三浦しをん的な、興味深くもあちこちに爆笑がちりばめられた日々なのでした。
ホント、電車の中で読んでいて、吹き出すことだけは何とかこらえたけれど、顔が思いっきり笑ってしまって困りましたもん。

話せば少々長くなるのですが、えーっと、彼女らが暮らす洋館に「開かずの間」とされる一室があり、内がどうなっているかは鶴代しか知りません。が、ある日彼女の留守中に雪乃が部屋の鍵を開け、内の掃除を始めたところ、何と、箱に収められた河童のミイラを発見するのです。
それを見て雪乃の頭の中に出来上がった推理というのが、「鶴代の夫=佐知の父は、実は河童だった。そして、佐知が生まれてすぐに鶴代と離婚して家を出て行ったという彼は、実は鶴代に殺されていたのだ!」。
もちろん事実は違いますが(そりゃそうでしょー)、何しろミイラなどというものがあるので、鶴代を除く女三人はパニックに陥り、その慌てふためく言動がもう、おかしくて。

主人公・佐知はおそらく、三浦さん自身を投影した部分が大きい人物像だろうと思います。人気作家などではなくて、刺繍作家として地味に活動している佐知なのですが、家で創作家として働いていることや、独身であることを気楽にも負い目にも感じているらしきこと、あれこれ考えつつも、肩の力を抜いて飄々と日々を過ごしている様子などは、これまでに三浦さんのエッセイを何冊も読んで思い描いてきた私の中の三浦しをん像にピタリと重なります。

それに、佐知が水着を買うくだりが。
以前読んだ三浦さんのエッセイのひとつに、爆笑せずにはいられないような、三浦さんが水着を買いに行くエピソードがありました。すごく印象的でした。あまりに赤裸々で、共感もおぼえて、そして底抜けに明るく笑えたので。あれが、今回の佐知の話に取り入れられていたのだと思います――三浦さんの実際の経験の方が、まあ文章の妙だとは思いますが、ずっと笑えましたが。

でも、ラストへ向かうあたりは、笑いだけではなく、何となくしんみりとした雰囲気が漂うのが、三浦さんんも少しずつ年を重ねておらられることの反映ではないかしら。年月は淡々と過ぎてゆき、今の自分に満足しているわけではないけれど、今さら自分が自分以外のものになれるわけもなく、そういうものなんだな、それでもいいじゃないか、と、その思いは軽い諦めのようであり、現実との妥協のようでも、また自分自身との和解のようでもある――それは、実際に自分がそこに浸ってみないと体感できない感覚ではないでしょうか。

目には見えなくとも、自分を見守ってくれている誰かがいる。
・・・何だか、「うんうん」と頷きながら、読み終えました。


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tag: 三浦しをん 
  1. 2016/08/02(火) 22:00:00|
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  1. 2016/08/07(日) 13:32:52 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

lundiさん

私も、かなり待ちました。
でも、300はいかなかった――うちの図書館の利用者数はそこまで多くないんですね。

了解しました。
お知らせ、ありがとうございます♪
  1. 2016/08/07(日) 22:39:13 |
  2. URL |
  3. lazyMiki #Dud4.962
  4. [ 編集 ]

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