本と旅とそれから ミーナの行進/小川洋子

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ミーナの行進/小川洋子

む?もしかして、私は小川洋子という作家さんが好きかも!
――あ、いやいや、それは早計というもの。何といっても、まだ本書と、あとは「博士の愛した数式」(感想文は►コチラ)しか読んでいないのだからして。

どちらの物語も、遠くに隔たった昔の日々を、穏やかに、愛おしさ、切なさと共に振り返るような、そんな空気が流れるものだと思います。
ミーナの行進

ミーナの行進/小川洋子(中公文庫)

ごく庶民的な生活をおくっていた主人公の私=朋子は、中学生になる直前、突然の病に父を亡くし、今後のために手に職をつけようと東京に出た母を見送って、1年の間だけ、芦屋の伯母一家と暮らすことになります。
物語は、ほぼすべてその1年間のお話。

伯母という人が、ドイツ人の母と日本人の父を持つ、お金持ちの社長さんと結婚していたため、住む家はお城のようで、「ローザおばあさま」はドイツ人、従妹のミーナは理想的な美少女(でも、当然ながら関西弁ネイティブ)、家には家政婦や庭師がいて、そしてきわめつけとして、広い庭にはコビトカバの「ポチ子」がいるのでした。

この伯母ファミリーが、ひとりひとり(含むカバのポチ子)キャラが立っているといいますか、それぞれ興味深い存在感を備えているのです。

中でも、朋子と仲良しになるひとつ年下のミーナと、半分ドイツ人の伯父さん、そしてカバのポチ子は魅力的。
で、「それはないだろう」と思うのが、ミーナの登校スタイル。
タイトルの「ミーナの行進」も、そのことですね。

ミーナは喘息持ちで体が弱く、突然発作を起こして病院に担ぎ込まれることもしばしば。そんな彼女は、歩いて小学校に通うことがつらいというので――庭師の小林さんが引くポチ子(カバだよ)に乗って、毎日学校に通うのであります!馬の類ならまだしも!いや、大型犬でももしかしたら納得できる(八犬伝?)、でもカバって。

でも、ずっと読んでいくと、段々と受け入れてしまうんですよねえ。ポチ子通学。
ポチ子の存在は、物語の中できっと何かの象徴なんだろうなぁ、などとぼんやり思ったりして。お金持ちのうえ、ドイツの文化が色濃く混じっているため、いろいろと不思議な習慣のある主人公の伯母一家。1972年から73年までの一年間、と、時間が明示されていて、当時の出来事(ミュンヘンオリンピックとか)なども描かれているけれど、それでもどこか別世界の匂いを漂わせた物語の空間です。

ずっと昔、初めて大英博物館に行ったとき記念に買った青い小さなカバ(たぶん、エジプトかどこかの考古学関連の収蔵品のミニチュアだと思うんだけれど)が自室の本棚の片隅に置いてあるのですが、そのずんぐりしたフォルムを眺めつつ、頭の中にポチ子の姿を思い浮かべました。うぅ、なんか愛おしい。

裕福で美しく、お互いを思いやるステキなファミリーなようでいて、ハンサムで優しい伯父さんは、いったん家を空けるとなかなか帰って来ない。しばらくぶりに伯父さんが帰ってくると、皆が嬉しくて――その様子が何度か描かれるうち、朋子も読み手も、「ああ、伯父さんはどこかにもうひとつ『家』があるんだな」と感じ取る。
そして、ミーナの兄の龍一はスイスに留学していて、その彼が時々書いてよこす家族ひとりひとりへの手紙を、誰もが楽しみにしていて、でもそこには父親(つまり伯父さん)への手紙だけは入っていない。

そして、ふだんは気丈で賢くて大人びているミーナだけれど、彼女は病弱。

物語が回顧調で書かれているので、読み手としては、これがおそらくは最後に現在形で書かれるときには、伯母ファミリーはバラバラになり、ミーナは若くして亡くなって、あの煌めく1年は、もう朋子の思い出の中にしか見つけることが出来なくなっているのだろうな、ということを予見し、そこはかとない悲しさとともにページをめくってゆくのですが――。

あ、もしかすると、そうしたすべての悲しい予見を、ポチ子が引き取ってくれたのかも。
いずれにしても、今後ゆる~く、小川洋子さんチェック♪


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  1. 2016/09/01(木) 22:00:00|
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