本と旅とそれから カラフル/森絵都

本と旅とそれから

カラフル/森絵都

先日、姪っ子MM(現在中学生)に、「MMってどんな本読んでんの?好きな作家さんとかいる?」と尋ねたところ、間髪入れず返って来た答えが、「森絵都さん!『カラフル』!」でした。
あらま。その本は、ちょっと前に、借りて来たのにちっとも読まずに返した1冊でした。
なので、姪っ子と話を合わせることができるよう、さっそく再び借りてきて読んだのでした。
カラフル
カラフル/森絵都(文春文庫)

とはいっても、MMとその話をしたときのことを改めて思い返してみると、彼女が小説を読んだと言ったのか、それとも、小説を原作に作られたアニメその他の作品を見たと言ったのか、はっきり思い出せないんですよね。
何しろそのとき私はMMを助手席に乗せて車を運転していたのですが、ナビのガイドがあるものの、走っている道がホントに正しいのか自信が持てず、心が動揺していたので・・・。


「池井戸潤さんなんかはどう?」と聞いたら、「難しすぎる」といってたっけ。それはそうでしょうね。金融用語などがバンバン出てきますから、中学生にはまだちょっとね。

で、「カラフル」ですが、前半は少々スローな感じもありますが、後半からラストに向けてぐーっと盛り上がっていって、爽やかなエンデンィングに至る、読後感の良い小説だと思います。
ただ、恐らくは私の認識がズレているのだと思いますが、「中学生にしてはおマセな話じゃのぅ」という感じがしました。主人公の少年・真(まこと)が、特に自分の両親について思うあれこれは、私には「高校生ぐらいの感覚なのでは」と思えたのですが、私は、青少年が主人公の小説を読むと、いつもそんなようなことを思うので、たぶん私の感覚がズレているのね。

ところで、「主人公の少年・真」という言い方は実は少々ビミョーでして、物語の主人公を正確に言えば「あの世に行く手前でこの世に戻されることになり、真という少年の体に入り込んだ何者かの魂」となります。
詳細を書くと長くなるので省略しますけど、どこの誰とも知れぬ魂が入り込んだ真という中学生は、家族や初恋の少女の醜い姿に絶望して自殺を図ったところだったのですが、この魂が入り込んだせいで、表面的には「生き返る」こととなります。ただし期限があって、最長1年。

で、その復活した真がどう日々を過ごしたか、というのが物語です。

この、死ぬはずだった人が途中でこの世に戻って来て別人の体に入り込む、というスタイルは、浅田次郎さんの「椿山課長の七日間」と同じです。「椿山課長」は妻子ある社会人、真は高校受験を控えた中学生なので、その日常を描く物語も当然かなり違うのですが、復活した魂が、生前には知ることのなかった事実を知って、「そうだったのか」と驚き、感動するというのも大体同じです。きっと、こういう設定にする著者の目的のひとつはそれなのかも知れません。

真のあの世(?)からのガイド役として、プラプラというヘンな名前の天使が登場するのですが、彼が物語の最後に言う言葉に、人生をホームステイだと思えばよい、というのがあります。
この「ホームステイ」とは、通常のそれとは違い、プラプラと真にだけ通じる、「復活した魂が、他人の体の中で過ごす約1年の期間」という意味。真が、「この先の人生を過ごしていくことに不安を感じる」と語ったのに応えてプラプラが、人生なんてたかだ数十年だ、その後にはまたここ(=天国?)に戻って来るのだから、気楽にやればよい、と励ますのです。

ホームステイ、つまり、「所詮他人として過ごす人生だよ」」と思えば、緊張しないでのびのび生きられるじゃないか、というわけですね。で、物語の中の真は納得する(あるいはしたように見える)のですが――ん~、そこのところは、本物の中学生にしてみたら、どうなんでしょうね。中学生にとっての「今後数十年の人生」というのは、半ば永遠とも思える長さなのではないかと思うんだけどなあ…。

このあたり、ほとんどネタバレにほかなりませんが、でも、もし、真がこの後もずっとホームステイやプラプラのことを忘れずに生きて行けるとしたら、彼にとって人生はかなり楽なものになるだろうなと思います。
死んだ後に何が待っているかわかるわけですからね。いつ死ぬかがわかっているのは怖いかも知れませんが、その後に待っているのが、別に怖いものでもなくて、プラプラみたいな天使が迎えてくれるのだとわかっていれば、それまでの人生を生きることはきっと気楽に違いない。羨ましい。

でもきっと、真は段々とこの時の記憶を薄れさせていくのだと思う。
まだ中学生ですからね。この後何十年も現実を積み重ねていくうちに、あれはきっと夢だったのだろう、とでも思うようになっていくことでしょう。たとえそうでも、頭のどこかにその記憶が、何となくでもとどまる限り、彼はきっと、ぼんやりとした安堵感と共にこれからの人生を生きていけることでしょう。

などと思いつつ、こうした感想は中学生にはわかないだろうなと思いました^^;。


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